新卒内定者500人がアバター姿で“バーチャル交流会” Zoomは使わず「あえて自社開発」、富士ソフトのこだわり

富士ソフトが11月18日、2021年度の「新卒内定者交流会」をオンラインで開催した。自社開発のバーチャル交流会ツールを活用し、内定者約500人、富士ソフトの社員約100人がアバター姿で参加した。この交流会を企画した富士ソフトの担当者と参加した内定者を取材した。

内定者の不安解消を目的に開催
コロナ禍が続く中、昨年までの状況と大きく変わったのが企業の新卒採用だ。業績が悪化した業種・業界では新卒採用を見送る動きが見られるなど、来春に卒業を予定している学生の就職活動に深刻な影響を及ぼしている。例年通りの新卒採用を実施した企業もあるが、その中には従来はリアルで行っていた会社見学、説明会、相談会、面接、入社試験といった一切の採用活動を、オンラインに切り替えた企業は少なくない。

こうした新卒採用活動のオンライン化にいち早く取り組んだのが、独立系システムインテグレーションベンダー大手の富士ソフトだ。採用活動をオンライン化しただけでなく、内定者向けの各種施策から入社式、新入社員研修に至るまでのイベントもオンライン化。10月1日には、来春入社予定の内定者を集めた内定式をオンラインで開催した。

さらに富士ソフトは、新卒内定者交流会もオンラインで開催。交流会を企画した背景について、広瀬敦子氏(人材開発部 部長)はこう話す。

「2021年度の新卒内定者のほとんどは、コロナ禍の影響により会社見学、面接などの就職活動が全てオンライン対応になり、会社側と対面のやりとりがないまま内定承諾に至っています。どうしても入社への不安があるという内定者もいるので、内定者同士や社員との交流を深めてもらうために交流会をオンライン開催することにしました」

バーチャルオフィス空間をベースに自社開発 どんな仕組み?
この新卒内定者交流会には大きな特徴がある。それは、富士ソフトが自社開発したバーチャル交流会ツールが使われたということだ。

「Microsoft TeamsやZoomといったさまざまなコミュニケーションツールがある中、SIベンダーである当社は、あえて自社開発のバーチャルツールを用意しました。遊び心を加えて、内定者に楽しんでもらいたいという思いを込めています」(広瀬氏)

このバーチャル交流会ツールは、富士ソフトが今年7月から運用しているバーチャルオフィス空間「FAM(Fujisoft Augmented Meetup)Office」がベースになっている。開発を主導した松浦直樹氏(プロダクト事業本部 副本部長)によると、もともとは在宅勤務でのコミュニケーションの課題解決を目的としたものだという。

「当社は現在、在宅勤務が6割、リアル出社が4割というハイブリッドな働き方を取り入れています。在宅勤務の比率が高いと『同僚に話しかけるタイミングが分からない』『部下の仕事ぶりが把握できない』といったコミュニケーションの課題がどうしても生じます。そこで課題解決の手段として、Webブラウザ上にバーチャルなオフィス空間を再現したFAM Officeを自社開発することにし、約2カ月をかけて作り上げました」(松浦氏)

FAM Officeではオフィスを模したバーチャル空間に社員一人一人がアバターで表示され、仕事中・会議中・外出中といった各社員の状態がひと目で分かるようになっている。自分のアバターを話しかけたい相手のアバターにドラッグ&ドロップすると、音声で会話・打ち合わせ・雑談も可能だ。資料を共有しながらビデオ会議を実施する機能なども備えており、実際に利用する社員の評判は上々だそうだ。

「このFAM Officeを活用した交流会が開催できないかという相談を人材開発部から持ち掛けられ、バーチャル交流会ツールを開発したわけです」(松浦氏)

同期との親睦が深められたと好評価の声
新卒内定者交流会は11月18日、富士ソフトの社員約100人が“おもてなし役”として参加し、内定者約500人が出席して開催された。バーチャル交流会ツールにはおよそ50人程度が入室するフロアが複数用意され、内定者はあらかじめ指定されたフロアへ自動的に割り振られる仕組みになっていた。

交流会の冒頭には坂下智保社長があいさつに立ち、オンライン開催の意図を次のように説明した。

「10月1日にオンラインで行った内定式は、ほぼ一方通行の配信という形でした。例年は内定式後に同僚と交流を深めるパーティーを開催しているのですが、今年は自社開発のバーチャルツールを活用した交流会に切り替えました。ITの力を使えばリアルの世界とあまり変わらない、それ以上のコミュニケーションの活性化を実現できる可能性があります。本日は4月1日の入社に向けた助走の場として、周囲の人とどんどん会話をして横のつながりをつくってください」

続いて少人数のテーブルに分かれ、交流会の第一部がスタート。ここでは富士ソフトの社員がモデレーター役を務め、内定者の自己紹介や意見交換が活発に行われた。後半の第二部では、フロア内をアバターで自由に歩き回りながら会話したり、「幹部」「女子」「若手」「文系」などテーマごとに用意されたテーブルに移動して歓談したりと、内定者それぞれが思い思いに過ごすフリータイムも設けられた。

交流会が進んで内定者の緊張がほぐれたころに、オンライン開催について感想を聞いてみた。すると「内定をもらったものの会社とのリアルな接点がないので不安だったが、短い時間でも先輩社員や同期と交流を深めることができて良かった」「役員や先輩社員と会話ができて勉強になったし、同期との親睦も図れて楽しめた」など、肯定的にとらえた声を多く聞くことができた。人材開発部の広瀬氏にも内定者の反応を尋ねてみると、「内定者向けのアンケートをあらためて実施する予定にしていますが、おおむね期待通りの感想が寄せられています」ということだった。

「いまだに対面でのやりとりが難しい状況の中、先輩社員や同期と直接会話することで不安を払拭し、入社を控えた内定者の向上心やワクワク感を創出できたと思います。機会があれば、入社までの間に何度か同様の交流会を企画したいです」(広瀬氏)

アフターコロナの時代では、このような交流会のオンライン開催も当たり前になっていくのだろう。富士ソフトの新卒内定者交流会は、そんな予感をさせるものだった。

シェアする

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

フォローする