「百里基地のF-2先生詣で」なぜ連続? 日本初降臨の印戦闘機「フランカー」も独空軍も手合わせのワケ

茨城県の百里基地でインド空軍のスホーイSu-30との共同訓練が実施。この基地は2022年、ドイツ空軍との訓練でも使われました。なぜ百里基地が選ばれるのでしょうか。
航空自衛隊が2023年1月10日から27日まで、茨城県の百里基地で、来日・展開したインド空軍のスホーイSu-30MKI戦闘機との共同訓練「ヴィーア・ガーディアン23」を行っています。百里基地は、2022年9月に来日したドイツ空軍の「ユーロファイター」2000との訓練でも使用されています。なぜ百里基地が選ばれるのでしょうか。この選定には、日独印のメッセージが込められているようです。
「百里基地のF-2先生詣で」なぜ連続? 日本初降臨の印戦闘機…の画像はこちら >> 百里基地のエプロンに並んだ航空自衛隊のF-2戦闘機(右手前)とインド空軍のSu-30戦闘機(画像:航空自衛隊)。
空自の報道資料は共同訓練の目的を、「戦術技量の向上、防衛協力の更なる深化」などとし、百里基地に所属する第7航空団のF-2に加えて、石川県・小松基地に所属する航空戦術教導団のF-15が印空軍に臨むと記されています。百里基地のF-2は、9月の独空軍にも応対しました。ただ、どちらの報道資料も百里基地が選ばれた理由は触れられていません。
選ばれるには、訓練空域も含めた季節の天候が安定しているなどが条件なのは言うまでもありません。また、百里基地は、空自の戦闘機部隊では東京の最も近くあります。都内の大使館との往来は便利でしょう。

しかし、2016年10月に来日した英国空軍の「タイフーン」戦闘機は青森県の三沢基地に展開しました。そこで考えられるのが、印・独は「世界で空自だけが使うF-2戦闘機と訓練する」ことを目的に百里基地を訪れた、という説です。
英軍機の訪日当時、三沢基地ではF-2を使用していました。現在はF-35Aで編成される第301、302飛行隊が百里基地から移り、F-2が百里基地に配備されています。
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航空自衛隊F-2戦闘機(画像:航空自衛隊)。
F-35は“世界標準”の戦闘機であり、F-2の元となったF-16も世界各国で使われ、空自以外とでも訓練はできます。しかし、F-2と訓練ができるのは空自を相手にするときだけです。
しかも、F-2はF-16譲りの対戦闘機戦闘に秀でるうえ、対艦ミサイル4発を搭載できる、“対艦番長”の異名を持つ強力な洋上攻撃力を持っています。遠路はるばる来るからには、未知の機体と相まみえることで、攻撃阻止を中心とした戦闘技術を幅広くしたいと考えるのは自然です。
空自にとっても同じです。Su-30MKIは、インド空軍のほか、中国軍も同系列の機体を使っています。今回の共同訓練は、この機の動きや特性を学ぶ絶好の機会です。それゆえに、今回は飛行教導団が参加したのでしょう。日・英・印・独はいずれにも新たなノウハウを得たのです。

では、百里基地を使うことで何を発信したのでしょう。これは、「同じF-2を使う福岡県の築城基地は今後、訪日機の展開先に選ばれるのか」という問いにもつながります。筆者は、その可能性は高くないと思います。
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築城基地で多数機発進準備訓練(エレファントウォーク)するF-2戦闘機(画像:航空自衛隊)。
英・印・独機の訪日は、中国へのけん制が目的のひとつであることも明らかです。ただ、最も“熱い”南西方面に近い築城基地ではアピールが強すぎて、「挑発」ととられる恐れがあります。
緊張下といえども平時の国際関係では、相手へ送るメッセージは均衡を崩さない“加減”が求められます。どこの国や地域へ対するかを想定して、防衛協力を「深化」させるかなども、決して報道資料に記されません。
筆者は、“熱い”舞台から距離を置いて刺激を避けつつも、しかし錬成を怠らず警戒も緩めない――こうした無言のメッセージを送るためからも、百里基地が選ばれたと考えています。

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