マジか!? コロナ禍で「薄毛ビジネス」が盛り上がっている理由

少し前、ハゲたおじさんたちをハゲしく動揺させるようなショッキングなニュースがあった。なんと「ハゲは新型コロナウイルスで重症化する確率が高い」というのである。

海外メディアが報じたところによれば、スペインでは新型コロナに苦しむ男性の79%が薄毛などのデータがあり、脱毛に関係する男性ホルモン「アンドロゲン」がコロナウイルスを凶暴化させるのではないか、と海外の研究者が述べているというのだ。

「そういえば、あの人も……」なんて感じで、ストレスで毛が抜けてしまうほどの恐怖に襲われている薄毛の方も少なくないだろう。

「髪の毛が後退しているのではない。私が前進しているのである」などの名言で、自信を失いがちな世のハゲたちをハゲましてきた「ポジティブハゲ」として知られるソフトバンクグループの孫正義氏も、この情報にはさすがにショックだったようで、Twitterで「マジか?!」とつぶやいている。

もちろん、これはたくさんある「コロナ未確認情報」の一つに過ぎない。アデランスが10年かけて調査した「薄毛世界地図」によれば、スペインのハゲ率は世界2位。つまり、「新型コロナで重症化になった男性にハゲが多い」のではなく、そもそも「男性にハゲが多い」だけの可能性もかなり高いのだ。

ハゲ、ハゲ、としつこく繰り返されてかなり不機嫌になっている方も多いかもしれないが、ハゲも悪いことばかりではない。新型コロナによって、ロボットやワーケーションなど新しい分野で続々とビジネスチャンスが生まれているように「ハゲ」も、その一つになる可能性があるのだ。

実際、「ハゲ」にまつわるビジネスはコロナ禍の中でもその影響を受けることなく、力強い成長を見せているのだ。その代表的な存在が、皆さんも最近やたらとテレビCMで目にしているであろう「薬用育毛剤 ニューモ」だ。

感染拡大が「追い風」
薄毛に悩む人に街頭インタビューに「たまご」を渡して「え? これで本当に毛が生えるの?」なんて感じで驚かせる、というインパクト大のCMの中でも説明しているが、この育毛剤はHGP(Hair Growth Peptide)という卵黄由来の独自成分が配合されている。そんな「たまご育毛剤」という独創的な商品の魅力と、積極的な広告宣伝戦略によって、コロナ禍の中でも順調に売り上げを伸ばしている。

製造発売元のファーマフーズのリリースによれば、「ニューモ」は昨年11月に発売されていて、今年4月には累計出荷数50万本を突破。さらにそこからわずか4カ月の8月28日には、なんと100万本に到達した。まさしく新型コロナの感染拡大が「追い風」となって、売れ方がさらに勢いを増している形なのだ。

活況なのは育毛剤だけではない。例えば、美容皮膚科のシロノクリニック恵比寿では、7月に抜け毛の相談に訪れた患者は前の月の2倍に増えたと報じられている(日テレNEWS24 8月24日)。また、調達・購買業務コンサルタントで未来調達研究所取締役の坂口孝則さんによれば、「男性用のカツラが異常に売れている」という(女性自身 6月9日号)。つまり、「薄毛」対策のビジネスにおいては、新型コロナは足を引っ張るどころか、成長を加速させている側面があるのだ。

では、なぜこんな現象が起きているのか。大きな要素では以下の3つがあるとされている。

(1)リモートワークやマスクの普及で、自分の薄毛を気にする人が増えた

(2)外出自粛による運動不足やストレスで、「抜け毛」の悩みが増えた

(3)「外出自粛」を利用して外見を変える人が増えた

「薄毛」が気になる
まず、(1)の「リモートワークやマスクの普及で、自分の薄毛を気にする人が増えた」に関しては、リモートワークが普及した職場で働く人ならば、身に覚えのある方も多いのではないか。テレビ会議をして画面に映った自分を見て、「あれ? オレってこんな額が広かったっけ?」なんてドキッとする。あるいは、上司や同僚の生え際を見て、「前からキテると思ったけどかなり薄くなったなあ」なんて気付く。そんな経験が一度や二度はあるのではないか。実際、NHKの「コロナ時代は“リモート映え”が大事?」(2020年9月9日)でも、このように紹介されている。

『髪の毛を増やす「植毛」。東京や福岡などにクリニックを持つ医療法人では、これまでは年齢に伴って髪が薄くなった人の治療が中心で、40代から60代くらいの患者が多かったのが、今年6月ごろからは20代や30代の若年層の患者が増えて、中には「リモート映え」を意識した患者が目立つということです』

これまでそんなに気にしていなかった人も、「薄毛」を気にし始めたのである。ちなみに、この傾向は、リモートワークができないような人たちの間でも見られるという。マスクが当たり前になったので、どうしても顔の印象は「目」か「髪」しかない。人間は相手と話をするときに、ずっと目を見つめることはなかなかできないので、どうしても視線は髪へいく。そうなると、「なんかすごい生え際見られてんな、もしかしてオレ、ハゲてる?」なんて気を病む人が増えているのだ。

