「和服でCAが接客」実は昔JALがやっていた! 独自すぎるがゆえの超ユニークなウラ話

航空会社のCA、スチュワーデスの制服は国内ではスーツスタイルのものが一般的です。ただ、かつてJALでは和服でサービスを提供していたことも。実に日本らしい和服でのサービスには、独自ゆえの裏話があったといいます。
2021年が始まりました。初詣や初売りの広告などにはイメージとして和服を着たモデルが使われるケースが多いですが、現実的には着物を着る人は少ないのではないでしょうか。また着たとしても、その機会は初詣や成人式、結婚式くらいであり、普段はそうそうお目にかからないというのが一般的だと考えます。
日本の航空会社に目を転じると、和服はまず見かけることなどなく、CA(客室乗務員)は制服を着用します。国内航空会社ではスーツスタイルのものが一般的で、これは世界的なスタンダードにのっとったものといえるでしょう。とはいえ、シンガポール航空などでは、民族衣装のような少し変わり種もあります。
「和服でCAが接客」実は昔JALがやっていた! 独自すぎるがゆ…の画像はこちら >>JALのDC-6B型機(画像:JAL)。
日本でいえば民族衣装のひとつともいえる和服ですが、実はかつてのJAL(日本航空)国際線における機内では、和服を着たCAが接客する光景はごく一般的に見られたものでした。
JALは、戦後初めて国内航空会社の国際線として、1954(昭和29)年から東京~サンフランシスコ線をDC-6B型機で開設したものの、当時、旅客として期待できるのはアメリカ人が大多数だったそう。そのなかで、アメリカの営業所とアメリカ人ビジネスマンの利用を促進する方法を検討した結果、機内で和空間を演出することを思いつきます。そこで、機内サービスとして屏風を置き、CAは和服で乗務することとしました。

JALのスチュワーデス(当時のCAを指す)は、毎月のシフトで和服を着てサービスする担当者が指名されます。担当者は当日、通常の制服を着用し機内に乗り込みますが、そのとき抱えているのは、大きな和服の収納ケースでした。
担当者が和服に変身するのは、搭乗客を迎えた後。機内サービスが始まる際に、トイレで和服に着替えていたといいます。
ちなみに、スチュワーデスとして乗務するには、訓練をクリアすることが必須ですが、その項目のひとつに和服への着替えも含まれていたとも。着替えは15分というタイムリミットもあったほか、和服を着ての救難訓練も実施されたそうです。
このあたりの経緯は、1970(昭和45)年にTBS系列で放映されたTVドラマ「アテンション・プリーズ」でも取りあげられていました。ちなみにこのドラマ、2006(平成18)年にはリメイク版が放映されたものの、新しい方では和服に関するエピソードは盛り込まれることはありませんでした。
和服は通常ワンピーススタイルだったものの、途中から着替えやすいようにツーピースとなったほか、着用に手間のかかる帯も容易に着けられるものにアレンジされたそうです。また着物は、制服と同様に支給品だったようですが、重くかさばったため、機内や空港での持ち運びは非常にハードなものだったといいます。そのため、和服の運搬には新米スチュワード(スチュワーデスの男性版)がサポートしたとも伝えられています。

このように、スチュワーデスにとっては苦労のタネだったものの、和服はJAL国際線のひとつのウリとなりました。
その後、国際線の主力機は、レシプロ機のDC-7C型機から、ジェットエンジン搭載のDC-8型機、より大型の「クラシック・ジャンボ」ことボーイング747型機……と変遷をたどります。使用機材が進化しても和服を着ての機内サービスは継続されたようで、記録では1990(平成2)年まで実施されていた模様です。なお時を同じくして、国際線向けの新型機として「ハイテク・ジャンボ」ことボーイング747-400が導入されており、もしかすると和服でのサービスの廃止は、これに関連するものだったのかもしれません。
JALのボーイング747-400型機(画像:JAL)。
ちなみに、和服による機内サービスは、私(種山雅夫、元航空科学博物館展示部長 学芸員)も以前はJALの専売特許かと思っていましたが、イギリスのブリティッシュ・エアウェイズが日本線を開設し、日本人スチュワーデスを乗務させた頃に、実施したことがあるそうです。
最近、空港において地方の特色を活かしたイベントなどを行う際、スタッフが和服を着用し、ゲートでお迎えしたり、機内における記念品サービスを実施したりすることがあります。しかし、CAが機内で和服を着用した状態で各種サービスをする姿は、めったに見ることはできません。
現代においても、和を感じるサービスとしての需要はありそうですし、男性乗務員の紋付袴も見てみたいと思うのですが、本来CAは保安要員という役割で、乗務中の作業量も多いため、実現は難しいといえそうです。

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