ビットコインで日本円が借りられる 仮想通貨金融が発展の兆し

米国では相次いで企業が購入するなど、新たな資産クラスとしての認知が広がってきたビットコイン。しかし、国内ではまだ投機の対象と見られることが多く、資産としての取り扱いはまだ少ない。

そんな中、ビットコインを担保として日本円を貸し出すサービスがスタートしている。大和証券グループとクレディセゾンが全額出資して設立したFintertech(東京都千代田区)が提供する、「デジタルアセット担保ローン」だ。

2020年4月にサービスをスタートし、秋からのビットコイン価格上昇で利用額も伸びた。サービスのプロダクトマネージャーを務める相原一也氏は、「11月、12月、1月と倍々で貸付額が伸びている」と活況ぶりを話す。このサービスはどんなもので、どのような可能性を持っているのだろうか。

海外で進展する仮想通貨金融
仮想通貨にかかわるビジネスといえば、国内では取引所がイメージされる。しかし海外では、取引所だけでなく、数多くの仮想通貨金融サービスが登場している。仮想通貨を貸し出すことで金利をもらえるレンディングサービスや、法定通貨に価値が連動するステーブルコインの発行、さらに有価証券をトークン化したSTOや、取引所が審査して新たな仮想通貨を上場させるIEOなどだ。これらは企業が提供するサービスだけでなく、ブロックチェーン上のプログラムだけで実行されるDeFi(分散型金融)サービスも増加している。

中でも仮想通貨を担保として法定通貨などを貸し出す暗号資産ローンは、急速に市場が拡大しているものの1つだ。業者向けのホールセールを主として暗号資産ローンを手掛ける最大手の米ジェネシスは、20年の1月~9月までの間に110億ドルのローンを組成した。9月末時点での貸付残高は21億ドルにのぼる。一般向けの米セルシウス・ネットワークやネクソも、数十万口座を持ち、数十億ドルのローンを組成している。

仕組みはこうだ。事業者は顧客から仮想通貨(暗号資産)を預かる。それを担保とし、時価の何割かに相当する額を顧客に貸し付ける。顧客は一定の利子を払うことで、借りたお金を自由に使うことができる。

一般にローンは、土地や建物などの不動産を担保として、その評価額の何割かを貸し出す。この不動産の代わりに仮想通貨を担保とするのが、暗号資産ローンとなる。いわば、事業者が仮想通貨を「資産」として認めた形だ。

誰が何のために借りるのか?
ではこの暗号資産ローン、誰が何のために借りているのだろうか。海外で主な借り手となっているのが仮想通貨の演算を行ってブロックチェーンを動かしているマイニング事業者だ。マイニング事業者が得る報酬は仮想通貨だが、これをまとめて市場で売却すると価格が下落するおそれがある。また、長期的に仮想通貨の価格が増大することを前提としたビジネスであるため、できるだけ仮想通貨を保有しておきたい。そんな理由から、得た仮想通貨を売却するのではなく、事業運営上必要な額を仮想通貨を担保として借りているといわれる。

国内では、大規模なマイニング事業者もなく、米国のように仮想通貨を資産として戦略的に保有する上場企業もないため、中小法人が主な借り手だ。

「当初はブロックチェーンベンチャーや暗号資産系企業がメインの顧客だった。途中からは、普通の事業をやっている会社が増えてきた。暗号資産をたくさん持っているが、それだけでは何にも使えないし、まだまだ価格が上がるので売りたくない、というオーナー社長が、担保にしてお金を借りられるなら自分のビジネスに生かしたいというニーズが多い」(相原氏)

証券担保ローンのノウハウを活用
Fintertechが暗号資産ローンサービスを始めたのは、海外での需要の盛り上がりとともに、親会社の大和証券グループが持つ証券担保ローンのノウハウを活用できるからだ。証券担保ローンとは、株式や債券などの有価証券を担保として、お金を貸し出す仕組み。この株式や債券の代わりに仮想通貨を担保として取り扱えるようにした。

「仮想通貨のようなデジタル資産は、銀行では担保として認識されていない。貸金業においても扱いがふわっとしている。一方で、ビットコインやイーサリアムは、国内の大型株と比べても流動性がある。受け渡しも容易で世界中とやりとりできる。証券担保ローンのノウハウが活用できるのではないか」(相原氏)

貸金業の免許を持ち、かつ仮想通貨を取り扱えなければいけない。さらに価格下落時には適切な担保処分も必要だ。こうした複合的なノウハウがあって、初めてサービスが実現できた。

Fintertechのサービスでは、担保にした仮想通貨の時価の50%を貸し出す。最大の特徴は低金利だ。借りる金額に応じて利率は4~8%。同社は「世界最低水準」をうたう。大和証券グループ、クレディセゾンといった大企業グループの資金調達力を生かした形だ。

今後の展開は、仮想通貨の種類の増加と、一般向けサービスへの拡大だ。現在は、国内の仮想通貨時価総額の約半分を占めるビットコインだけを対象としているが、今後、それに次ぐ時価総額を持つイーサリアムも担保として使えるように検討している。

もう1つは小口化だ。現在は最低1000万円以上の貸し出しからとなっており、大口がメインだが、これを個人向けなどにも広げていく計画だ。「仮想通貨を持っていても使い道がない。資金効率を高めたいとか、税金を払うために日本円が必要だという小口のニーズもある」(相原氏)。サービス提供の窓口としてグループのチャネルも活用していきたい考えだ。

さらに将来には、海外展開も視野に入れる。現在も制度的には、日本国内でドルを貸し出すことはできるが、海外で事業を行うためには各国の法令対応が必要になる。仮想通貨を預かって利息を払う、レンディングサービスも検討中だという。

決済用途だけではなく、デジタル資産としての意味合いが強まってきた仮想通貨。海外では、仮想通貨を資産とみなした金融サービスが続々登場している。さらに企業や人が仲介せず、アルゴリズムだけで動作するDeFiは新しい金融そのものだ。

単なる投機対象としてではなく、新たな資産クラスとして仮想通貨を見られるかどうか。仮想通貨の周りに広がる新しい金融サービスが、仮想通貨の捉え方を変えるかもしれない。

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