池上彰さん監修の児童書「なぜ僕らは働くのか」異例40万部ヒットの理由 担当編集者に聞く

少子高齢化が進み、それぞれの働き方が問われる中、児童書「なぜ僕らは働くのか」(学研プラス、1650円)が昨年3月の発売以来、40万部を超え、異例のヒットを記録している。さまざまなデータや統計などを使い、これからの働き方を分かりやすく教えてくれる。イラストを使って読みやすくした工夫も好評だ。担当編集者に聞いた。(久保阿礼)
「かなり作り込んだので、10万部ぐらい出てくれたら、と思っていました。予想外の大ヒットでしたね」。学研プラス小中学生事業部の宮崎純編集長(39)は手応えを語った。約250人に実施したアンケート調査では読者満足度が97・5%を記録。1年弱で40万部を超え、今も反響は続いている。「働くことや生きていくことの本質を、子供たちにも分かりやすく伝える本を作りたかった。これだけ反響をもらって良かったな、と」
「なぜ僕らは働くのか」。子供や大人が意識する哲学的なテーマでもある。導入は漫画から始まる。東京暮らしのハヤトは中学受験を経験し、合格した。だが、不登校になり、母の実家に引っ越す。そして、学校での職場体験をきっかけに、将来への不安を感じるようになった―。章ごとにテーマを変え、漫画から詳細な解説へと展開し、最後まで一気に読み進めることができる。なぜ自分は勉強しているのか、将来なぜ働くのか、主人公は成長する過程でさまざまな疑問が浮び、壁にぶつかる。
「主人公と読者の立場をリンクさせて感情移入してもらえたらいいな、と。作りながら各章の立て方を決めましたが、漫画だけだと情報量が少なくなってしまいます。働くことを丁寧に説明すると、内容は多岐にわたります。生きること、お金とはなど、説教くさくならないように工夫しました」

もともと全国の学校や図書館向けの本として19年2月に出版した。生徒や学校関係者に評判が良く、宮崎さんと、同じ編集部の中西亮太さん(28)の2人を中心に「市販化して勝負しよう」と決めた。事前に見本を教諭ら教育関係者に配布。約250人の意見や感想を集め、内容を再検討した。ジェンダーやSDGs(持続可能な開発目標)、世界とのつながりなどを加筆した。働くことの意味、生活していくには、いくらかかるのか。AI(人工知能)時代の生き方、勉強することの意味は何か…。「考える材料」を分かりやすく示した。
宮崎さんが別の仕事で一緒に仕事をしていた縁で、ジャーナリストの池上彰さん(70)に監修を依頼した。「普段、淡泊な方なんです。でも、出来上がった本を見てもらったら、池上さんから『すごいですね。感動ものです』と言ってもらえました。うれしかったですね」。男の子が中心に配置された表紙もインターネットによる投票で決め、巻末には将来を考える時、「きっと役に立つ」と言う参考図書も掲載した。
「世の中にはいろいろな職業があり、いろんなお金の稼ぎ方があります。ユーチューバーも少し前までは選択肢になかった職業ですよね。でも、今は憧れの職業です。悩んで苦しんだ時、進路に迷った時など、皆さんの背中を押せるような本であってほしい。近くに置いて、読んでいただけたらうれしいですね」

シェアする

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

フォローする