社説[コロナ「5類」移行]ステップ踏んで慎重に

岸田文雄首相は20日、新型コロナウイルスの感染症法上の位置付けを、今春にも季節性インフルエンザと同等の「5類」に引き下げると表明した。
国内の感染初確認から4年目。閉塞(へいそく)感が漂う社会の空気を平時に戻す大きな転換点を迎える。
感染症法は感染力や症状の重さに応じ、危険度が高い順に原則1~5類に分類している。新型コロナは現在、別枠の「新型インフルエンザ等感染症」に分類され、「2類」以上の厳しい措置を取っている。
季節性インフルエンザと同じ5類に引き下げられれば、緊急事態宣言の発令や感染者に対する外出自粛要請などを定めた特別措置法の適用対象から外れる。
発熱症状が出た際、発熱外来に限らず一般の病院や診療所でも診察が可能になる。
医療費は原則自己負担になるが、政府は公費負担を当面続け、ワクチン接種についても予防接種法に基づいて継続する方針を示している。
首相が5類移行へかじを切った背景には、致死率や重症化率が下がってきていることがある。
ただ、大幅な緩和措置が感染拡大を招かないか。一般の病院で診療は進むのか。医療費やワクチン接種の公費負担がなくなった時にどのような影響が出るのか。
さらなる感染拡大や医療逼迫(ひっぱく)の懸念もある中、政府にはリスクを含めた正確な情報発信と、ステップを踏んだ移行に向けた慎重な対応が求められる。
■ ■
感染症法上の位置付けを変更しても、感染力が弱くなるわけではない。「第8波」では、感染者の膨らみと連動して死者数が増加している。

厚生労働省の年代別死者数データによれば、男性は80代が最も多く、それに70代、90代以上が続く。女性は80代と90代以上が特に多い。施設での集団感染などが、死者数の急増に直結したとみられる。
実行すべき対策は、高齢者や基礎疾患を抱えた高リスクの人々をいかに守るかに尽きる。
「ウィズコロナ」の経済社会を前提として、高齢者らの感染を防ぎ、発症した場合でもすぐに入院や治療ができるよう医療逼迫を回避する体制などについて、改めて強化する必要がある。
5類への移行で、感染者や死者数の増加に歯止めがかからなくなることはあってはならない。
■ ■
県内では現在、季節性インフルエンザと新型コロナの同時感染を指す「フルロナ」の事例も見られ始めている。同時流行が拡大すれば、病床はますます足りなくなる。
県や専門家が基本的な感染防止対策の徹底やワクチン接種を呼びかけている現段階では、一人一人が身近な感染対策を続けることが重要だ。
医療資源が限られる離島県といった地域の実情を考慮し、必要な人が必要な医療を受けられるよう、移行の先にある課題を見据えたい。十分な対策を迅速に整えられるかが、ウィズコロナへ進む鍵となる。

シェアする

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

フォローする