東日本大震災から12年を迎えた11日、津波で大きな被害を受けた旭市で、震災の記憶を語り継ぐイベントが開かれた。参加者は震災発生時刻に合わせて黙とうした後、竹灯籠に火をともすなどして犠牲者を追悼した。多くの人に目にしてもらおうと当時使われた仮設住宅が展示されている場所を会場に選び、震災を題材にした紙芝居も上演。次の災害に備え、記憶の継承に努めた。
イベント「東日本大震災12周年祈念 語り継ぐいいおか津波」はNPO団体「光と風」が主催。当時の仮設住宅は現在、防災教室などに活用されており、この日は特別に室内に被災当時の新聞などを展示した。参加者は黙とう、献花の後、竹灯籠に点火。竹灯籠に書かれた「友」や「愛」の文字をじっと見つめていた。
市原市の小学5年、米澤秋穂さん(11)は、旭市が本年度創設した「旭市ふるさと文芸賞」小学生の部で大賞に輝いた詩「ぼくはテトラポット」を紹介。「みんなの住むこの町を守るために 今も毎日波とたたかっているんだよ」と読み上げた。
被災した子どもの実話を基に作成した紙芝居「マーくん がんばれ!」も、笛や太鼓を使って臨場感たっぷりに披露。親子が津波で離ればなれになったり、意識が遠のきながらも住民同士で声をかけ合いながら救助をまったりする場面も。「海は暴れると恐ろしいね。でも海を憎めないの」「飯岡は豊かな海とともに暮らしてきた町なの」とのせりふに、涙ぐむ参加者もいた。
イベントの最後に「名前は生きた証。東日本大震災から学んだ多くの教訓を語り継いでいきたい」と、津波で亡くなった旭市の13人らの名前や年齢などを読み上げた。同法人の渡辺義美理事長(78)は「多くの人の協力を得て、なんとか前向きに活動を続けてきた。記憶の語り部が高齢化している。仮設住宅などを残して震災を次世代に伝えていきたい」と話した。