上京グルメ物語~東京で見つけた「ふるさと」の味~ 第26回 学芸大学の「ナルカミ」は、群馬に腕っこき!

地方出身者が地元の料理を食べたくなったら駆け込める、同郷の人との触れ合いに飢えたときに癒やしてくれる、そんな東京にある”地方のお店”を紹介していくこの企画。コロナ禍の昨今、せめておいしい地方のものを食べて各地を旅行した気持ちになりたい! という他県のあなたも必見です。

今回のテーマは群馬県です。関東地方にある内陸の県で、東は栃木県、西は長野県、南は埼玉県、北は新潟県、に接しています。
日本三名泉がひとつ「草津」といえば群馬!
群馬といえば、筆者的には温泉がたくさんある印象です。自噴湧出量日本1位を誇る草津温泉をはじめ、伊香保温泉、水上温泉など知名度の高い温泉も多いですね。世界遺産の富岡製糸場があるのも群馬県ですが、筆者的には漫画「頭文字D」が思い浮かびます。

農産品では下仁田ネギ。下仁田ネギの下仁田は群馬ですね。生産量の多いものではモロヘイヤ、キャベツ、こんにゃく芋に至っては国内シェアの90%を誇ります。普段食べるこんにゃくは、ほぼ群馬県のこんにゃく芋を使っているということですね。また高崎市は「だるま」の生産量が全国シェア80%なので、普段見るだるまもほぼ群馬県のものということですね。おもしろいところではネギトロの発祥の地って群馬県渋川市らしいですよ。

今回お邪魔したのは学芸大学にある「ナルカミ」さんです。東横線「学芸大学駅」西口出てすぐの商店街をまっすぐ徒歩で約5分。駒沢通り手前にあるお店です。なんでもネットのうわさでは、ご店主が群馬県への愛がとにかくすごいお店ということ。どんな料理が登場するんでしょうか。

店内は奥に細長い造りで、黒い藁壁がシックでありながら、どこか温かみを感じさせる内装です。カウンターとテーブル席を合わせて20席ほどのコンパクトな造りですが、宴会用に離れがあって団体での利用もできるそうです。
ちょっとしたものまで群馬産
最初に登場したのは「名物ハムかつ」(410円)です。特に群馬の郷土料理というわけではないんですが、どんなメニューにも群馬県を絡めて提供するご店主に、常連さんからリクエストがあり実現したものだそうです。県内に工場を置くハムメーカーをなんとか見つけ出して提供するに至ったとか。群馬のソースメーカーさんにお願いしたオリジナルブレンドのソースでいただきます。

昔懐かしいハムかつにこだわり、あえて手づかみで食べる形式! 衣のサクサクで、ラードで揚げているそうですが、揚げ物とは思えない軽さです。ハムは主張し過ぎず、さりとて存在感は希薄ではない歯ごたえになる絶妙な厚さになっています。ハムの種類、厚さ、揚げ方、食べ方に至るまでとことんまで突き詰めて完成に漕ぎつけたのだとか。

そして、ソースを口にした瞬間、フルーティーな味わいが一気に広がりました。思わずソース単体の味が確かめたくなるほどに独特で衝撃的。ご店主のこだわりの只事ではありません。

お次は「おつまみ盛り合わせ」(1,070円)をお願いしました。

ご店主がサービスで群馬県の形をしたお皿でサーブしてくれました。

群馬の郷土かるた・上毛かるたに表現される「つる舞う形の群馬県」ってやつですね。

1品目は、「トマトのお浸し」。群馬県産のトマトを使用して、県東のみどり市にある岡直三郎商店の薄口しょうゆと、県北沼田市の工場で加工された鰹節から出汁をとった一品。上品な味付けながらトマト、醤油、出汁それぞれの旨みがじんわりと舌に滲みます。

2品目は、「鮭の酒浸し」。県北・昭和村のあすなろ工房の塩こうじを使って鮭を水抜きし、味を凝縮したもの。醤油と日本酒とで寝かせたものだそうです。凝縮され、ねっとりと舌に残る鮭の旨味がなんともお酒を誘います。酒に浸されるのはこっちだったんですね! 添えられた、赤とうがらしの柚子胡椒は、塩味も辛さも抑えめで口の中を爽やかな柚子の風味でスッキリとさせてくれます。

