1年間で4万台以上! ネットワークカメラ「ATOM Cam」が売れている秘密

防犯、家族やペットの見守りのためにネットワークカメラの導入を検討したものの、値段が高くて断念したことはないだろうか? しかしアトムテックの「ATOM Cam」なら、値段を理由に諦めることはないだろう。1台2500円と激安だからだ。

2020年5月に一般販売された「ATOM Cam」は、撮影した映像をスマートフォンやPCでリアルタイムに見ることが可能。Wi-Fiに接続して、専用スマートフォンアプリで簡単に設定することができる。ほかにも次のような特徴を持っている。

・1080PフルHDに対応した高画質

・高感度CMOSセンサー搭載で、月明かり程度の光があればカラー撮影可能

・赤外線ナイトビジョン搭載で、暗闇でも9メートル先まで鮮明に映せる

・動体検知機能で留守中の子どもやペットの動き、屋外の鳥や動物はもちろんのこと、留守宅中の不審な動きを察知したらスマートフォンにアラートを送信

・1つのスマホアプリで複数台の管理が可能。1画面で一度に4台まで確認できる

・タイムラプス動画の撮影が可能

・14日間無料クラウドストレージ提供

・クラウドストレージとセッション認証に日本版AWS(アマゾン ウェブ サービス)を使用

・連携サーバー上のほか、本体上で特定のAI分析ができるEdge AIを採用

2500円とは思えないほどの高機能。むしろ安すぎるとさえ思える。しかも販売は自社サイトとAmazonのみの販売ながら、これまでに4万7000台以上を販売している(クラウドファンディングで先行販売した分も含む)。

国内メーカーの品質を海外メーカーの価格で提供
「ATOM Cam」開発のきっかけは、アトムテックの創業者である青山純社長が富士通のエンジニアだったときの経験にあった。各地を飛び回り、出張で家を留守にすることが多かった青山氏は17年ごろ、飼っていた2匹の猫の様子を外出先でもチェックできるようネットワークカメラの購入を考え、手頃なものを探した。そのときのことをこう振り返る。

「探しに行ったら1台1万円とか2万円のものばかり。このときの正直な思いは、『もっと安く買えるものがあれば……』でした。安いものも探せばありましたが、そういうものは聞いたことがないメーカーがつくっていたのでセキュリティ面が心配でした」

このときは結局、高価な国内メーカーのネットワークカメラを購入する。ただ、高価な割にアプリが使いにくいなど、満足できるものではなかった。

その後青山氏は富士通を退職し、友人が経営するIoT関連のベンチャー企業を手伝う。そこでビジネスの回し方などを学び、19年にアトムテックを創業する。

IoTを活用した製品はいろいろあるが、アトムテックで何をつくるかを考えたときに頭の中をよぎったのがネットワークカメラを探したときの経験。国内メーカーの高品質でセキュアなものを海外メーカーの安い価格で提供できれば、日本にネットワークカメラが普及すると考え、「ATOM Cam」の商品化を構想する。

既存品の活用で高いコストパフォーマンス実現を目指す

高性能で簡単に使えるものを安く売ることで普及させ、これに伴ってクチコミが拡散すればさらに広がる。こう分析した青山氏が「ATOM Cam」の開発でこだわったのが、コストパフォーマンスの高さであった。

コストパフォーマンスの高いものをつくるために、高い販売実績がある既存品の活用を考えた。そうした製品であれば初期不良は対策済みで、改修やアフターケアにコストがかからない。本音は、イチからオリジナルの商品をつくることにあったが、それはいったん脇に置くことにした。

パートナーとなるハードウェア製造元との相性の良さも踏まえながら見つけたのが、中国企業が製造するネットワークカメラであった。この会社が製造するネットワークカメラは、中国はもちろんのこと米国でも販売。米国ではWyze Labs社から「Wyze cam」として販売されており、2年間で600万台販売している。

カメラ本体には手を加えず、後から機能を追加しやすいようファームウェア(ハードウェアを制御するためのソフト)をつくり変えて日本市場で販売する。青山氏の当初プランはこのようなものだった。

