ビックカメラ、ワークマン、アルペン…… 異業種の参入で盛り上がるアウトドア市場の今

アウトドア専門ショップのオープンが相次いでいる。

ホームセンター大手のコーナン商事が9月に、キャンプ専門店「キャンプデポ」を初出店。10月には、ビックカメラも東京・立川店内に新業態「ビックアウトドア」をオープンした。

アルペンも2018年から、アウトドアと登山に特化した専門店を展開し始め、合わせて13店となった。

作業服からアウトドアウェアやタウンウェアに進出したワークマンは、18年から展開している「ワークマンプラス」の店舗数が222店(2020年9月末現在)まで伸びた。さらに、18年10月から既存店売上高が36カ月連続で前年同月を上回り続けている。

このようなアウトドア隆盛の背景には、新型コロナウイルスの感染拡大で、レジャーのあり方が大きく変化したことがある。屋内で密になるのを避けて、換気に不安のないアウトドアが選ばれる傾向が高まっている。

今年は東京オリンピックの開催が予定されていた。健康増進を目的にスポーツを日常に取り入れる観点から、アウトドアへの関心が高まっていた。それがコロナ禍で見直された面もある。

アウトドア市場には、異業種とみられるホームセンター、家電量販、スポーツ用品、作業服などの専門店、メーカーがこぞって参入し、急拡大しているのが特徴。主要なプレーヤーたちの活動をレポートする。

ビックカメラのアウトドア専門店
10月8日、ビックカメラは初のアウトドア専門店「ビックアウトドア 立川店」を

東京都立川市の「ビックカメラ立川店」8階にオープンした。同社グループでは、ユニクロとのコラボ店「ビックロ」(東京都新宿区)でアウトドア専門店「スノーピーク」を出店した例がある。しかし、今回のようにワンフロアーの大半を占め、1000平方メートルという大規模な専門店を自ら出店するのは初めてだ。

家電量販業界では、ヨドバシホールディングスが19年4月に石井スポーツを買収してアウトドアに進出していた。石井スポーツは1950年創業で全国に30店ほどあり、登山やスキー用品に定評がある。

ビックアウドドア構築にあたって、200以上の主要ブランドの取り扱いを開始。家電量販店だからこそできる、アウトドアで使えるポータブル電源や肌ケア用途の美容家電も提案している。

売り場の特徴は、キャンプを中心に体験型となっていることだ。具体的には、ファミリーキャンプ、ソロキャンプ、冬キャンプなどのテーマに沿って展示を行う、セレクトショップとなっている。また、庭の軒先やベランダでキャンプを行う“ベランピング”を提案するなど、アウトドアを身近に感じてもらえる工夫が印象的だ。

同社・広報では「近くに、昭和記念公園、秋川渓谷、奥多摩、高尾山のようなアウトドアスポットがあるので、1号店を立川に出店した」としており、並々ならぬ意欲を感じる。

コーナン商事も進出
コーナン商事は9月4日、ホームセンターとして初のアウトドア専門店「キャンプデポ」の1号店「CAMP DEPOT 鳳東町店」(

大阪府堺市)をオープンした。

キャンプ用品を中心として、アウトドア、ハイキング、バーベキュー、ピクニックと、初級から中級者向けの品ぞろえ。同社では“キャンプを楽しむコト”を通じて「非日常」ではなくて「異日常」を体験してほしいと意気込んでいる。

同社の既存店売り上げ(3~9月)を見ると、前年比11.5%増と好調であるが、主力となるのはDIY用品や家庭用品。200坪ものスペースで、今まで同社では全く売っていなかった商品を数多く取りそろえた実験的な店舗となっている。

ちなみに、同社は1月に新大阪に本社を移転していて、キャンプデポは旧本社を改装したものだ。

注目すべきは、eSPORTS(岐阜市)が展開するアウトドア通販サイト「eSPORTS」のプライベートブランド「クイックキャンプ」の商品を幅広く扱っていることだ。ワンタッチテント、アウトドアワゴン、車中泊マット、焚火陣幕など、ほぼ通販でしか買えなかったコストパフォーマンスに優れた「クイックキャンプ」の商品群が、実店舗で50種類以上も販売されるのは初めて。同ブランドの多くのファンが足を運んでいる。

