米ドル/円と金利の相関が復活

マネ―スクエアのチーフエコノミスト西田明弘氏が、投資についてお話しします。今回は、米ドル/円と米国の長期金利との関係について解説していただきます。

為替レートと二国間の金利差には密接な関係があります。基本的には、金利の高い国の通貨は強く、低い国の通貨は弱い(*)。ただ、もっと重要なのは為替レートと金利差の変化でしょう。金利差が拡大するなら金利の高い国の通貨が上昇し、金利差が縮小するなら金利の低い国の通貨が下落するという関係です。

(*)主に先進国通貨同士の場合です。新興国通貨の場合は、当該国の金利が先進国の金利を大きく上回ることも珍しくありませんが、通貨は先進国の通貨(とくに米ドルや日本円)に対して中長期的に下落する傾向があります。これは新興国のインフレ率が高いことと関係がありますが、その話はまた別の機会に(ヒントは購買力平価です)。

さて、米ドル/円についてみると、米国の金利はほぼ恒常的に日本の金利を上回っています。また、日本の金利の変化は相対的に小さいので、日米金利差の変化はほぼ米国の金利の変化に置き換えることが可能です。

以下では、米ドル/円と米国の長期金利(10年物国債の利回り)との関係を考察しました。

米ドル/円と米長期金利との相関は昨年夏以降に低下し、昨年終盤には強い逆相関にありましたが、今年に入って徐々に正の相関が強まっています。足もとでは米ドル/円の上昇と米長期金利の上昇が同時に起こっています。米長期金利が一段と上昇するようであれば、当面は米ドル/円を押し上げる要因となるかもしれません。

米国の長期金利が上昇している主な背景は、(1)大型経済対策成立の見通し、(2)金融緩和長期化の観測、(3)コロナ終息への期待、そして(4)市場要因です。
(1)大型経済対策
議会民主党は、民主党単独で可決可能な予算調整法案の準備を進めており、目標とする3月中旬にもバイデン大統領が提案する1.9兆ドルに近い形で経済対策が成立する見通しが強まっています。

大型経済対策によって景気回復期待が高まること自体が長期金利の上昇要因ですが、「財政赤字拡大⇒国債発行増」の観測が国債価格の重石(=金利上昇要因)ともなっています。
(2)金融緩和長期化の観測
金融緩和の一環としてFRBが国債を購入していることは国債価格の下支え(金利の抑制)要因です。一方で、FRBが、インフレ率が目標の2%を超えるのを容認する姿勢を明確にしていることはインフレ期待を高め、長期金利の上昇要因となります。実際、米国債のブレークイーブン・フォワードレート(5年後からの5年間のインフレ率見通し)はここ数年の高値近辺まで上昇しています。

「ゼロ金利」が数年続くとの見通しと将来のインフレ高進予想を反映した結果、イールドカーブ(利回り曲線)は年初に比べて、スティープ化(右上がりの傾斜が急になること)しています。

(3)コロナ終息への期待
ワクチンの普及によりコロナが終息に向かうならば、景気回復期待に加えて、投資家心理がリスクオフからリスクオンに傾き、安全資産としての米国債に対する需要が低下するでしょう。つまりは金利上昇要因です。

(4)市場要因
市場要因としてはヘッジ行動があります。市場金利が上昇すると、投資家が保有する債券、とりわけ期間の長いMBS(住宅ローン担保債券)などの価格が下落します。そうした状況に備えて投資家は国債を空売りします(*2)。それがさらに市場金利の上昇に拍車を掛ける悪循環に陥る可能性があります。

(*2)金利が一段と上昇すれば、MBSの価格は低下しますが、安くなった国債を買い戻すことで、全体の損失を抑えることができるからです。

上述した金利上昇の背景(1)から(3)は足もとの株高を支えてきた要因でもあります。株式市場は今のところ長期金利の上昇を懸念しているようにはみえません。ただし、株価のバリュエーション(評価)において金利は重要な要素です。どこかで金利上昇が株価の下落要因として作用するかもしれません。株価の調整によって金利上昇にストップがかかるというシナリオもあり得そうです。

西田明弘(マネースクエア) マネースクエア チーフエコノミスト。日興リサーチセンター、米ブルッキングス研究所、三菱UFJモルガン・スタンレー証券などを経て、2012年にマネースクウェア・ジャパン(現マネースクエア)入社。「投資家教育(アカデミア)」に力を入れている同社のWEBサイトでレポートを配信(一部は口座をお持ちの方限定で公開)する他、投資家のための動画配信サイト「M2TV」でマーケットを解説。 この著者の記事一覧はこちら

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