3品目は、「ポテトサラダ」。県北の川場村産のじゃがいも「インカのめざめ」とみなかみ町にある育風堂の生ハムを使用しています。濃厚で甘みの強い「インカのめざめ」と、生ハムが混じり合ったほかでは味わうことのできない一品。「大人のポテトサラダ」といったところでしょうか。

4品目は、「赤城鶏レバーのソース煮」。群馬の銘柄鶏「赤城鶏」レバーを、特製ソースとハチミツで煮詰めたものなんだそうです。ほのかに甘く、しっとりとした舌触りレバーは、レバーパテを食べているような、濃厚な味わい。いきなりの洋風の味わいに戸惑いつつ、チビチビと味わいながらお酒を山ほど味わうことのできる素敵な一品です。
代表するB級グルメといえばソースカツ丼!

続いて登場したのは「桐生のソースかつ丼」(中 1,000円)です。ご店主の故郷でもある桐生市のB級グルメとして有名ですね。元祖は市内にある「志多美屋本店」というお店さんだそうで、前身が鰻屋だったことから、うなぎのタレをウスターソースとブレンドした特製ソースが特徴なんだとか。

ナルカミさんでも、うなぎのタレと独自にブレンドした特製ソースを使用しています。小さめのサイズで揚げたヒレ肉をソースにくぐらせて、ご飯の上に載せてあります。先ほどのハムカツとはまた違う、薄めだけどしっかりした衣にうなぎのタレのみりんと砂糖由来の甘さと、醤油の風味がソースと絡み合います。頬張って衣をザクザクさせつつ、ソースの酸味とタレのまろやかさを堪能。追っかけでソースの滲んだご飯をかっ込みます。うなぎのタレのおかげでしょうか、お米との相性も抜群で二重においしい!

お次は「桐生のポテト焼きそば」(770円)の登場です。こちらも桐生市のB級グルメとして知られる一品だそうです。戦後の食糧事情の悪い時期に、茹でたじゃがいもにソースをかけて炒めたものを子どものおやつとして提供した「子供洋食」というものがあったそうです。一説には、その進化版が焼きそばの形で定着したものだとか。

よくある焼きそばにじゃがいもがゴロゴロと入っています。先に茹でてからソースで炒めているので、じゃがいも自体にかなりしっかりした味わいがあります。麺は酒粕を混ぜ込んだオリジナルの細い中華麺を特注していて、歯ごたえがあり、ソースを絡めてもべちゃっとせず食べることができます。麺をじゃがいもと一緒に食べれば強くソースを感じられ、もやしと食べればシャキシャキ感も一緒に楽しめます。

山があったら水がうまく、水がうまければ酒がうまい?
群馬の地酒というと「尾瀬の雪解け」、「水芭蕉」などが思い浮かびますが、今回オススメいただいたのは、群馬県南部の太田市にある酒蔵「島岡酒造」さんの「群馬泉」(小一合 710円)です。甘さと酸味のバランスがよく後味はスッキリ。どんな料理にも合わせていくらでも飲んでしまえます。赤城山の湧き水のおいしさがよく感じられるようなお酒でした。
「どこまで群馬にこだわることができているか」がお店のテーマ
「ナルカミ」さんは、今年で創業12年。群馬県の鳴神山に因んで名づけました。店主の小野里全芳さんは、群馬県桐生市の出身です。海外への留学経験から、より地元を意識することとなり群馬県の食材や料理を提供するお店をオープンしたんだそうです。

主要な食材はもちろん、調味料も群馬県産にこだわり、ちょっとしたものでも群馬県内に工場のある会社のものを選んで使っています。加えてテーブル席の木材も土壁の藁も群馬産。壁にかけられている絵の作者の日本画家・山口晃さんは桐生高等学校卒業。もはやここまで来ると執着のレベルです(笑)。これほど群馬県にこだわった店は、ほかにないのではないでしょうか。ナルカミさんのご飯は、まぁずうんめぇんさ!

<お店情報>
「ナルカミ」
住所:東京都目黒区鷹番3-21-18 1F
営業時間:17:00~23:00
※2021年4月現在は、東京都の時短要請を受けて21:00までの営業
定休日:火曜日

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取材・文=古屋敦史、構成=小山田滝音(ブラインドファスト)

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