21年1月、同社は日本で受け入れられるかどうかの検証とパートナー企業に日本市場で売れることを証明するため、クラウドファンディングにチャレンジする。目標金額は1000万円。44日間実施し、36日目で目標を達成した。

予定外の改良でデザイン以外は完全に別物に
ところが、クラウドファンディングのチャレンジでハードウェア改良の必要性を実感する。青山氏は次のように話す。

「クラウドファンディングで支援者に、今後ほしい機能についてアンケート調査したところ、人体検出のような『エッジAI』に関連したものが多いことが分かりました。エッジAIに対応するにはスペックが足らず難しかったことから、将来の機能拡張を考慮してつくり変えることにしました」

改良前との大きな違いはCPUとメモリー。CPUはそれまで1GHzに満たなかったが1.5GHzに、メモリーはそれまでのほぼ倍になる128MBに変更した。中身がガラっと変わったことに伴う信頼性検証は、クラウドファンディングの支援者にテスト機を送り、評価してもらうことにした。

「将来的なことを考えれば、先に処理能力を上げておいたほうが新機能の開発がやりやすくなりますし、ハードウェアの変更はそう簡単なことではありません」と青山氏。パートナーである中国企業とは一定の販売量を約束することで製造コストを可能な限り抑えてもらうことにした。

センサーの接続でカメラが設置しにくい場所の検知にも対応
「ATOM Cam」は発売後、ファームウェアやスマホアプリのアップデートを繰り返す一方で、新機能の追加も並行して行ってきた。中でも大きな機能追加が3つある。

1つ目は20年11月に正式提供が始まった「AI人数カウント」。「ATOM Cam」で撮影された映像から定期的に画像をAI分析サーバに送信し、そこから人を抽出して分析した混雑状況の結果をスマホアプリに戻し、タブレットなど別の端末に混雑状況を表示する。必要なハードウェアは「ATOM Cam」のみで月額500円と低コストで利用可能だ。20年7月に実証実験として、ベータ版の提供を経て正式提供に至る。店舗、施設、イベント会場などが3密回避のために、来客数や来場者数を制御することに活用することができる。

2つ目は、21年2月から一般販売が始まった「ATOM Sensor」。「ATOM Cam」に接続したドングル(USBポートに挿す小型の機器)が開閉センサーとモーションセンサーの状態を集約し、検知内容を「ATOM Cam」専用のスマホアプリに通知。2つのセンサーは「ATOM Cam」と連携でき、検知と同時に映像を撮影することもできる。価格はドングル、開閉センサー、モーションセンサーのセットで4000円、購入後の月額使用料は無料だ。

開閉センサーは、開いたり閉まったりといった状態の変化を検知するとスマホアプリに通知。モーションセンサーは、人間や動物などが動いたことを検知し、センサー設置場所が明るくなったり暗くなったりしたことも通知してくれる。将来的には各センサーに設定した任意の条件を満たしたら通知するアラーム機能を実装するほか、温湿度センサーや水没センサーをニーズの盛り上がりを見て追加する予定だ。

「センサーはユーザーからの要望もありました」と話す青山氏だが、開発にはトイレや寝室のようなカメラが設置しにくい場所の状況変化を検知できるようにする目的もあった。一般販売に先立ち20年10月にクラウドファンディングでチャレンジしたところ、目標金額の50万円を開始6時間で達成した。

愚直なまでに薄利多売に徹する
3つ目は、21年3月から始まった「クラウドモーション検知“無制限”録画サービス」。動体を検知し続ける限り、時間無制限でクラウドサーバに録画が継続され14日間保存される。「ATOM Cam」1台につき月額500円で利用可能だ。

「ATOM Cam」に関しても新バージョンの投入が検討されている。多々ある要望の中からニーズが高いものを順に盛り込んでいきたい考えだ。

アトムテックが目指していることは、高性能・高品質でデザイン性が高いIoT製品を手軽に買えるようにすること。そのためにネックになっていた価格の高さにメスを入れ、普及させることを第一に考え、愚直なまでに薄利多売に徹する姿勢がうかがえた。

(大澤裕司)

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