約40年ぶりのインフレ上昇率… 給料上がらない日本のリアルな「現在地」

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スーパーマーケットに買い物に行くと、サラダ油、小麦粉、ビールなどの値段が上がっているのに驚く。これは、皆の実感だろうが、統計データでもそれが示されている。
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11月の消費者物価指数を見ると、「総合指数」は2020年を100として103.9、前年同月比は3.8%の上昇。「生鮮食料品を除く総合指数」は103.8、前年同月比で3.7%の上昇。「生鮮食料品及びエネルギーを除く総合指数」は102.0、前年同月比は2.8%の上昇。
これは1981年12月以来、40年11ヶ月ぶりの高い水準である。2月にはさらに多くの商品が値上げとなるという。この原因は、コロナ流行、ウクライナ戦争、円安などである。
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最近の物価高に日本人が驚いているのは、これまで25~30年間もデフレが続いてきたからである。30歳以下の日本人はインフレというものを経験したことがない。物価は上がらず、下がることすらよくあった。そういう生活に慣れていると、今のような急激な物価高はこたえる。問題は、賃金が上がず、物価上昇に追いつかないことである。
賃金については、日本では諸先進国に比べて、驚くほど上がっていない。1995年~2020年の25年間に、各国で名目賃金と物価が、それぞれどれくらい伸びたかを見ると、韓国が2.92倍・1.92倍、アメリカが2.23倍・1.7倍、イギリスが2.08倍・1.64倍、ドイツが1.64倍・1.41倍なのに対し、日本は0.96倍・1.04倍である。

日本のみが賃上げ率が物価上昇率よりも低いのである。そもそも、賃金が0.96倍というのは、上がるどころか、下がっているということである。これでは、生活防衛のために消費を抑制するしかない。
このようなデフレと闘うために、日本銀行は金融緩和政策を採用した。20年前、国会議員の私は、国会で日銀総裁に質問し、緩和策の採用を訴えた。血液が潤沢に体中を回ってくれれば元気が出るが、不足すると貧血になって倒れる。経済もそうで、血液に当たるのがおカネである。そこで、金融の量的緩和策を実行しろと私が訴えたのは、貧血状態の身体に輸血するということである。
たとえば日銀が、市場に出回っている巨額の国債を買いとる。たとえば、私の保有する国債を100万円分買ってくれれば、私の手元には100万円の現金が入る。その現金を消費に使ったり、会社であれば新しい工場を作ったりする。そうすると、経済が拡大するのである。
この政策は一定の効果があったが、現金が入ってきても「買いたい物がない」、工場を作っても「仕事がない」というような状況だった。そのため、金融緩和政策は、期待するほどの成果が上がらなかったのである。

本来であれば、日銀の金融緩和策によって企業の経済活動が活性化し、従業員の賃金も上がる。そして、月給が増えたサラリーマンは消費を増やし、その結果物価も上がる。こういう循環が望ましいということで、私は物価目標を2%に設置するというインフレターゲット論を主張したのである。日銀は、これに賛成したが、まだ2%の目標を達していない。要するに、物価は1~2%上がり、賃金がそれ以上に上がるというのが理想なのである。

その理想に到達できないので、日銀は、1月18日の金融決定会合で金融緩和政策を続けることを決めたのである。欧米先進国は、10%に及ぶインフレに対応するために、公定歩合、つまり金利を上げて金融引き締め策を講じている。金利が高い。ところが、真逆の緩和策をとる日本は、会社や個人が安い利息でおカネを借りることができるように、金利を低く抑えている。
この内外の金利差が円安を生んでいる。利息が高いドルを買い、利息がゼロに近い円は売られる。だから円安になるのである。
このように、円安は、内外の中央銀行の金融政策が違うことからもたらされているが、実はもっと根本的な問題は、日本の生産性が低いことである。この25年間、日本の企業の生産性が上がっていないのである。
スイスのビジネススクールIMD(国際経営開発研究所)の「2022年世界競争力ランキング」によると、日本は前年から順位を3つ下げ、34位と過去最低になった。10位までの順位は、(1)デンマーク、(2)スイス、(3)シンガポール、(4)スウェーデン、(5)香港、(6)オランダ、(7)台湾、(8)フィンランド、(9)ノルウェー、(10)アメリカである。中国は17位、韓国は27位である。中国や韓国にも大きく引き離された日本の凋落ぶりを再認識させられる。
国力のある国の通貨は買われて高くなり、国力の劣る国の通貨は売られて安くなる。日本が生産性を上げて国力を回復しないと、円安は続いていくことなる。

Sirabeeでは、風雲急を告げる国際政治や紛争などのリアルや展望について、元厚生労働大臣・前東京都知事で政治学者の舛添要一(ますぞえよういち)さんが解説する連載コラム【国際政治の表と裏】を毎週公開しています。
今週は、「日本の物価高と賃金」をテーマにお届けしました。
(文/舛添要一)

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