「67年ぶり」も 路線バスのデザイン変更が相次ぐ背景 地域になじむまで長い年月

バス事業者が、長年にわたり採用してきた路線バスの外観デザインを変更するケースが増えています。地域の「顔」にもなる路線バスのデザイン変更は、イメージ転換だけでなく、会社の「成長戦略」でもあります。
路線バスは営業エリアも基本的に決まっており、地域の広告塔としても使われる存在です。車体のデザインもめったに変更されず、地域の「顔」として長年にわたり踏襲されているケースもありますが、一方で近年、それを「変える」決断も増えています。
たとえば西武バスは、2020年4月から「s-tory(エストリー)」と呼ばれる青を基調とした新塗装のバスを導入していますが、これは実に、67年ぶりのデザイン変更です。従来の「ピーコックブルーの笹の葉デザイン(笹カラー)」から大幅な変更を決めた理由について同社は、「西武グループの一員であることをアピールする」目的が大きいと話します。
というのも、西武グループは67年のあいだに埼玉西武ライオンズを傘下に収め、そのイメージカラーである青をコーポレートカラーに据えるなど、大きく変化してきました。それに、従来のバスの「笹カラー」がそぐわなくなっていたのです。「グループとして一体感を出すための変更」(西武バス)とのこと。
西武バスの新デザイン「s-tory」(2020年8月、乗りものニュース編集部撮影)。
新塗装は西武バスにおける営業エリアの特徴を表現し、縦横に伸びる交通網をイメージしたデザインが施されています。このデザインは2020年の「グッドデザイン賞」も受賞。「西武バスの立場とあるべき姿を見事にグラフィックにまとめられている」と評価されています。

同様に、グループのコーポレートカラー制定とともに路線バスのデザインを大きく変えたケースとしては、2008(平成20)年以降の相鉄バスなどが挙げられます。
大阪にも今後、バスの「新顔」が登場します。大阪市交通局のバス事業を2018年に引き継いだ大阪シティバスが、2020年11月以降、新デザインのバスを導入する予定で、市営バス時代から41年ぶりの変更といいます。
「市営バスのイメージをそのままお持ちのお客様もいらっしゃいますが、(民営化され)会社として新しくなったこと、新しい事業を印象付け、会社のカラーを打ち出します」(大阪シティバス)
今回は、大阪メトログループ全体のデザインを統括する工業デザイナーの奥山清行さんを起用しての、大々的な変更です。このように組織変更にともない新デザインのバスを導入したケースとしては、栃木県で東野交通と経営統合を行った関東自動車が、2019年以降、両社の要素を取り入れたものを打ち出している例があります。
しかし大阪シティバスは2019年にも、デザインの異なる3種類のバスを登場させています。これらは奥山さんを起用した今回の新デザインとは無関係とのことで、「社員のモチベーションアップ」を目的に、バスのデザインを社内公募したものだったそう。
バスのデザインに社員が関わった点は、前出した西武バスも同様です。検討にあたっては、社内の若手や女性社員を中心としたプロジェクトチームを立ち上げ、デザイナーを交えて行いました。その過程を経て、チームとして強くなるという「成長戦略」があるそうです。

現在の大阪シティバス(2020年2月、中島洋平撮影)。
こうして出来上がった新デザイン、社内でも「いいよね」という意見もあり、結果的に社員のモチベーションアップにもつながっていると西武バスは話します。
ただし、いずれの会社も既存の車両を一気に置き換えるわけではなく、車両更新に合わせて新デザインのバスを増やしていく計画です。大阪シティバスの場合、「1台のバスは最低でも18年使いますので、すべての車両が置き換わるまで、同じくらいの期間がかかるでしょう」とのこと。新デザインのバスが地域の「顔」となるのは、長い年月がかかりそうです。

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