好調なワークマン
作業服メーカーで専門店のワークマンがアウトドアの分野でも注目されたのは、「ららぽーと立川立飛」(東京都立川市)内にタウン用途にできる商品をピックアップした新業態「ワークマンプラス」を18年9月に出店したのがきっかけ。商業施設初出店であった。

ワークマン製品の優れた機能性とコストパフォーマンス、街でも着て歩けるデザイン性が話題となり、「ポストユニクロ」とまで言われるようになった。今年に入ってからの既存店売上高(前年同期比)も、1~3月が21.2%増、4~6月が22.3%増、7~9月が14.7%増であり、コロナ禍においても2桁成長を続けている。

今夏も、雨が降り続いた7月は防水性が高いレインウェアが好調だった。また、猛暑の8月はファン付きの空調服が熱中症対策でよく売れた。これから冬にかけては防寒服がそろっている。同社では、ワークマンのリーズナブルな製品はアウトドア初心者に向いていると考えている。

ワークマンプラスは既存のワークマンからの業態変更が進み、早くも200店を突破した。

10月15日には、横浜市中区の桜木町駅前「コレットマーレ」に、新業態「#ワークマン女子」をオープン。男性向けも4割、男女兼用が2割あるので、レディース専門ではないが外観は女性向けの店に見える。商品を着てSNSに投稿できるスポットを多数用意。同社アンバサダーである、インフルエンサーの提案で開発した商品の紹介コーナーもある。

専門店を増やすアルペン
アルペンでは、18年4月からアウトドア専門店を出店し始め、アウトドアに特化した「アウトドアーズ」7店、登山専門の「マウンテンズ」2店、両方の要素を備えた旗艦店「アウトドアーズ フラッグシップストア」4店の計13店を展開し、集客好調だ。

同社は主力のスキー用品、ゴルフ用品が下降線で、19年6月期には最終赤字9億3500万円に転落した。しかし、アウトドアシフトの効果で、20年6月期には、3月以降の緊急事態の影響を受けたにもかかわらず1700万円の黒字に転換した。

千葉県柏市にある「アルペン アウトドアーズ フラッグシップストア 柏店」は、約2300坪の売り場に450ブランド、商品数10万点と、世界でも類を見ない超大型店だ。休日には車の大渋滞を引き起こすほどの人気店となっている。

店内では、実際にテントを張ってキャンプの状況を再現。バーベキューの展示では家庭内のインテリアとしても使えるように提案するなど、体験型の施設になっているのが特徴で、後続の店づくりに大きな影響を与えている。

9月14日には、東海地区初の旗艦店「アルペン アウトドアーズ フラッグシップストア ららぽーと愛知東郷店」を愛知県東郷町にオープンし、着々と店舗を拡大している。

決算が好調なゴールドウイン
ゴールドウインが展開する「ザ・ノース・フェイス」は、1966年に米サンフランシスコで創業した世界最大級のアウトドアメーカーだ。78年からゴールドウインが輸入を始め、94年に日本と韓国において商標権を取得している。

ザ・ノース・フェイスは、エベレストの頂上のような過酷な条件でも着用できる製品を目指してきた。その一方で、高い機能を保持しつつタウンウェアとしても使えるように、ターゲットの拡大を目指してきた。それが、アウトドア市場の活性化に寄与している。

例えば、2018年から販売しているマタニティーウェア。普通に考えれば、アウトドアとマタニティは結びつきにくい。しかし、アウドドア製品のストレッチ性、動きやすさ、通気性といった機能がマタニティに活用されている。体形の変化が著しい妊娠中から産後まで、心地よく着用できる機能性を追求している。軽量で防水機能を備えるなど、体への負担が少なく、産後の子どもを連れた外出までを想定している。レインコート、ワンピース、オーバーオールなどのアイテムを展開している。

