急増する「ガシャポンのデパート」 売り上げ目標2倍を達成した“うれしい誤算”とは

バンダイナムコアミューズメントが運営するカプセルトイ専門店「ガシャポンのデパート」が急激に増えている。1、2号店を2020年8月にオープンした後、全国28店舗で営業するまでになった(7月16日時点)。どういった点が支持されているのだろうか。

かつては「不良のたまり場」
かつては「不良のたまり場」とも言われたゲームセンター。しかし、それも今や昔の話だ。最近では、明るく、クリーンで、家族そろって遊びに行けるような安心・安全な娯楽施設に生まれ変わりつつある。

要因のひとつが、かつてゲームセンターの顔だったアーケードゲームやメダルゲームが衰退トレンドだということ。もうひとつが、逆に、クレーンゲームに代表されるプライズゲーム(商品の獲得を目的としたゲーム)が伸びているということだ。

それに伴って「アミューズメント施設」と呼ぶにふさわしい新しい業態も登場している。そこで存在感を示しているのがバンダイナムコアミューズメントだ。

トランポリンやクライミング、ロープウォークといったアスレチックを屋内で楽しめるようにした「スペースアスレチック トンデミ」、バラエティ番組を連想させるような仕掛けを多く盛り込んだバラエティスポーツ施設「VS PARK」など、従来の「ゲームセンター」という言葉からは連想できないような新機軸を続々と送り込んでいる。

ずらりと並ぶガシャポンの台
20年8月、ショッピングモールの横浜ワールドポーターズ(横浜市)やキャナルシティ博多(福岡市)に登場したのが「ガシャポンのデパート」。その名の通り、店内にはガシャポンがずらりと並んでいるが、

コロナ禍という特殊な情勢も相まって注目を集め、店舗数を増やしている。

今年2月には、都内に「ガシャポンのデパート池袋総本店」がオープンした。店内のガシャポンの数は3000面に及ぶ(1台のガシャポンにつき、商品を入れるスペースが2つか3つあり、それらを「面」と呼ぶ)。

「2月26日の開業以降、新型コロナウイルス感染症の影響で、休業を余儀なくされた期間もあります。それでも売り上げ目標の約2倍の数字が出ているのは、われわれとしてもうれしい誤算です」(ベンダー営業部 ベンダー開発課 佐々木晶士マネージャー)

実際に店舗に足を運んでみると、子ども連れや若い女性の姿も目立つ。また、消毒や点検などのために巡回するスタッフはいるものの、売り場面積からすると、相当な省力化が図られているのが想像できる。

1号店がオープンした20年8月という時期から考えると、コロナ禍に対応すべく生み出された業態なのだろうか。

「プロジェクトが動き出したのは、奇しくも中国でコロナが騒がれだした20年1月頃でしたが、もともとはコロナ禍とは関係ありません。1、2号店がある横浜と博多の大型施設の売り場を再構成するにあたって、『広い床面積をどう使うか』という社内課題解決のためのプロジェクトでした」(佐々木氏)

現在、ガシャポンは第4次とされるカプセルトイブームの真っ只中にいる。では、今、世の中にあるガシャポンを全部集めるくらいの勢いで売り場を作ってみたらどうなるだろうか。

コロナ禍により、従来のやり方がそのままでは通用しなくなったことで、売り場の変革という意味はなおさら大きくなった。

「結果、大きな反響をいただき、売り上げも立っています。ただ、コロナ禍が終焉するまでは、この業態の真の実力は見えづらいのかもしれません。コロナ禍の影響で休業期間があったとはいえ、逆に手軽に遊べるレジャーとして選択されているという考えもありますから」(佐々木氏)

ガシャポンのメインターゲットは若い女性
実際にガシャポンをずらっと並べたところ、初めてつかんだ感触もあった。

「これだけの数が並んでいれば『何があるか分からないけれども、自分の欲しいものが見つかるんじゃないか』という宝探しのような感覚を楽しんでいるお客さまは多いようです。

実際に面白いものを発見したときの喜びや、偶然の出会いの面白さは、かつておもちゃ屋さんで味わった感覚に近いものがありますし、雑貨屋巡りと同じ感覚で受容されているように感じます」(佐々木氏)

ガシャポンというと「小学校時代に友達と遊んだな」と思い返す人も多いのでは。しかし、今のトレンド、ブームを支えているのは20~30代の女性であり「ガシャポンのデパート」もそこをメインターゲットにしているという。

「今でこそ、競合他社による専門店もあるくらいですが、小学生の頃にガシャポンを楽しんだ男性の場合、商店の軒先や商業施設のトイレの前といった隙間に並んでいた、という記憶があるのではないでしょうか。それだと女性が買う環境としてはよくないですよね。

『ガシャポンのデパート』のように、明るく清潔な空間が生まれたことにより、女性の方も安心して、周りを気にせず買える環境を提供できるようになったと感じています」(経営企画部 コーポレートコミュニケーション課 広報担当 有川由美氏)

以前であれば、並んでいても数台。しかも、人目に触れにくい場所であれば、存在に気付かない人もいただろう。専門店化して一カ所にさまざまな商品が集まることで、今まで見落としていた人や興味がなかった人が初めて触れる機会にもなる。

ライト層やファミリー層も取り込む
ところで、池袋はアニメファンが多く集まる地域だ。現在の、いわゆるオタク市場では女性ファンの影響力も大きいが、池袋総本店はそれを意識しているのだろうか。

「最初のうちに想定していたほど、来客や売れるものに偏りはないですね。池袋は平日でも2割ほどがお子さま連れで、ファミリーの割合も高くなっています。お父さん、お母さん、お兄ちゃんと弟、みんなで1個ずつ買って、それをお互いに見せ合うという光景をよく目にします」(佐々木氏)

コアなファンだけではなく、ライト層やファミリー層も取り込めていることにも、コロナ禍の影響が考えられると佐々木氏は話す。

おうち時間が増えたことにより、アニメを見る時間や機会が増えた。これまでアニメを見る機会がなかった人が作品に触れたり、一度アニメを卒業した世代が戻ってきたのではないか、ということだ。

去年であれば『鬼滅の刃』、今年は『呪術廻戦』などがある。子どもだけでなく、年齢層が比較的高い人であっても、認知度が高いコンテンツの存在もある。ガシャポンのデパートにはアニメ関連の商品も多くそろっている。

若い女性を中心にしながら、より幅広い年代を取り込んでいきたいガシャポンのデパートとしては、絶好のタイミングでスタートを切れたとも言えそうだ。

(唐仁原 俊博)

シェアする

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

フォローする