想定の3倍は売れた! 「ラーメン自販機」が盛り上がりそうな、2社の動き

ニチレイフーズが展開する冷凍食品の自販機が、やがて姿を消す。「えっ、そうなの? 焼きおにぎりやフライドポテトを食べたことがあるなあ」と思われたかもしれないが、2010年に自販機の生産は終了。現在、部品を調達できないので、壊れると修理ができないこともあるそうだ。

自販機の名称は「24hr. HOT MENU」。1991年に産声をあげて、2年後の93年に全国展開を開始した。オフィスや工場のほかに、高速道路のPA、スポーツ施設、公園、フェリーなど、さまざまなところに設置し、ピーク時には約5000台に。軽食を温かい状態で食べられることがウケたものの、時代のニーズに合わなくなったのか、現在は1000台ほどになっているという。最後の商品が販売できなくなった時点で、“引退”するそうだ。

自販機ファンからすれば悲しい別れのニュースになるが、その一方で出会いもある。筆者が注目しているのは、有名店のラーメンを買うことができる冷凍自販機「ヌードルツアーズ」だ。業務用の麺類を製造している丸山製麺が手掛けていて、3月にこの自販機を設置したところ、想定の3~4倍のペースで売れているという。

ちょっと変わったネーミングの「ヌードルツアーズ」とは、どんな特徴があるのか。設置場所は、東京都大田区上池台にある丸山製麺の本社前。最寄り駅から15分ほど歩いて、会社の敷地内にポツンとある。駅から離れた住宅街に設置しているので、「本当に売れているの?」と疑ってしまうが、同事業を担当する丸山晃司取締役によると「昼と夕方によく売れていますね。ここで買って、家で食べられる人が多いのではないでしょうか」とのこと。

「ヌードルツアーズ」は増やす予定
スタート時、販売していたラーメンはこちら(販売商品は予告なく変更する)。

・らーめんバリ男:らーめん(特製唐花付き、940円)

・鯛塩そば灯花:愛媛宇和島鯛塩らぁ麺(940円)

・麺屋音:濃厚煮干しそば(920円)

・菜香新館:菜香匠Jang麻辣担担麺(900円)

・雷神:雷神餃子(1000円)

自販機で扱う商品にしては、価格はちょっと高め。1000円札を出して、10円玉数枚が戻ってくるモノが多い。取材時も、歩行者がフラリと立ち寄って、ラーメンを購入していた。「店の味を再現しているので、『おいしい』と感じている人が多いのではないでしょうか」(丸山氏)

それにしても、なぜこのような自販機を設置したのか。同社のビジネスモデルはB2B。駅の立ち食いそばや社員食堂、大学などに卸しているわけだが、新型コロナウイルスの感染拡大を受けて、売り上げは激減。「外食の売り上げは9割減」といったニュースが報じられるなか、同社の業績もあっという間に落ち込んだのだ。

このままではいけないということで、ECサイトを立ち上げる。それまでB2B一本足打法だったのに、一般消費者に向けて販売したところ、巣ごもり需要などもあって売れた。しかし、近所に住む人からは「配送料が高い」「会社で販売してよ」といった意見があって、月1回のペースで直売所を開始。ひっそりと始めたものの、同社の予想を超えて、毎回300~400人ほどの客が訪れているという。

直売所をオープンするのは、特定日だけ。なんらかの事情で足を運べなかった人から「毎日開業してほしい」という声があって、自販機の設置を決めた。想定以上に売れているので、「今後は台数を増やす予定。設置場所はいろいろなところを試したい」(丸山氏)そうだ。

仕事の帰りに“締めの一杯”
もう1つ、筆者が気になっている動きがある。米国の企業「Yo-Kai Express(ヨーカイ・エクスプレス)」が展開する自販機だ。「ヨーカイって、英語でどういう意味なの? ひょっとして、日本語の妖怪?」と思われたかもしれないが、その通りである。「妖怪」と聞くと、かなり怖いイメージがあるが、同社によると、突然現れる妖怪のように“いつでもどこでも食べられる”というコンセプトが社名に込められているという。

自販機の名称は「Octo-chef(オクトシェフ)」。このマシーンの特徴は、スチームを使ってラーメンを調理すること。タッチ方式の画面でメニューを選ぶと、カップ入りの冷凍ラーメンをスチームで加熱し、1分ほどでできあがる。カップ麺とは違って、“生”に近い味を提供しているそうだ。

日本に上陸するのは、今年の夏。会社で働いていて、「お腹が空いたなあ」と思っても、ちょっと離れたコンビニには行きたくないことがある。そうしたときに、オフィスに「ヨーカイ」があれば、「ちょっと一杯」という人が出てくるだろう。また、飲み会の帰りに……ではなく、仕事の帰りに“締めの一杯”といった需要も生まれるかもしれない。

2021年は「ラーメン自販機元年」
家に持ち帰って食べるラーメンか、それとも、その場で食べるラーメンか。勝者はどっち?――。メディアで働く筆者は、いわゆる“職業病”のような感じでストーリーを考えてしまうが、個人的には「どちらも勝者になるかも」と思っている。「家でゆっくり食べたいなあ」ということもあれば、「外で食べたい」こともあるからだ。

では、この2つの自販機が成功するには、どういったことがキモになるのか。立地や値付けの問題はもちろん大切だが、最終的には「コンテンツ」ではないかと思っている。

ニチレイフーズが冷凍自販機から撤退する背景に、何があったのか。スタート時の1990年、コンビニの店舗数は1万7000店ほど。ご存じの通り、その後も増えていき、2020年には5万8000店を超えた。ちょっと歩けば、コンビニでお弁当やおにぎりを購入できるので、冷凍モノから離れていく人が増えた……といったことが考えられる。

このように書くと、「いまもコンビニがあるじゃないか。ラーメン自販機も苦戦するでしょ」といった指摘が入りそうだが、コンビニで販売しているラーメンよりも、おいしい味を提供すればどうなるのか。消費者の“胃袋”をつかんで、数年後に「2021年はラーメン自販機元年だったなあ」といった会話が出てくるかもしれない。

(土肥義則)

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