“わいせつ校長”はパワハラ校長でもあった。練馬区立三原台中学校校長、北村比左嘉容疑者(55)が教え子のわいせつ写真を撮影、保存していたとして警視庁に児童買春・ポルノ禁止法違反(所持)の疑いで逮捕された事件。同校は緊急保護者説明会やアンケートを実施するなど、学校のトップが起こした不祥事の対応に追われている。一方、北村容疑者から過去に深刻なパワハラ被害を受けていた元女性教諭がその詳細を証言。北村容疑者の自己中心的な体質が改めて浮き彫りになった。
北村容疑者は9月11日に逮捕され、集英社オンラインは翌12日に事件を詳報、それを読んだ元同僚女性から連絡があり、電話でインタビューをおこなった。2人が「同僚」だったのは平成14年から7年間、練馬区立の別の中学校で北村容疑者が「主幹教諭」を務めていたときのことだ。「私は20代の新米教師で、北村さんは『主幹教諭』という制度ができてすぐに選ばれたので優秀という評価だったのでしょう。私が担任を受け持ったクラスで、北村さんは副担任で、進路指導もしていました。北村さんは私に対しても『指導』のつもりで毎日、いろいろなことを言ってきました。しかし、『指導』の内容はパワハラそのもので、ストレスにしかなりませんでした」北村容疑者は毎日夕方になると、その日に気づいた指摘事項を書いた何枚ものカードを女性の前に掲げ、『どれからがいい?』と選ばせたという。「カードはだいたい5枚以上はあって、引いたカードの内容に応じて説教されるんです。説教が夜まで続いて全部消化できない日もありました。内容としては『教室の後ろにゴミが落ちていた』などすごく細かいことや、インフルエンザになったときに『体調管理がなってない』と説教されることもありました。北村さんもインフルエンザになっていたのに、自分のことは棚に上げて説教するんです」
北村比左嘉容疑者
北村主幹教諭による事細かで執拗な説教は連日続き、女性は恐怖の日々を過ごした。今でも記憶から消し去りたいと思うほど、それは陰湿だったという。「説教は基本ネチネチしていて、強烈なものだと大勢の生徒の前で自分の力を見せつけるように大声で私を叱ることもありました。20代の教師が私だけだったので余計に標的になってたのかなと思います。同じ学年の先生たちみんなでやるような仕事があっても、自分だけ偉そうに椅子にふんぞり返って見ているだけ。口を開けば文句ばかりだったので、同僚の先生方からの評判も悪かったです。きっと主幹に選ばれて自分は偉いって意識があったんだと思います」
一方、主幹に抜擢されるだけあって、北村容疑者は担当する理科の授業については「わかりやすくて楽しい」と生徒に評判だった。しかし、元同僚の女性は続ける。「生徒たちからは『北村先生はとても怖い目をするときがある。雰囲気が怖くて、蛇みたいなあの目で睨まれると石みたいに固まってしまう』という話をよく聞いてました。鋭い目つきで生徒たちに有無を言わせないような説教をしていたようです。私も当初は悪い印象は持っていなかったのですが、担任と副担任というペアの関係になってから、生徒たちの言うことがもっともだと身にしみてわかるようになりました。とても怖い目つきで、反論させないような説教の仕方なんです」
北村容疑者の自宅(撮影/集英社オンライン)
女性が北村主幹との関係に苦しみ出すと、助け舟を出す周りの教員もいた。「このままではウツになる」と管理職に相談したこともあったが、逆にそのことが北村容疑者に伝わり、すると今度は説教の代わりに露骨な無視が始まったという。「あのころのことはずっとトラウマです。当時はいっぱいいっぱいで何度も夢でうなされることもありました。担任と副担任のペア期間は1年間でしたが、それだけ追い詰められたので、同じようなパワハラ被害に遭ってる人もいるんじゃないかと心配していました」女性はそのショックもあってか、その後退職した。今も北村容疑者によるトラウマが残っているという。「いつかパワハラで問題になるのではないかとは思っていましたが、まさかわいせつ事案で逮捕されるとは驚きでした。でも当時から理科の担当だったので、理科準備室のような自由に使える密室もあったし、進路指導の先生でもあったから個人で呼び出しもできた立場です。もしかしたらと思うとゾッとします」
12日に開かれた教育委員会での会見(撮影/集英社オンライン)
校長の不祥事の尻ぬぐいに追われる三原台中は12日に緊急保護者会を開催、全校生徒550人のうち約300人の保護者が参加、13日には保護者向けにアンケートを配った。3年生の男子を持つ40代の母親は保護者会の様子をこう語る。「保護者会では始まる前からみなさん不安そうな顔つきでした。(逮捕容疑が以前の勤務校だったので)やはり口にしていたのは、三原台中でも盗撮や性被害があったのかどうかですね。保護者会では、練馬区の教育委員会と三原台中の職員が北村校長の逮捕について謝罪したあとに、事件の経緯を説明しましたが、ほぼ報道通りで目新しいことは言ってなかったと思います。13日に配られたアンケートについても、この場で説明がありました。体調と精神面、ストレスなどを調べて問題が見られた児童についてはカウンセラーなどと協力して対処していくという内容で、区役所での会見内容と変わらない中身でしたね。報道から1日経っているし、保護者だけがいる場なのでもっと踏み込んだ発言を期待していたんですけどね」
2年生の女子生徒の母親(40代)は職場を早退して保護者会に駆けつけたという。「かなりショックな事件なので仕事を早上がりして出席しました。にこやかで口調も柔らかな校長だと思っていたので、反動でなおさら気持ちが悪いです。担任や学年の先生たちは、生徒に真剣に向き合ってくださっているのを知っているだけに、これだけ大きく騒がれて対応に追われているのは気の毒です。でも、5年間も務めた校長なので、三原台中でも被害があったかどうかはハッキリさせてほしかった。まだ警察の捜査中なんでしょうけど、早くわかる日がくるといいですね」
北村容疑者が校長として赴任していた練馬区立三原台中学校(撮影/集英社オンライン)
3年生の女子生徒の母親(40代)は、子供たちへのケアが不十分と感じたようだ。「みなさん、ふだんの保護者会とは雰囲気が違って落ち着きがなく、気が立ってるお父さん方も見受けられました。これだけ事件として騒がれて子供たちへの影響があったらどうするんだという指摘だったり、教育委員会の対応が遅かったんじゃないかという意見も出ました。対応の遅れは被害者の方との兼ね合いもあったのかもしれないですけど、子供たちへの影響、ケアに関しては不安が残るのが本音です。アンケートやカウンセラーなどで簡単に解決できる問題とは思えないし、そこに納得してない保護者が多数いた気がします」保護者会は21時ごろまで続いたという。新学期早々に発覚したハレンチ校長の性犯罪の後始末は、当分片付きそうにない。
※「集英社オンライン」では、今回の事件について取材をしており、情報を募集しています。下記のメールアドレスかTwitterまで情報をお寄せ下さい。メールアドレス:shueisha.online.news@gmail.comX(Twitter)@shuon_news取材・文/集英社オンライン編集部ニュース班