また、長方形のリュック「シャトルデイパック」は、ビジネスパーソンの通勤でよく見かけるほど普及している。スーツに合わせやすく、高級感があって強度が高い素材を使っている。タブレット、PC、書類を入れる収納も豊富で、日帰りや1泊2日の短期出張のニーズにも対応している。

20年3月期、ゴールドウインは売上高978億9900万円(前年同期比15.3%増)、営業利益174億8000万円(同47.4%増)となった。10期連続の増収であり、営業利益は12期連続の増益となった。この好業績をけん引しているのが、直営で80店あるザ・ノース・フェイスだ。今期は、同社の直営店のうち9割以上の店舗が新型コロナの影響で休業していた時期があった。しかし、ザ・ノース・フェイスは9割ほどまでV字回復しており、人気の高さを物語っている。

星野リゾートのグランピング
アウトドアは用具ばかりでなく、施設でも斬新な試みが見られる。

星野リゾートが運営する「星のや富士」(山梨県富士河口湖町)は、15年10月に日本初のグランピングリゾートとして開業。欧米で人気のグランピングとは「優雅な」を意味するグラマラスと、キャンピングを合わせた造語で、キャンプ設営などの手間を省いたアウトドアのレジャーだ。つまり、アウトドアの用具や食材は施設にそろっているので、利用者は気軽に手ぶらでもキャンプを楽しめるのが特徴だ。

「星のや」ブランドとしては4つ目の施設で、コンセプトは「丘陵のグランピング」。約6ヘクタールの広大な森の中に、大自然と触れ合えるリゾート空間をデザイン。焚火を眺めながら過ごしたり、石窯でピザを焼いたりといった体験を提供する。また、森の中でジビエのコース料理を味わったり、自然の中で体を動かす爽快さを感じたりといったように、現代の都市生活では体験しにくい非日常も提供している。

キャビン(客室)は1室1泊6万7000円から(税・サービス料10%別、食事別)。顧客層は30~50代が中心で、2人での来館が多い。

夏の稼働は、「Go To トラベル」の効果もあり、近隣客の利用が増えた結果、前年並みとなった。星野佳路社長の提唱するマイクロツーリズム(近所旅行)の成果が出た。

同社・広報では、「グランピングは3密回避と親和性が高く、アウトドアを楽しむためのお膳(ぜん)立てもしている。コロナ禍において安心して楽しめる。そして、誰もが本能的に心地よいと感じる旅のスタイルとして認知されてきている」と、手応えを感じている。

刀との協業で客数が倍増
16年7月、兵庫県三木市にオープンした「ネスタリゾート神戸」は、年金受給者の保養施設だった「旧グリーンピア三木」の跡地を再生。日本初となる総合的な大自然の冒険をコンセプトとした、アウトドアのテーマパークだ。企画には、18年からUSJを再建したマーケッター、森岡毅氏が率いる「刀」が参加している。刀との協業で1年もしないうちに、客数、売り上げともに倍増し、軌道に乗った。

約230万平方メートルにも及ぶ広大な敷地に60もの施設がそろっておりアウトドアの百貨店ともいえる内容だ。

例えば、天空を飛ぶ鷲のような体験ができる「スカイ・イーグル」、透明の球体カプセルに入って丘陵を転がる「キャニオン・ドロップ」、水のトンネルを潜り浮島を回る「ワイルド・カヌー」がある。また、動物に餌をあげたり、野菜を収穫したりといった体験を提供している。さらに、ボルダリング、プール、グランピング型バーベキューなどのアクティビティーだけでなく、天然温泉、ホテル、宿泊コテージもそろえている。子どもから大人まで、予算と滞在日数に応じて遊べるのが特徴だ。

このように、アウトドアビジネスは、東京五輪に向けて健康増進の機運により盛り上がっていた。しかし、新型コロナの流行によるソーシャルディスタンス、密を避ける感染予防意識の浸透で、より一層勢いが加速しているといえるだろう。

(長浜淳之介)

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