クルマが電動化する今、トヨタとスバルがスポーツカーを作る理由

カーボンニュートラルに向けた世界的な動きを受けて、クルマの電動化が加速している。そんな中、トヨタ自動車とスバルは共同開発のスポーツカー「86/BRZ」の新型を発表した。純粋なガソリンエンジンを高回転まで回して楽しむタイプのクルマを今、両社が作る理由とは。

なぜ共同開発?
「GR 86/BRZ」はトヨタとスバルが共同開発するスポーツカー。企画とデザインはトヨタが主導し、スバルが開発、評価、製造を担当している。現行型(初代)は2012年に発売。新型(2世代目)はBRZが2021年夏ごろ、GR 86が同秋ごろの発売を予定している。

本稿の写真は新型「GR 86/BRZ」の事前撮影会で撮影したものだが、現場ではトヨタとスバルの担当者に話を聞くことができたので、スポーツカーを作る理由など、気になる点を確認してきた。

まず、なぜ共同開発しているのかについては、トヨタの担当者から「いいとこ取りができるから」との説明があった。確かに、新型GR 86はトヨタ車でありながら、スバルの技術である水平対向エンジンと運転支援システム「アイサイト」を搭載している。互いの技術を持ち寄ってクルマを作り、最後のセッティング(足回りを含むシャシーはエンジン・パワーステアリング制御など)は両社がそれぞれの味付けを施しているそうだ。

共同開発を選んだ背景には、単独で作るのが難しいという事情もあるらしい。というのも、スポーツカーは販売台数がそこまで見込めないし、専用設計のパーツが多くて他車種からの流用も困難なので、単独で作って売るのはなかなか大変なクルマだからだ。共同で開発し、互いの販売ネットワークを使って流通させれば、それだけ台数が伸びるわけだから、開発コストも単独でやるより回収しやすくなる。

電動化と自動化が進む中で、なぜスポーツカーを作るのか。この点についてトヨタとスバルの担当者は、「クルマを運転する楽しみ」を残し、伝え続けていくことが大切と口をそろえた。そのうち自動運転の電気自動車(EV)が主流になったとしても、「(移動手段としての)馬車がなくなっても、(馬を操る喜びを得るための)乗馬は残っている」(トヨタ担当者)ように、運転を楽しむためのクルマは残るはずという見立てだ。

自動運転EVばかりになるとクルマがコモディティ化し、どれを買ってもほとんど同じという世の中にもなりかねないが、スポーツカー開発で得られる知見はクルマの差別化にも活用できるとのこと。「EVにはEVならではの、何らかの走る楽しさがあるはず」(トヨタ担当者)であり、運転するのが楽しいEVを作るためには、スポーツカーづくりの経験がいきてくるからだ。

EVの時代になれば、差別化すべき相手は自動車メーカーにとどまらない。アップルやソニーのように、異業種からクルマづくりに参画する企業は増えていくだろう。ただ、「移動するためだけのクルマであれば異業種でも作れると思うが、運転の楽しさを突き詰めることは、なかなか難しい。そこに、自動車メーカーだからこそできる何かがあるはず」だとトヨタ担当者は話していた。トヨタもスバルもモータースポーツに熱心なので、レースの世界で磨いた技術を市販のクルマに活用できることも、両社の強みとなる。

とはいえ、カーボンニュートラルの流れは、この数カ月で勢いを増してきている。トヨタの担当者からは、「今後は何らかの形でモーターが入ったりするはずなので、高回転まで回すコンベのエンジン(ガソリンで回す昔ながらの自然吸気エンジン)だけのスポーツカーとしては、最後の方のクルマになるかも。初代86を発売したときにも『最後』といっていたかもしれないが(笑)」との言葉も聞かれた。ガソリンのにおいがして、マニュアルシフトも選べて、電気の力を借りずに走るスポーツカーにどうしても乗っておきたいという人にとって、新型「GR 86/BRZ」は注目すべき選択肢となるはずだ。

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