20代から高めておきたい投資・資産運用の目利き力 第16回 不動産再生・リノベーションのプロは物件の良し悪しをどう見極めているのか

「人生100年時代」と言われる現代。20代でも早いうちから資産形成を進めることが求められています。一方で、どのように投資・資産運用の目利き力を磨いていけばいいのか、悩んでいる方は多いのではないでしょうか。

この連載では、20代の頃から仮想通貨や海外不動産などに投資をし、現在はインドネシアのバリ島でデベロッパー事業を、日本では経営戦略・戦術に関するアドバイザーも行っている中島宏明氏が、投資・資産運用にまつわる知識や実体験、ノウハウ、業界で面白い取り組みをしている人をご紹介します。

今回は、不動産再生のプロであり、不動産を通じて街に新たな価値を生み出しているプラチナホームの鈴木昌輝氏にお話を伺いました。

プラチナホーム 代表 鈴木昌輝氏
首都圏の中古マンション買い取り・販売業を経て、平成22年3月にプラチナホームを起業。アパートやマンション、戸建ての賃貸仲介から事業をスタートし、現在は主に不動産再生・リノベーションを手掛ける。

不動産業も大事なのは「信頼関係」
――本日はありがとうございます。鈴木さんとは6年以上のご縁ですが、こうしてお話を伺うのは初めてかもしれません。不動産業界歴は、かなり長いですよね。

そうですね。今の会社(プラチナホーム)を起業する前も不動産会社にいました。

――起業されたのはリーマンショックの4年後、不動産価格が底を打っていた頃かと思います。どんな思いで起業されたんですか?

安定的な会社、自立した会社、経営基盤が強い会社をつくりたい、そんな思いで起業しました。

起業当時はまだまだ経済も不動産価格も回復していない頃でしたので、会社によっては外部環境に影響されてしまいがちです。でも、自分でやるならそうではない会社にしたいと思いました。

社名のプラチナホームは、”プラチナ”という化学的に安定した物質から取っています。プラチナって、温泉に入れても色が変わらないんですよ。

――なるほど、そういう意味が社名に込められていたんですね。現在は、不動産再生・リノベーションを手掛けていらっしゃいますが、最初からそのような仕事をされていたのですか?

いえ、最初から大きな仕事はできないので、アパートやマンション、戸建ての賃貸仲介からスタートしました。

まずは東京・吉祥寺でナンバー1になりたいと思い、地域密着でやっています。その次に店舗仲介を始めて、少しずつ事業を拡大していった形です。起業から最初の3年間は、スモールスタートで徐々にという感じですね。

そのあと、次のステップで区分マンションを買い取りました。その物件をリノベーションして売却して……。

――徐々に実績や信用を高めていったというわけですね。

そうですね。信頼関係ができると、良い情報も入ってくるようになります。

昭和47年築の駅近ビルを相場よりも安く購入したこともありました。築年数は古いのですが、立地で人通りも多いので買う決断をしました。その昭和47年築のビルは高値で売却することができました。

僕には物件を買う際の基準があって、裏通りの物件はあまり買わないようにしているんです。神宮前などであれば裏通りでも良いと思いますが、裏通りであることが価値になるような立地でない限り買いません。

――買わない基準が明確というのは強いですね。まさに目利き力ですよね。どうしてその物件は高い利回りで買うことができたのですか?

不動産業界独特のウェットな関係みたいなものがありまして。市場にまだ出回ってない物件の相談ベースの話から成約に至ることがあります。付き合いのある不動産会社さんが値付け前の物件の相談を持ち込んでくれるんです。

やはり信頼関係が重要なのは、不動産に限らずどんな事業でもそうですね。

――そうですよね。結局は人であり信頼関係だなぁとつくづく思います。口の軽い人はダメなんですよね。

仰るとおりですね。その物件は、オーナーが高齢で手放したいということで相談があったんです。サイトに載らない情報、市場に出回ってない情報をいかにして得られるかがポイントですね。
先行投資をかけられる”立地の良さ”が一つの判断基準
――鈴木さんの中で、物件の目利きの基準は立地以外にもあるのですか?

安く買い取って高く売却するパターンと、市場価格で買い取って高く売却するパターンがあるのですが、どちらのパターンでも立地は一番重要視しています。

具体的には、道路付けの良さや駅からの距離を見ます。駅と言っても、ターミナル駅やベッドタウンの駅など、利用客の多い駅に限られます。立地以外では、建物もやはり重要なので必ず見ますね。

築年数が古くても、建物に難があっても、立地が良ければお金をかけてリノベーションすることで売却は可能です。リノベーションには数千万円をかけることもあるので、それだけ先行投資をかけられる立地がかどうかがポイントですね。

――やっぱり一番重要なのは立地なんですね。鈴木さんはこれまで多くの物件を手掛けてきたと思いますが、失敗パターンはあるのでしょうか?

これまで50棟以上はリノベーションしてきたのですが、やはり失敗経験もあります。成功パターンはあいまいなのですが、失敗パターンはある気がしますね。

マイナーな駅だったり、駅から遠かったり。駅から徒歩10分以上になると、難しくなります。あと、物件を見て「何か気持ち悪い」という直観的な判断で買うのをやめることもあります。

――それは長年の経験からくる直感なのでしょうね。そういう違和感って大切ですよね。違和感を抱えたままだと投資も失敗するでしょうし。市場価格で買う場合は、どのような投資判断になるのでしょうか?

