経営の専門家や士業従事者らが紐解く「新時代の働き方」 第62回 フリー素材、企画書などに使っても大丈夫?

テクノロジーが進化し、AIの導入などが現実のものとなった今、「働き方」が様変わりしてきています。終身雇用も崩れ始め、ライフプランに不安を感じている方も多いのではないでしょうか。

本連載では、法務・税務・起業コンサルタントのプロをはじめとする面々が、副業・複業、転職、起業、海外進出などをテーマに、「新時代の働き方」に関する情報をリレー形式で発信していきます。

今回は、IT企業経営者としての経験も持つ弁護士・中野秀俊氏が、「フリー素材」を使用する際の注意点について語ります。

取引先にプレゼンする企画書をパワーポイントで作成しなければならない。その際に、使用したい画像を掲載しているWebサイトに「すべてフリー素材です! ご自由にお使いください」と記載されている場合は、そのまま企画書に使用しても著作権法上の問題は生じないでしょうか。どのような観点を注意すべきなのかを解説します。
Webサイトにあるフリー素材は安心?
インターネット上には「フリー素材」として、自由に利用できる旨が謳われている画像が掲載されていることも多いです。しかし、「フリー素材」を謳っていても、著作権者から許諾を取得するなどの適切な権利処理が行われていないWebサイトも少なくありません。したがって、利用しようとするWebサイトが信頼できるWebサイトか、慎重に確認してから利用するべきです。まずは、そのWebサイトの利用規約をみましょう。

例えば、以下のような規定があった場合には、注意が必要です。

写真の使用に必要な権利、承諾およびライセンスがすべて得られていることを確認するのは、利用者および写真をアップロードされる方の責任になります。弊社は、写真ACに保管されている写真の適法性を保証できません。弊社は写真利用に関するいかなる権利侵害に対しても責任を負いません。

この規定は、会社としては写真を使うことにより権利侵害があったとしても、一切の責任を負いませんよというものです。
フリー素材を使って違反があった場合どうなるの?
「フリー素材」という表記を信用して、掲載されている画像を使用し、実は権利処理が適切にされておらず著作権侵害をしてしまったという場合、故意又は過失が認められなければ、民法上の不法行為(民709条)は成立しないため、損害賠償責任は負いません。

ただし、信用性があるとはいえないWebサイトからダウンロードした画像を使用して著作権侵害をした場合、過失又は未必の故意が認められて損害賠償請求が認められる可能性もあります。

実際に裁判例では、利用者がフリーWebサイトからダウンロードした写真を使用したと主張した事案で、裁判所はホームページ作成業務を行っていたなどの利用者の経歴等を勘案し、未必の故意を認定しています。

また、著作権法上の差止請求や廃棄請求(著作112条)が認められるためには、故意・過失は必要とされないので、著作権侵害が認められれば、故意・過失の有無にかかわらず差止請求や廃棄請求は認められることになります。

フリー素材の使用は慎重に!
「フリー素材」としてWebサイト等に画像等の素材を掲載している者が、当該素材について真に著作権を許諾することのできる者(著作権者又は著作権者から許諾を受けた者)であったとしても、当該素材について、いかなる利用に対しても著作権を行使しないものとしているとは限りません。

Webサイトに掲載された素材については、その利用について、規約や注記等の形で利用が許される範囲が限られていたり、利用について条件が付されたりしている場合があります。

例えば、自由に利用してよいのは非営利の個人利用に限られていたり、利用に際して、当該Webサイトから取得した素材であることを明示しなければならないという条件を付したりすることがある場合があります。

このような限度を超えた利用をしたり、条件を守らずに利用したりすると、著作権侵害となってしまうことになります。

したがって、「フリー素材」等として掲載され、自由利用が可能であるように見える著作物を使用する場合には、利用規約などを注意して読み、許諾されている利用の範囲内で、利用条件を遵守して使用するようにしましょう。

執筆者プロフィール : 中野秀俊
グローウィル国際法律事務所 代表弁護士、グローウィル社会保険労務士事務所 代表社労士、みらいチャレンジ株式会社 代表取締役、SAMURAI INNOVATIONPTE.Ltd(シンガポール法人) CEO。
早稲田大学政治経済学部を卒業。大学時代、システム開発・ウェブサービス事業を起業するも、取引先との契約上のトラブルが原因で事業を閉じることに。そこから一念発起し、弁護士を目指して司法試験を受験。司法試験に合格し、自身のIT企業経営者としての経験を活かし、IT・インターネット企業の法律問題に特化した弁護士として活動。特に、AI・IOT・Fintechなどの最先端法務については、専門的に対応できる日本有数の法律事務所となっている。

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