みずほFG「週休4日制」でサラリーマンに強いられる真の変化とは

みずほフィナンシャルグループが導入を決めた週休4日制が波紋を呼んでいる。会社側は空いた時間をスキルアップ学習などに充当することを想定しているが、多くのビジネスパーソンは基本給が大幅に下がるところに目が行ってしまう。この制度を導入する真の狙いはどこにあるのだろうか。

総人件費削減という狙い
みずほフィナンシャルグループが導入するのは、希望する社員が週休3日もしくは4日で働けるという制度。現在、同社は多くの他社と同様に土曜日と日曜日が休みだが、この制度を使った社員は土日に加えて毎週決まった曜日を休みにできる。

会社側は、資格学校や大学院への通学など社員がスキルアップの目的で制度を利用することを想定している。子育てや介護目的で利用することも念頭に置いているだろう。家族の誰かが要介護となり、退職に追い込まれる人は多い(いわゆる介護離職)。育児・介護休業法によって介護休暇が定められているものの、要介護レベルによっては、こうした制度を使っても十分に対応できないケースは多い。ここに週休3日もしくは4日の制度が加われば、社員の負担はかなり軽減されるはずだ。

しかしながら、この制度を利用した場合、賃金は大幅に安くなってしまうという欠点がある。具体的には週休3日の場合基本給は8割に、週休4日の場合には6割に下がるので、休んだ分がそのまま減給されるというイメージだ。出勤した日だけ無理に残業するというわけにはいかないので、年収ベースでも大幅に賃金が下がる可能性が高い。

賃金という観点からこの制度を眺めた場合、自由な働き方とは異なる狙いも浮かび上がってくる。それは総人件費の抑制である。

メガバンク各行は現在、大規模なリストラの最中である。量的緩和策による低金利が続いていることから、融資で利ざやを稼ぐことができなくなっており、一部では逆ざや(調達金利よりも貸出金利が安くなること)も生じている。特にみずほの場合、店舗網の合理化や海外戦略において競合2行よりも出遅れており、コスト削減は必須である。

加えて、銀行業界は業務のIT化が急ピッチで進んでおり、事務職を中心に大量の人材が余剰となりつつある。社員個別の賃金はもちろんのこと、経営側としては総人件費の抑制が重大な命題となっているのだ。

実質的なワークシェアリングに
みずほはグループ全体で1万9000人の人員削減を目指しているが、自然減や希望退職など、強制を伴わないやり方ではかなりの時間がかかる(同社は2026年度を人員削減のメドにしている)。だが、この間に週休4日を選択する社員が増えれば、その分だけ人件費を削減できる。

この手法は将来的にも大きな意味を持つ可能性が高い。

政府は企業に対して70歳までの継続雇用を求めており、大企業は政府の方針に従わざるを得ない。60歳以降は再雇用という形で継続して仕事をする社員が多いと思われるが、企業側は高齢社員の年収は大幅に下げたいと考えている。

会社で必要とされる業務も減るという現実を考えると、この先、さらに人員過剰となるのは確実である。中高年社員の多くが週休4日に移行してくれれば、1つの仕事を複数人で分け合うことになるので、いわゆるワークシェアリングが実現する。

70歳までの継続雇用が定着した場合、総人件費がさらに増大するという問題が発生するが、ワークシェアリングはこれを解決する有力な切り札となるだろう。この形態が一般的になれば、収入を優先する人は副業を行うだろうし、経済的に余裕のある人はセミリタイアに近い生活を送ることもできる。企業側と労働者側、そして政府の3者が相互に妥協できるプランといってよい。

今回、導入する仕組みも、考え方によってはある種のセミリタイア制度とも解釈できる。本来、60歳から65歳が定年だが、これを50代まで引き下げ、年金がもらえる年齢までは週休4日という形で賃金を抑えつつ雇用を維持する。その間は、老後のキャリア形成に向けて勉強してもよいし、副業で収入アップを図ってもよい。

もちろん、この制度は前向きな話だけにとどまるわけではなく、使い方によってはリストラ制度にもなる。みずほではあくまで希望者を対象にするとしているが、この制度が一般的になった場合、制度の利用を社員に強制する会社が出てきても不思議ではない。これは一方的な賃下げであり、退職勧告とも解釈できるだろう。

明確なキャリアプランを
結局のところ、働き方の多様化というのは、労働者側が相応のスキルを確保して、初めてその効果を発揮する。年功序列、新卒一括採用、終身雇用という、いわゆる日本型雇用の崩壊が進んでいる以上、制度を利用するしないにかかわらず、自身のキャリアは自身で形成しなければならない。

会社によって細かい仕組みはバラバラだが、退職金の算定において退職時の基本給をベースにするところは多い。週休を増やすことで基本給が安くなる場合、当然のことながら、退職金の金額にも影響してくる。また一部の期間であっても年収が下がる場合、生涯賃金も減るので、その分だけ年金受給額も少なくなるだろう。

これからの時代は、キャリアの前半と後半をしっかり分け、どの時期にどのような仕事をして、いくらの資産形成を目指すのか、明確な計画を立てることが重要となる。その上で、この制度が必要であれば利用すればよいし、あまり意味がないのであれば、安易には選択しない方がよい。

加谷珪一(かや けいいち/経済評論家)

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