相場並みの価格で買う場合は付加価値をつけるしかありません。用途変更をして収益改善できるビルかどうかが判断基準になりますね。

例えば、「Hotel Asakusa KANNONURA」(ホテル アサクサ カンノンウラ)という”ライフスタイルホテル”をコンセプトとした事業もその一つです。

もともとその建物は浅草寺グループが所有していた看護師寮(施工は清水建設)でしたが、マンションよりもホテルにした方が収益性が上がると判断して買う決断をしました。その後、コロナショックが来てしまったのですが…。

不動産は、住宅よりも店舗やオフィスの方が、店舗やオフィスよりもホテルの方が収益性は高くなります。その代わりボラティリティも高くなります。

安定した収益を得られるかどうかは運営次第で、不動産投資というよりは事業投資の面が強くなりますね。

――ホテルだと、毎日空室リスクがあるようなものですからね。事業ですよね。

そうなんです。物件の購入価格+リノベーション費用の初期投資がペイする事業収入を、売れそうな利回りで割り返すと売却価格が出ます。

できれば、購入価格+リノベーション費用の15%以上の粗利が目安です。それに合わなければ買わないようにしています。

――買わない基準が明確なのは、やはり強いですね。
サービスとしての不動産が街に新たな価値を生み出す
――浅草のライフスタイルホテルの開業は、鈴木さんのお仕事の中でも新しい取り組みですよね。

はい。コンセプト設計からリノベーション、用途変更までプランニングしました。共同住宅からホテルへの用途変更は建築基準など法令上困難なケースが多いのですが、エリアとのマッチングと希少価値を追求して、浅草の魅力を伝えていくホテルとして再生したいという思いからですね。新しい取り組みですが、楽しんでいますしやりがいも感じます。

またこの物件は、数千万円かけてフルリノベーションしています。空間デザイナーや照明デザイナーも入れて、外国人長期滞在者向けにシェアキッチンもつくりました。浅草の人情味ある商店街などで買った食材を、シェアキッチンで料理して楽しむことができます。

コロナ禍でのオープンだったので苦戦はしているのですが、こういう状況なのでいろいろと策を考えながらつくりました。単なるホテルではなく、マンスリーやウィークリーでも貸せるように工夫し、いずれインバウンドが復活したときにはホテルに戻せるようにフレキシブルな対応ができるようにしました。

ホテルに比べると収益性は下がるのですが、それでも利益を出すことはできています。ある意味、最悪な環境でスタートしたので、アイディアがたくさん出てきましたね。

――逆に強い経営基盤ができたわけですね

そうですね。結果的には良かったと思います。まさかこういう事態になるとは思っていませんでしたが、コロナ禍でも収益を出せる事業を確立できていれば、買い主の方も安心ですから。

今は、箱(建物)をつくれば人が来てくれる環境ではないと思います。積極的に集客する工夫が必要です。

浅草のライフスタイルホテルでは、浅草ならではの工夫もしています。例えば、人力車やレンタル着物などの会社さんとタイアップして、サービス面でも付加価値を付けています。「コト消費」と言われているように、体験というサービスを提供できるホテルにしていきたいんです。

コロナがなければ、人力車やレンタル着物の会社さんとのタイアップは実現しませんでした。地域の会社とタイアップできたことはとても嬉しいですね。ある意味では、コロナがもたらしてくれた助け合いの関係というか、地域密着が深まったと感じています。地域に貢献できる建物をこれからもつくっていきたいですし、このようなサービス面の充実は、インバウンドが復活したときに武器になると考えています。

また、平日をどう活用していただくかも策を練っているところです。ウィークリープランとしてテレワークプランを企画中で、貸しスペースとしての活用も行っていきます。宿泊付きのコワーキングスペースであり、ホテルですからプライベート空間も提供できる。そんな活用の仕方も考えています。

GoToキャンペーンが再開されれば、制度が適用できるので、実質5日で1万5,000円ほどの負担で済みます。タクシー会社と提携して空港からの送迎プランもあるので、出張などのビジネスパーソンの利用もできると思います。

今は耐え忍ぶ時期なのですが、普通のホテルだと工夫のしようがないことも工夫することができました。普通のホテルだと、メーターが個別になっていないのですが、もともとマンション(看護師寮)だったので普通のホテルとは設備が違うんです。もともとマンションだったのが強みになりましたね。
不動産再生は究極のモノづくり
――今後はどのようなことを実現していきたいですか?

不動産再生を引き続きやっていきたいと思っています。日本だけでなく、中島さんのように海外でもやりたいですね。モノづくりが好きなので、右から左に転売するだけではつまらないんです。価値を生み出すのが楽しいので。あと現場が好きですね(笑)。

――わかります。私たちが手掛けているバリ島のアパートも、20年近く草がボーボーだったところを整地して、体ができて、アパートの前の道もきれいにして、徐々に完成して。そういう過程も含めて楽しいんですよね。不動産の醍醐味だと思います。

価値を生み出す仕事をしたいですね。利用する人も地域も喜ばせられるのが不動産だと思います。一つシンボル的な建物ができると町が変わっていきますから。マクロな視点からベストやベターを考えるのが楽しいです。

――コロナが落ち着いたら、ぜひバリ島のアパートも見に来てください。今日はありがとうございました。

中島宏明 なかじまひろあき 1986年、埼玉県生まれ。2012年より、大手人材会社のアウトソーシングプロジェクトに参加。プロジェクトが軌道に乗ったことから2014年に独立し、その後は主にフリーランスとして活動中。2014年、一時インドネシア・バリ島へ移住し、その前後から仮想通貨投資、不動産投資、事業投資を始める。現在は、複数の企業で経営戦略チームの一員を務めるほか、バリ島ではアパート開発と運営を行っている。監修を担当した書籍『THE NEW MONEY 暗号通貨が世界を変える』が発売中。 この著者の記事一覧はこちら

シェアする

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

フォローする