「タピオカバブル」がコロナで大崩壊 “聖地”原宿の閉店ラッシュと各社の生き残り策

タピオカ専門店が、新型コロナウイルスの感染拡大の影響により、大崩壊を起こしている。

今年に入って、タピオカ専門店が集中的に出店する聖地、東京・原宿界隈(かいわい)では、少なくとも10店が緊急事態以降も続く来街者激減のため、持ちこたえられずに閉店した。その中には、大手のゴンチャ(貢茶)、ココトカ(CoCo都可)、パールレディといった、新型コロナの流行前は行列が絶えなかった有名チェーンの店舗も含まれている。台湾式かき氷専門店で長蛇の列をつくっていたアイスモンスターも閉店したが、この店でもタピオカを販売していた。

経営するチェーン本部では、もはやタピオカだけでは生き残れないと、「台湾ティーカフェ」としての再構築に躍起だ。

最大手のゴンチャでは、新提案のお酢をベースにしたビネガードリンクや、コーヒーを新発売。メニューの多様化を進めている。

タピオカブームの火付け役である春水堂では、新分野であるティーカクテルを提案。さらに、回転寿司のスシローは、台湾のシェアティーと組んで台湾茶専門店を新展開し、“お茶のスターバックス”を目指している。

果たして、タピオカ屋は台湾ティーカフェとして再生できるのだろうか。

“聖地”原宿の目を覆いたくなる状況
筆者は9月13日(日曜日)の夕刻に原宿を訪れた。新型コロナ流行の第2波が下火になって、東京都も「Go To トラベル」への追加が検討されていると報道されたためか、竹下通りや表参道、明治通りの人通りはかなり戻ってきていた。8月の閑散とした状況とは異なっている。

ただし、裏通りに入ると人影はまばらで寂しく、本格的な来街者の回復にはかなりの時間を要するように思われた。

原宿界隈のタピオカ店における人気の凋落(ちょうらく)は、目を覆うばかりだ。今年の1~2月にはどの店の前も黒山の人だかりだったと記憶する。現在、全く顧客が来ないという店はさすがに少ない。だが、ほぼ並ばずに買える店ばかりになった。

判明しているだけで、原宿エリアでコロナ禍により10店が閉店している。これだけ淘汰されても明らかなオーバーストアの状態で、タピオカバブルの崩壊を目の当たりにした。

閉店したのは、最大手であるゴンチャ原宿表参道店、ココトカ原宿店、パールレディ原宿店、アルフレッド ティールーム原宿店、カムバイティー表参道店、コイティー表参道店、御黒堂原宿店、カフェナンバー原宿店、チャノン表参道店の9店。アイスモンスター表参道店も入れると10店だ。

ざっと、3~4割くらいのタピオカ専門店が無くなり、その分を合わせると原宿のタピオカの顧客は全盛期の1~2割程度にまで減ったと思われる。

ゴンチャとココトカは原宿にもう1店ずつあって、そちらは健在。大行列まではできないが、根強い人気があり、店舗を集約した効果が出ている。

残った店舗で集客が良いところには共通項があって、3つのタイプに分けられる。

1つ目は、食事が充実しており、お茶やタピオカと共に楽しめる店だ。原宿エリアでは春水堂、台湾甜商店、モゲティーなどが該当する。

2つ目は、中でゆっくりできるカフェとして成立している店だ。ジアレイや、残ったほうのゴンチャ原宿表参道2nd店などである。

3つ目は、立地がとても良い店だ。ラフォーレ原宿の中にあるノナラパール、原宿駅竹下口のすぐ横にあるココトカJR原宿駅竹下口店などである。

それ以外は、一部の例外があるものの、表通りに面していても厳しいのが現実だ。

一時期、ポストタピオカと騒がれたチーズティーの店にも同じことが当てはまる。彩茶房は食事が充実しているし、マチマチはラフォーレ原宿のテナントである。

タピオカ大崩壊を乗り切る施策は
さて、このようなタピオカ大崩壊を踏まえて、事業会社はどのような施策を練っているのだろうか。

8月20日、回転寿司最大手のスシローグローバルホールディングス(GH)は、台湾のシェアティーと提携して、新宿マルイ本館(東京都新宿区)の1階に、シェアティー1号店をオープンした。

シェアティーは1992年に台湾で創業して以来、世界に500店以上を展開する台湾茶の人気店。「ちょっとの上質を、毎日の贅沢に。」をコンセプトにしている。メインの「四季ティー」(M:350円、L:400円、税別以下同)をはじめとする5種の台湾茶のアイスとホット、それらのラテに加えて、フルーツティーや紅茶ソフトクリームも用意した。

台湾で自然栽培されている茶葉を100%使い、専用のティーエスプレッソマシンでドリップしたてのお茶を提供している。

タピオカが入った商品は、「タピオカミルクティ」(M:500円、L:550円)の1種類のみである。

ソフトクリームは実際に食べた人からは好評という。

日本でシェアティーを展開するシェティージャパンは、スシローGHの子会社スシロークリエイティブダイニングと、台北にある事業会社の合弁会社。

スシローの店舗では2019年7月にシェアティーとのコラボレーションで、「光るゴールデンタピオカミルクティー」を投入した。ミルクティーの容器をスマートフォンの光で下から照らすと、金色に光る物珍しさもあってヒット。その後も、「黒糖ミルク」「宇治抹茶ラテ」「ほうじ茶オーレ」とシーズン商品をシリーズ化。累計170万杯、2秒に1杯飲まれるほどの人気になっている。

しかし、今回出店した新宿マルイの台湾茶専門店のタピオカは光らず、ストローも無地の紙製なのでインスタ映えもしない。あえてのタピオカのメイン外しが吉と出るか、注目される。