そんな薄毛コンプレックスの話とはちょっと異なるのが(2)の『外出自粛による運動不足やストレスで「抜け毛」の悩みが増えた』である。実は少し前に「コロナ抜け毛」という言葉がトレンドランキングに入ったことがある。

コロナへの恐怖や、長引く自粛生活によるストレス、あるいは外出自粛によって運動不足や、不規則な生活になったことで、抜け毛に悩む人が増えているのだ。また、これはまだ科学的な裏付けのある話ではないが、新型コロナの後遺症で「抜け毛」が増えているといった話もある。

新型コロナに感染して重症化した米人気女優アリッサ・ミラノは8月、髪にブラシすると大量の抜け毛が絡まる動画を公開してこのように訴えた。

「みんなの髪にCovid-19がどんな影響をもたらすのか、私が示します。これを真剣に受け止めてほしい」

実際、世界で多く報告されているコロナ後遺症患者の中では「ヘアロス」という大量の抜け毛に悩まされている人も少なくない。日本でもPCR検査で陽性確認されるのはほんの氷山の一角で、実際には多くの無症状患者が世にあふれていると言われている。つまり、ストレスによって「抜け毛」が増えている人たちも、実はコロナの後遺症である可能性もゼロではないのだ。

世界的な現象
いずれにせよ、深刻かつ切実な悩みから、ウイッグや育毛剤を求める女性も増えている。それはつまり、新型コロナが長期化すればするほど、薄毛対策ビジネスの需要が高まっていくということなのだ。

一方、薄毛対策のニーズにはコンプレックスだけでなく、「今日からオレは!」という前向きなイメージチェンジもある。それが、(3)の『「外出自粛」を利用して外見を変える人が増えた』である。

皆さんはこんな経験はないだろうか。頭頂部がスカスカでかなり寂しい感じのおじさんが、正月休みや夏休みが終わったらなんだか急に髪のボリュームが増していた。あるいは、サッパリとした顔立ちの女性が有休を明けたら、いきなりパッチリとした二重まぶたになった。

働く人たちが周囲に悟られることなく、カツラ装着、植毛手術、美容整形などの「変身」をするのはかなり至難のワザだった。しかし、今回新型コロナによる外出自粛や自宅勤務によって、そのハードルがグンと下がった。そのため、これまで周囲の目を気にして踏み切れなかった人たちがコロナを機に続々と「変身」しているのだ。

これは日本のみならず世界的な現象だ。BBCニュースの「美容整形手術、新型ウイルス流行で増加 日米や韓国」(2020年7月11日)によれば、米国、日本、韓国、オーストラリアなど全ての国で、唇を厚くする、しわを取る、鼻の形を整えるといった手術の件数が増えているという。理由は、マスクで施術部分を隠せるのと、在宅勤務が増えてあまり人と会わなくて済むのが理由だという。

このような理由で美容整形が増えているのなら、段階を踏んで周囲の自毛と馴染ませるプロセスが必要なカツラ装着や、増毛手術などが増えていたってなんら不思議ではないのだ。

以上のような要素から、薄毛対策のビジネスが活況になっていることが分かっていただけたと思うが、このトレンドはしばらく続くのではないか、と筆者は考えている。

菅首相に期待すること
マスクをしない男性が搭乗していた飛行機から下ろされたように、今やマスク装着は日本人の常識となっている。コロナ以前から花粉症シーズンなどはマスクをつけていた人だらけだったことを踏まえれば、感染者がゼロになってもマスクだけは生活習慣として定着していく可能性が高い。ということは、身だしなみにおける「髪」への注目は今後さらに高まっていくということだ。

また、多発する自然災害、コロナ不況、感染再拡大への恐怖など、日本人のストレスも増えているので、抜け毛の悩みも増えていく。つまり、アフターコロナの時代、われわれは「薄毛との共生」も考えていかなければいけないのだ。

くしくも、昨日、自民党総裁になった菅義偉氏は、自民党の三回生の中で薄毛の議員が多く参加する「日本を明るくする会」、通称「ハゲの会」の名誉総裁を務めるなど、自他とも認める薄毛である。

ストレス社会で疲弊する日本のおじさんはハゲが多いといわれていたが、実は意外にも、日本国の首相で薄毛は少ない。安倍さん、麻生さん、鳩山さんなど年齢の割にフサフサな人が多く、小泉さんなどはかなり毛量が多い。横になでつける薄毛特有のヘアスタイルの御仁は、中曽根康弘氏以来かなり久しぶりだ。

薄毛対策ビジネスが盛り上がるこのタイミングで、薄毛の首相が誕生するのも何かの縁を感じてしまう。この勢いに負けないように、菅首相にはぜひとも日本を明るく照らしていただきたい。

(窪田順生)

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