LINEで“濃い”関係づくり、売り上げ1.3倍に コメ兵が見据える中古品ビジネスの将来像

お客さんとの関係構築が難しくなった――。新型コロナウイルス感染拡大の影響でそう感じている人が少なくないのではないだろうか。対面接客の機会が減り、“非接触”のオンラインツールなどを活用する事例が増えているが、まだ手探り状態だという企業も多いだろう。

16年には「LINE」を使って買い取り金額を査定するサービスを導入。コメ兵の公式LINEアカウントに品物の写真を送るだけで、査定金額の目安を知ることができるサービスだ。気軽に利用できる仕組みによって、買い取りのハードルを下げた。現在、LINE査定の年間件数は約23万件に上るという。

こういった取り組みを通して、一つ明らかになったことがある。同社執行役員マーケティング統括部長の藤原義昭氏は「Life Time Value(LTV、顧客生涯価値)」という言葉を用いて説明する。

「オンライン買い取り、オンライン販売、店頭買い取り、店頭販売の4つのチャネルを用意しているが、複数のチャネルをまたいで利用していただくと、お客さまのLTVが向上することが分かった」(藤原氏)

LTVは、1人の顧客が生涯のうちにどれだけ自社のサービスを利用するか、という指標。オンラインサービスや店舗での接客など、複数のサービスに触れるほど企業への愛着がわく。そういったデータがあるからこそ、オムニチャネルを推進しているのだ。藤原氏は「デジタル化が目的ではない。あくまでLTVを高める手段だ」と話す。

コロナ禍で「LINE接客」強化、平均売り上げ1.3倍に
同社ではこの考え方を浸透させてきたことから、新型コロナの影響が出た後も、オンラインの基盤を活用しながら顧客との関係を深める取り組みを進めてきた。LINEやWeb会議ツールでの接客や個別訪問を実施したほか、店舗休業中も顧客の都合に合わせて店を開けることもあった。「デジタルだけで完結するのが難しいビジネスだが、なるべく接触する時間を短くした」(藤原氏)という。

その中でも特に効果を発揮しているのが「LINE接客」だ。店舗担当者にスマートフォンを渡し、自由に顧客との連絡に使えるようにしている。以前から試験運用していたが、新型コロナ感染拡大の直前に本格的に開始。LINE接客を実践した店員1人当たりの平均売り上げは1.3倍に増えた。現在、全国の店舗の約100人にスマホを渡している。

LINE接客のやり方にはルールを定めず、やりとりする客の人数や連絡の頻度、内容などは個々に任せている。それぞれの顧客の性格やニーズを最もよく知っているのは担当者だからだ。そのため、店員によってやり方はさまざま。商品の情報提供や提案だけでなく、自分の出勤日を連絡したり、雑談に応じたりといった使い方をしている人が多いという。

実店舗で接客する業種の場合、自分の担当する顧客がいても、客が店に来られない状況が続けば疎遠になってしまうが、LINEを使えばリアルと変わらず関係を深めることができる。「お客さまの信頼を得て仲良くなることを重視している」と藤原氏は話す。

「新型コロナによって店に来る人が大幅に減り、来店しても用事だけ済ませて帰る人が多い。そんな状況でも、LINE接客によって、お客さまにこれまでと違う体験を提供できる」(藤原氏)。店員にとっても、自分の担当する顧客にこれまでと異なるアプローチで接する機会になった。顧客が来店したときに話を聞いて即座に提案するだけでなく、事前のコミュニケーションがあることで、提案の幅を広げることができる。また、LINEであれば返信するタイミングを自分でコントロールできる利点もある。

このように顧客と密に関わる方法がうまく機能しているのは、LTV向上を見据えて「お客さまと長く付き合うという意識が根付いている」(藤原氏)からだ。それが顧客にも伝わり、店舗でもLINEでも、自分の担当者とおしゃべりをしたがる人は多いという。

満足度向上へ「データ活用」も本格化
現場での関係構築にデジタルを使うだけでなく、データ活用による顧客体験向上に取り組むことも視野に入れる。OMO(Online Merges with Offline)推進の一環として、8月にECサイトをリニューアル。スマホで使いやすいサイトにしたほか、コンタクトセンターの機能を強化して、ECと店舗の問い合わせ対応窓口を集約させた。

そして、ECサイト刷新によって、さまざまなデータを管理して分析する基盤を整備したという。購買データと顧客の基本データにとどまらず、ECサイト内での行動データ、アンケートデータ、ダイレクトメールに対する反応などを分析する基盤を整えており、今後はそういったデータを活用する機能を増やしていく計画だ。

それができれば、顧客に精度の高いレコメンドをすることが可能になる。これまでは対人接客のノウハウを生かした提案を行ってきたが、まだ接客経験が少ない人には難しかった。データを活用できれば、それぞれの客におすすめできる商品が分かってくる。データを接客と組み合わせることで、顧客満足度を高めることが狙いだ。

リアルの接客は小さく、“濃い”ものに
顧客体験の幅を広げるため、店舗展開の在り方も変化させつつある。18年から、広さ10~20坪(約30~60平方メートル)の小型店の出店を強化。商品を陳列しない買い取り専門店だ。以前は出店していなかった住宅街や商業施設内にも出店を始めている。

藤原氏はその目的について「まだまだモノを売ったことがある人は少ない。買い取りサービスのハードルを下げることが必要」と説明する。顧客にとって利便性が高い地域に、機能を絞った店舗を出すことで「利用してみようかな」と思ってもらう戦略だ。

「ECサイトで商品を見て、家の近くの店舗に取り寄せて購入できるような形式も広めていけたら」と藤原氏は話す。小型店は、ブランディングを担う大型店とは役割が異なる。オンラインと組み合わせて機能的に利用できる店舗として認知してもらえる可能性も高い。今後も顧客ニーズに応じて小型店を広げていく方針だ。

アフターコロナではオンライン活用の重要性がますます高まっていくが、藤原氏は「(コメ兵は)完全なECの企業にはなれないし、お客さまも望んでいない」と言い切る。「フィジカルの接客を小さく、しかし“濃い”ものに」(藤原氏)するために、デジタル活用の環境を整備し、社員のリテラシーを高めることが課題だという。

コロナを機にオンライン接客を取り入れた企業も多いだろうが、ただ「接触せずに接客する」ことだけが目的ではもったいない。商材や業態によって顧客が求めるものは異なる。オンラインでも、ニーズを理解した上でサービスを提供することが成功のために必要だろう。

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