カレー沢薫のほがらか家庭生活 第216回 人狼

漫画家・コラムニストとして活躍するカレー沢薫氏が、家庭生活をはじめとする身のまわりのさまざまなテーマについて語ります。

今回のテーマは「人狼」である。

なぜこのテーマが来たのかと言うと、私が一時期人狼ゲームをやっていたからだとは思うが、そのような話はツイッターで数回しかしていないはずなので、本当に怖い。

このように人狼は日常生活のいたるところに潜んでいる。全員敵なので誰も信じるべきではない。

人狼ゲームとは、潜んでいる人狼を見つけ出して吊す(原文ママ)ゲームなのだが、誰を吊すかは多数決によって決まり、時には罪なき市民が寄ってたかって「あいつが人狼だ」と言われて吊されてしまうこともある。

おそらく日本の限界集落をモデルに作られたゲームだと思うが、だとしたらもう少し陰惨さが足りない、フィクションの限界を感じる。

ゲームとしては楽しいのだが、現在はあまりやっていない。

何故なら人狼は会話ゲームなので、コンピューター相手に対戦するのが難しく、試合として面白いレベルにするには、8人ぐらい人間を集めないといけないのである。

そんなの今まで存在した友達の総人数よりも多い。

ちなみに「こっちは友達と思っているが、相手はどう思っているかわからない者」もカウントしている。

もちろんネットを使って、見ず知らずの人間とプレイすることも可能だが、人狼は基本的に人を疑いあうゲームなので、口も悪くなりがちなのだ。

確かに我々は、ツイッターで威勢が良すぎることを言ったり、会ったこともない有名人に暴言や卑猥なリプを送れてしまったりするところがあるが、それはあくまで独り言、もしくは後ろを向いている相手の後頭部に言葉を投げつけるだけだから出来るのだ。

こっちを向いている相手、あまつさえ反論してくる相手には何も言えずに「家に帰ったらツイッターに書いてやろう」と思うことしかできないのである。

よって私はそれなりに身元がわかっている人間としか人狼をしないのだが、そうなるとなかなかメンツが集まることがないため、結局あまりやらなくなってしまった。

面白かったし、また機会があればやってみたいとも思うのだが、人狼は私にとって全方向から「向いていない」ゲームだと言うこともすでにわかっている。

まず、私は現実では、喋れないコミュ症だが、ご存じの通りネットではとても元気である。

ただこれは「ネットを介してなら円滑に他人とコミュニケーションが取れる」というわけではなく「喋れないコミュ症」から「喋るコミュ症」にマイナーチェンジしたにすぎない。

喋るコミュ症には「口数が多い上にいらんことを喋る」という特徴がある。

人狼では序盤「手がかりがないから、とりあえず小うるさい奴から吊しとこう」という風にもなりがちなので、最初はあまり目立たない方が良かったりするのだ。

だが黙っていられないので、最初に疑いをかけられがちであり、そして口数が多いだけで話術に長けているわけでもない。

疑いをかけられると上手い弁明が出来ず墓穴を掘るか、さっきまでうるさかったのに、疑いをかけられた瞬間「落ちたのか?」というぐらい黙ってしまうことが多いため、そのままなす術なく吊されてしまうことが多いのだ。

そして「人の話を聞かない」。

これは「何故人狼をやろうと思ったのか」というレベルの致命的欠陥である。ロードレース大会にサドルがないチャリで来たに等しい。

人狼というのは、自分の発言も大事だが、人の発言を良く聞き相手の役職を推理したり矛盾を突いたりすることも大事なのである。

にもかかわらず、己が発言することに集中力全振りなため、気づいたら、全員わかっていることを自分だけ理解していないということが良くある。

そして「空気が読めない」。

人狼では言葉に出さずとも暗黙の了解が求められるシーンがある。

しかし私はリアルでも始まる前から「早く終わらせて帰ろう」という意見が一致している会議で、何故か意見をバシバシ言ってしまいがちなところがあるため、皆の意向とは違う人間を吊そうとし、それが敗因になることもしばしばだ。

さらに「協調性がない」。

もはや「これが全て」という気がするが、そもそも「チームプレイ」というものに興味がないのだ。

人狼というのは基本的に個人の戦いではなく、市民陣営と人狼陣営の戦いである。つまり自分が死んでも自分の陣営が勝てば勝利なのだ。

だが、そこにあまり興味がなかったりするのである。

人狼には役職が色々とあり、時には生き残るのではなく自分の陣営の勝利のために犠牲になるという立ち回りも必要なのだ。

だが私はたとえゴールキーパーという役職になっても、「シュートを決める」ことを考えてしまうのである。

チームの勝利よりもいかに自分がキャプ翼みたいな動きをするかで頭がいっぱいなのだ。

人狼ゲームならまだ良いが、会社にこういうタイプがいるとその被害は計り知れない。

私は常々社会に向いていないと思っていたが、人狼ゲームをやってみて「本当に向いていない」ということを改めて確認することができた。

会社員時代多大なご迷惑をおかけした方々には改めて陳謝したい。

そして私と人狼をやる機会があったら、私が自陣営にいる時点で負けを確信してほしい。

カレー沢薫 漫画家・コラムニスト。1982年生まれ。会社員として働きながら二足のわらじで執筆活動を行う。デビュー作「クレムリン」(2009年)以降、「国家の猫ムラヤマ」、「バイトのコーメイくん」、「アンモラル・カスタマイズZ」(いずれも2012年)、「ニコニコはんしょくアクマ」(2013年)、「負ける技術」(2014年、文庫版2015年)、Web連載漫画「ヤリへん」(2015年)など切れ味鋭い作品を次々と生み出す。「やわらかい。課長起田総司」単行本は全3巻発売中。 この著者の記事一覧はこちら

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