総裁選で自民党がまた新聞社に圧力文書! 菅の圧倒的優勢でも「公平・公正な報道」を求めたのは政権誕生後の圧力を正当化するため

自由民主党公式サイトより

自民党は安倍首相と石破茂氏が一騎打ちとなった前回2018年の総選挙でも同様の文書を新聞・通信各社に出しているが、このときの目的は安倍首相の対抗馬である石破氏の単独のメディア露出を潰すためだった。というのも、このとき安倍首相は石破氏との論戦から逃げるため告示後に外交日程を入れ、公開討論や演説会の回数を減らしていた。そうしたなかで石破氏単独で主張する場を潰そうとメディアに圧力をかけたのだ。
だが、今回は前回とは状況はまるで異なる。たしかに、「政治的空白を生まない」を理由に党員・党友投票を見送ったり、新型コロナを理由に街頭演説会をおこなわないなど、安倍自民党は露骨に菅官房長官を利するための選挙に仕立て上げたが、メディアはそうした「出来レース」を批判もせず、菅官房長官にばかりスポットをあてて報道しているからだ。
その効果はてきめんで、実際に8月29・30日におこなわれた共同通信の世論調査では、次期首相に「誰がふさわしいか」という問いで石破氏が34.3%でトップ、菅官房長官は14.3%でしかなかったが、9月8・9日実施の同社世論調査では菅官房長官が50.2%と圧倒的に支持を伸ばしてトップに立ち、石破氏は30.9%に落ち込んだ。
つまり、メディアは安倍首相の傀儡である菅官房長官のPRに勤しんでおり、何もわざわざ文書を出して水を差すようなことをする必要などどこにもないのである。
今回、自民党がこんな要請文書を出した目的はむしろ、メディアへの恫喝それ自体にあるのではないか。公選法と関係のない総裁選で「すべての候補者を必ず平等に扱え」と迫ることでそれを既成事実とし、政治報道全般に適用しようとしているのでないか。たとえば、森友問題のような政権不正を野党が追及することを報道したら、「一方的だ」「政権や与党の主張も等しく同様に扱え」などと圧力をかける──。

実際、安倍政権でこうしたメディア圧力を担ってきた張本人が、菅官房長官だ。菅官房長官はニュース番組やワイドショーなどの放送をいちいちチェックし、気にくわない報道やコメントがあればすぐさま上層部に圧力をかけてきた。
2015年に『報道ステーション』(テレビ朝日)で古賀茂明氏が「I am not ABE」発言をおこなった際、番組放送中に抗議の電話とメールを送ったのは、当時、菅官房長官の秘書官だった中村格・現警察庁次長だと古賀氏が著書で明かしている。しかも、そのとき菅官房長官は中村秘書官と一緒に官邸で番組を視聴していたといわれている。
当然、菅官房長官が次期総理となれば、安倍政権以上にメディア圧力が強まることは必至。つまり、今回の総裁選でメディアに「公平・公正な報道」を求める文書を出したのも、「法的根拠がなくても圧力をかけつづける」という安倍政権を継承する姿勢を表明すると同時に、「報道を監視している」というメッセージを突きつけることに主眼があるとしか考えられないのだ。
8日におこなわれた総裁選の所見演説会で、石破氏は先の戦争について触れ、「なぜ戦争になったのか」という理由について「国民には正確なデータが知らされていなかった。メディアは戦争を煽った。そして権力とメディアが癒着をした」と言及。その後の東京新聞・望月衣塑子記者による突撃取材でも、石破氏はこう語った。
「権力とメディアが癒着したら国は滅びる。メディアが権力に忖度したときに国は滅びる。でも、そういう誘惑には駆られるよね。権力だってメディアに忖度してほしい。お互いにそう思ったら終わり。それは民主主義に絶対、必要なもの」
権力とメディアが癒着すれば国は滅びる、民主主義は成り立たない──。しかし、それはすでに起こっている問題だ。安倍政権の批判的総括はおろか、河井克行・案里夫妻の選挙買収事件への関わりや、沖縄いじめ、カジノ利権、記者の排除や質問妨害、そしてメディア圧力という菅官房長官が抱える数々の問題は無視し、「パンケーキおじさん」などと持ち上げつづける。この総裁選をめぐる報道こそ、癒着・忖度の象徴と言うほかないのだから。

シェアする

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

フォローする