2度目の緊急事態宣言に”楽観視”は禁物 アパレル企業が今やるべきことは

2回目となる緊急事態宣言が1都3県に発出された。13日には大阪、京都、兵庫の関西3府県と、愛知、岐阜なども対象となる見込みだ。今回は飲食店を中心とした時短要請との事だが、1000平方メートル超の店舗には、営業時間短縮を要請する働きかけもあって都心の百貨店、ファッションビルは1~2時間の閉店繰り上げを決めた。

お正月気分も吹っ飛ぶような事態は「ついに来たか」「いよいよだな」と、年末年始にかけて急増していく新規感染者数のニュースに恐怖心を感じる人も多いだろう。2回目となる今回の措置に向けて、アパレル企業もコロナ対応が試される事になる。そこで、考えられるリスクと乗り越えるためのヒントを探ってみたいと思う。

2020年3~5月のアパレル主要企業の既存店売上高を振り返ってみよう。ユニクロの既存店売上高は3月が72.2%、4月は43.4%、5月は81.9%となっている。その他の企業でも4月は特に厳しかった。しまむらは71.9%、無印良品は28.5%、ユナイテッドアローズは75.8%だ。

いざ振り返ってみると3月2日から全国一斉に学校が休校となり、オリンピック開催が中止、週末の外出自粛要請から週末休業が始まったのが3月だ。段階的に外出自粛要請レベルを上げていったにも関わらず、なかなか新規感染者数が減らない。そして4月7日に東京都、埼玉県、千葉県、神奈川県、大阪府、兵庫県、福岡県の7都府県に緊急事態宣言が出され、同16日に対象エリアを全国に広げるに至った。

当初は期間も1カ月程度を目標に、4月末からの大型連休は「ステイホーム」の掛け声のもと連休を家で過ごしていた人が多かったが期待通りに新規感染者数は下がらない。結局、連休までとしていた緊急事態宣言も延長を余儀なくされ、最終的に緊急事態宣言が解除できたのは5月25日と、実に2カ月近くも時間がかかったのだ。

緊急事態宣言前後の既存店売上高は、リアル店舗の営業状況をそのまま反映したものと言っても良さそうだ。休業実施期間中はInstagramなどを使って、ショップスタッフの趣味や気付きなどの日常を投稿して顧客の関心をつなぎ留めようとした。他にもショップスタッフによるコーディネイトを多数投稿してオンライン経由による販売促進に取り組んだ企業もあった。

しかし、結果にコミットできたかというと疑問符がつく。また「取り組まなかったらどうだったのか?」との見方もあろう。結局、前回の緊急事態宣言で思い知らされたのは、リアル店舗の存在感の大きさだったのではないか。

楽観視は厳禁 完全休業要請の想定も
今後のシナリオを想像すると決して楽観視はできない。今回の緊急事態宣言は飲食店を中心にした時短要請だが、冒頭でも触れたように大型の商業施設なども時短営業を始めた。これは20年の3月頃の週末休業という初期対応の措置に近い。

不要不急の外出を控えるように呼び掛けられるものの、店は時短とはいえ営業していれば足を運ぶ人も少なからずいる。すると新規感染者数が減少に転じるには、かなりの時間を要してしまうのではないかと筆者は予想する。

特に東京都はオリンピックを抱えているので早期に封じ込めねばならず、このまま感染者が横ばいから更に増加すれば、フルタイムでの休業要請というシナリオも現実味を帯びてくるだろう。例年、インフルエンザが収束に向かっていた3~5月でさえ減少に転じさせるのに時間を要してきた。そのためインフルエンザならピークを迎えるこのタイミングでは、新規感染者が減少に転ずる望みはさらに薄くなると言わざるを得ない。

つまり、近いうちに2度目の完全休業要請も想定する必要があるということだ。20年の緊急事態宣言中は、若者はオンラインゲームにいそしみ、中高年はホームセンターに詰めかけた。三井住友カードの保有するキャシュレスデータから導いた決済金額の伸長ランキングによると、そうした行動が見てとれる。

備えあれば憂いなし フルタイムでの休業要請を見据えた対応を
他の民間リサーチ会社の調べによれば、ステイホーム中はリアルタイムでのテレビ視聴と、インターネット接触時間が増加していた。このインターネット接触はSNSをはじめ動画配信まで細かくセグメントする必要がある。実際、ネットフリックスやAbemaTVといった新興メディアへの視聴者数の拡大は今回のコロナ禍が追い風の1つとなったと考えても良さそうだ。

前回の緊急事態宣言と同様に、アパレル企業が自社のWebサイトを中心に発信内容を充実させて、売り上げを増やすのは一朝一夕にできることではない。顧客になってもらうには時間も人も手間もかかってしまう。

即効性を狙うのであれば、より接触頻度の高いメディアへの広告かコラボレーションが有用だろう。それは明らかに費用が掛かるものの、その分効果も期待できるというものだ。近いうちにフルタイムでの休業要請が想定される。その要請を視野に入れた取り組みは「拙速は巧遅に勝る」より「備えあれば憂いなし」なのである。

著者プロフィール
磯部孝(いそべ たかし/ファッションビジネス・コンサルタント)

1967年生まれ。1988年広島会計学院卒業後、ベビー製造卸メーカー、国内アパレル会社にて衣料品の企画、生産、営業の実務を経験。

2003年ココベイ株式会社にて、大手流通チェーンや、ブランド、商社、大手アパレルメーカー向けにコンサルティングを手掛ける。

2009年上海進出を機に上海ココベイの業務と兼任、国内外に業務を広げた。(上海ココベイは現在は閉鎖)

2020年ココベイ株式会社の代表取締役社長に就任。現在は、講談社のWebマガジン『マネー現代』などで特集記事などを執筆。

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