元国税芸人さんきゅう倉田の「役に立ちそうで立たない少し役に立つ金知識」 第211回 遅刻と囚人のシレンマ

元国税職員さんきゅう倉田です。将来の夢は「ランチの会計で客に1万円札を出されても嫌な顔ひとつしない飲食店を開くこと」です。

ゲーム理論に「囚人のジレンマ」という考え方があります。漫画や映画の中にも登場するので、その名称は知らずとも、同様の選択を迫られる場面は見たことがあるかもしれません。

囚人のジレンマは、平たくいえば、ふたりの囚人が、別々の部屋で自白か黙秘の2択を迫られ、自分の選択ともうひとりの選択によって懲役の年数が決まるため、ふたりともが最適な選択を選ばない、というものです。

ふたりとも黙秘をすると、ふたりの懲役の合計年数は短くなるけれど、相手が裏切ると自分が損をするから、ふたりとも自白してしまうという考え方です。

日常生活でも、稀に類似の状況があります。例えば、友人と待ち合わせているときなどに、ぼくは囚人のジレンマを思い出します。

待ち合わせと囚人のジレンマ

待ち合わせの時間ちょうど、あるいは、それより早く行くのが当然だと思っています。しかし、遅刻を意に介さない人というのは一定数いるものです。ぼくは、これまで幾度となく待たされ、自分の時間を費消してきました。自分の時間を有効に使うには、相手と同じタイミングか、相手より遅れていかなければなりません。このとき、囚人のジレンマの考え方が使えます。

相手も自分も時間を守れば最適だが、自分だけ時間を守って相手が遅れてくると、自分だけが時間を無駄にしてしまう。だから、お互いに時間を守らないという不合理な結果を招くことになります。ただ、実際には、こういうことはあまり起こりません。

例えば、何度待たされても、遅刻しない人はずっと遅刻しないからです。ぼくも、どんなに同じ人に待たされても、自分の矜持のために時間より早く到着するようにして、最適な待ち合わせとなるように善処しています。
取引でも頭を過る囚人のジレンマ

会社や個人事業者間の取引でも、同様の結果が想定されます。例えば、ぼくが知り合いにイラストの作成を依頼したとします。

ぼくが最も得をするのは、納品はしてもらうけれど、お金を払わないような場合です(現実に存在する様々な条件・制約は無視します)。相手が最も得をするのは、お金だけもらって納品しないような場合です。

そのような相手の行動が互いに想像できると、ぼくはお金を払わず、相手は納品をしないという選択になってしまいます。そもそも、ぼくは誰かに依頼をしたいし、相手は仕事をしてお金を得たいのに、取引が成立しないということが発生しうる。だから、決済を納品後にしたり、法律や契約で縛ったりして、取引の実施を保証します。

あるいは、継続的な取引にすることで、1回目で裏切ると損をするような状況を作ることも有効です。実は、ぼくも昔、騙されてしまったことがあります。
継続的な取引と値引き

芸人の仕事は、そのほとんどが価格の定まらないサービスの提供です。同じ人が同じ内容で複数の取引を依頼すれば、値引きの余地があります。

ぼくは講演会の依頼を受け「継続的に取引しますので、半額にしてください」と言われ、値下げしてしまったことがあります。10回の取引を仄めかされ、相手がろくでもない囚人である可能性を考慮していませんでした。

「1回目で逃げた方が得」とまでは言いませんが、無条件で半額になるのなら、1回で逃げれば相手の効用はかなり高い。きっと、初めから1回だけのつもりだったのでしょう。その後の依頼はありませんでした(講演の内容がよくなかったんだろと思う方もいるかもしれません。良いものを届けているつもりですが、そういう可能性もあるでしょう)。

ぼくはどうすべきだったのでしょうか。

相手に裏切らせないために、2回目以降の依頼もまとめて受けるべきだったし、1回目は正規の金額、2回目以降から少しずつ値引きしていけばよかったと思います。それなら、毎回価格が下がるので依頼し続けた方が得だと、相手は考えるでしょう。最初の1回を値引きするのは絶対にやってはいけないことでした。

どんな相手でも、取引をするときは相手の裏切りを予防する手段を考えなければいけません。

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