円安・株高の関係が終わりを告げる? 外貨預金も金利悪化

新型コロナウィルスのワクチンは、株式市場にも効くようだ。

11日の米ファイザー社、次いで16日の米モデルナ社による「ワクチン報道」が株価を押し上げている。17日には日経平均株価が29年半ぶりに2万6000円を突破し、NYダウ平均に至っては史上最高値を更新した。一時3万ドルの節目を超える場面もみられた。

一方で、これまでの常識が通用しなくなりつつある市場も存在する。それは為替市場だ。アベノミクス始動から半ば常識となっていた「円安株高」が、このワクチン相場では通用しない状況になっている。今の状況は「円高株高」となっているのだ。

それでは、日経平均株価と為替相場の関係を振り返ってみよう。まずは2008年からの長期で比較する。08年からの世界金融危機では、円高・株安傾向だったが、12年末からのアベノミクス始動に伴う日銀の異次元緩和によって、円安・株高が同時進行した。

輸出企業にとっては、円安になるほど有利になる。円安になると業績が改善する企業が多かったことで、これまでは「円安株高・円高株安」という相関が市場の常識となった。

しかし、その法則は次第に乱れてきている。20年の6月以降の株と為替の動きに注目したい。20年の6月以降は、日経平均株価が上昇すればするほど、円高となっている。この逆転現象は時期を追うごとに加速し、11月には乖離(かいり)状況が一層拡大しているのだ。それではなぜ、今の状況は「円高・株高」となっているのだろうか。

コロナで世界的な低金利時代に突入
コロナ禍による大きな市場環境の変化といえば、各国の政策金利だろう。政策金利とは各国の金融機関における預金金利等のバロメーターとなる金利水準だ。一般的に、インフレ率や経済成長率の高い新興国は政策金利が高く、先進国は低金利になる傾向がある。

低金利の国では、高金利の国に資金を投資し、その金利差で高い利回りを期待する「キャリー投資」という投資手法が人気だ。日本でも、外貨預金や外貨建て保険、そして外国為替証拠金取引(FX)等におけるキャリー投資が人気であった。

とりわけ「高金利通貨」とされるオーストラリアドルやニュージーランドドルが人気を博してきたが、コロナ禍はそのようなキャリー投資が難しい市場環境を作り出してしまったのだ。各国の「高金利通貨」とよばれていた通貨の政策金利を比較してみよう。

コロナ前の20年2月と、20年9月における各国の金利を見てみると、いわゆる「円キャリー投資」によく用いられていた、米ドル・ポンド・豪ドルをはじめとしたほとんどの高金利通貨が「利下げ」を行っている。特に、高金利通貨の代名詞といっても過言ではなかった南アランドは、年6.25%から3.5%と大幅な利下げに踏み切っている。また、豪ドル、ニュージーランドドルも、0.25%と米ドル並みの低金利に落ち着いている。

米ドルについては、20年2月まではこれまで続いた量的緩和を縮小する金融政策の一環として利上げを推し進めていた。しかし、コロナ禍による経済悪化の懸念から再度の金融緩和に踏み切らざるを得ず、主要国としては最大幅となる1.5%の緊急利下げを実施した。

ここからいえることは、日本円を他国の通貨建ての資産に移し替えたとしても、以前のような金利差による高収益を期待できなくなってきたということだ。このように、利ザヤが縮小すれば、日本円を他国の通貨に両替する需要も少なくなる。つまり、円安方向への圧力が小さくなるということだ。

政策金利は外貨預金の金利悪化にも影響
当然、政策金利が低くなれば、外貨預金の金利も悪化する。一部の通貨を除けば、外貨預金を行うメリットは現状ほぼないといっても過言ではない。

みずほ銀行によれば、主要な6通貨のうち、ポンド・ユーロ・豪ドル・ニュージーランドドル・スイスフランの外貨普通預金金利は、日本円の普通預金金利と同じ0.001%となっている。

米ドルは辛うじて0.01%と、他の10倍の金利がつくといえば聞こえはいいが、この金利水準であれば、一般的なネット銀行の日本円普通預金金利並であり、高いとはいえない。外貨預金がペイオフの対象外であることや、預入にあたり一定の為替手数料がかかることも考慮すれば、現状の外貨預金は日本円の普通預金以下といってもいい状態になってきている。

仮に、為替相場が円安基調であれば、金利がつかなくても、預入時と解約時の差額がキャピタルゲインとなる。しかし、20年頭に110円近辺であった米ドル円相場は、17日には104円台へと下落し、キャピタルゲインを得ることも難しい。つまり、現状においてはインカムゲインの観点からみても、キャピタルゲインの観点からみても、外貨預金はそれほど合理的な投資先とはいえないことになる。

各国が金融緩和によって利下げを選択する中で、日本の政策金利は横ばいだ。他国の金利が悪化することで相対的に日本の金利水準が良く見えるため、日本円の買い(円高)をもたらしているのだ。

円高・株高は続くのか
それでは、足元を取り巻く円高・株高の流れは今後も継続していくのだろうか。それは、日本における金融政策の動向にかかっている。日本はコロナ禍が発生した状態であっても金融政策の動向を据え置いたままだ。さらに、16日には日銀の政井貴子審議委員が日銀によるETFの保有残高について「相応の規模となっている」点にも言及しており、金融緩和の出口の端緒について伺わせる場面もみられる状況だ。

仮に、日銀がコロナ禍の経済的影響を重くみることで、緩和の規模を拡大することがあれば、市場に供給される日本円の総量が高まり、円安をもたらす可能性がある。しかし、コロナ禍が今後深刻化してもなお、他国のような大規模な金融緩和政策が取りづらい事情があるとすれば、金融政策面での緩和は限界に近いとみられる。その場合、他国が元の金利水準に戻るまでは、たとえ株高となっても、それが円安をもたらす可能性が高いとはいえない。

(古田拓也 オコスモ代表/1級FP技能士)

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