なお、ファッションデザイナーの平安座(へんざ)レナ氏を起用しており、店舗はインスタ映えするデザインに仕上がっている。ユニホームとカップのデザインも平安座氏が行った。

現状、新宿エリア自体が歌舞伎町の“夜の街”に広がった新型コロナの影響で訪れる人が少ない。そのため、新宿マルイの集客も回復途上と見受けられ、それなりのスタートだ。

ゆっくりと座る席が設けられておらず、テークアウト専門に近い。今は店内飲食を避ける人も多いが、くつろげない難点があるのは確か。一方、通路の向かいにアップルストアがあり、ゆっくり座れるスペースも設けられている。シェアティーと連動させられないだろうか。

最大手「ゴンチャ」の戦略
業界最大手のゴンチャ ジャパン(東京都渋谷区)は、2006年に台湾で誕生して世界で約1300店を展開するゴンチャの店を、15年に日本初出店。急成長し、国内に75店をFC(フランチャイズ)中心にチェーン化している。

日本では一般にタピオカ専門店と認識されているが、同社では一貫して自らを台湾ティー専門店またはアジアンカフェと称しており、あくまでお茶を楽しむ文化を広めるスタンスで経営してきた。パールと呼ばれるタピオカは4つあるトッピングのうちの1つである。

同社では、コロナ禍の影響を受けてメニューの多様化に着手。6月17日にはグランデュオ立川店(東京都立川市)でコーヒーメニューを提供し始めた。順次、提供店を広げる予定だ。これは、来店頻度を向上させ、より幅広い顧客にゴンチャを知ってもらうのが目的。台湾茶に特化していては、生き残れないと判断したわけだ。

コーヒーメニューは、ブレンドコーヒーやアイスコーヒー(S:250円、M:300円)の他、カフェオレ、黒糖ミルクカフェオレもある。黒糖ミルクカフェオレのみ、タピオカのトッピングが可能だ。

同社のこれまでのお茶のメニューは400~500円台が中心だったので、コーヒーはそれに比べれば安い。価格戦略の面もあるだろう。

しかも、コーヒーに加えて、7月22日からは全店で果汁を発酵させたお酢を使った「ビネガードリンク」を提供し始めた。韓国の「美酢(ミチョ)」を使用している。天然果汁のマイルドな味が特徴だが、美容大国・韓国のイメージで、若い女性にアピールする狙いもあるようだ。

フレーバーは「ざくろ」と、店舗によって「カラマンシー」または「パイナップル」のどちらかを販売。ミルクかソーダ、どちらかで割って提供する。こんにゃくゼリーが入っており、タピオカ、ナタデココ、アロエのうちの1つを無料でトッピングできる。価格は470円。

コーヒーは男性、ビネガードリンクは女性に、どこまで浸透するか。そして、ゴンチャの企業価値を上げられるか、注目される。

また、新業態として対面販売を行わないデリバリー特化型の「ゴーストレストラン」にも進出した。6月12日にオープンした新橋3丁目店(東京都港区)は、FC加盟店がレストランを経営しており、そのキッチンを使って、ゴンチャメニューのデリバリーを行っている。

一過性のタピオカファンとは顧客層が違う
タピオカブームの火付け役である春水堂を国内で18店、直営にて展開するオアシスティーラウンジ(東京都港区)でも、メニューを強化。「ティーカクテル」という新しいドリンクの分野に挑戦している。

春水堂は1983年創業、台湾で50店以上を展開しているが、87年に「タピオカミルクティー」を発明し、世界にブームを起こした発祥店である。

日本1号店は、前出・オアシス社が13年、東京・代官山に出店した。また、「TPティー」というテークアウト専門のスタンドも、国内に10店展開している。

春水堂では、「麻辣排骨担々麺」や伝統的な豆乳スイーツの「豆花(トーファ)」のような食事メニューも充実しており、台湾フードの認知度を高めるのに貢献してきた。お茶の葉も無添加の高品質な素材を使い、シロップは店内でキビ砂糖を煮詰めて作る。また、店を彩る花もスタッフが生けるといったような、こだわりの店づくりを行っている。

それだけに、台湾フードを愛する人たちに根強く支持されており、一過性のタピオカファンとは顧客層を異にしている。そこが強みだ。

ティーカクテルは、6月19日にオープンした渋谷マークシティ店(東京都渋谷区)限定で提供している。お茶とお酒を合わせた新感覚の大人のアレンジティーで、7種類(そのうち2種類はノンアルコール)ある。さわやかで食事に合うティースパークリングや、タピオカ入りでスイーツ感覚の「タピオカ カルーアミルクティー」など、ユニークなラインアップだ。前菜からスイーツまで、130種以上もの台湾小皿料理と合わせて楽しめる。

また、7月21日にオープンした京都木屋町店限定で、抹茶と豆花がコラボレーションした「宇治抹茶豆花」を発売している。このように店舗ごとに名物メニューを作っていくのも、春水堂の特徴だ。

同社では「タピオカがブームになり、お茶を楽しむ文化がやっと育ってきたと思ったら、コロナ禍が来た」(同社広報)と認識している。台湾茶だけでなく、日本茶も提案する。そして、トッピングもタピオカに限らず、アロエなどを自由に組み合わせて楽しむアレンジティーの世界を広く知ってもらいたい。こういったスタンスが、果たしてどこまで伝わるのか不安もあるという。

タピオカ大崩壊から、コーヒーをメインとしたカフェと並び立つ、アレンジティーやティーカフェの豊かな世界へと再構築は可能なのか。コロナ禍の中で、模索が始まっている。

(長浜淳之介)

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