社説[安保大変容:米軍、下地島訓練否定]軍事目的は許されない

沖縄県の多くの島々が怒濤(どとう)のように、軍事化の波に洗われている。18日の朝刊を読んだ読者は、軍事目的には使えないはずの下地島空港まで利用するのか、と不安を募らせたはずだ。
在沖米海兵隊が訓練のため下地島空港(宮古島市)の使用届を県に提出していたことが明らかになったのは17日のことである。
ところが、翌日になって情勢が急展開する。
本紙の取材に対し、海兵隊は、空港使用を県が「拒否」したため訓練は行われない、と回答してきた。
当初、訓練は「31日午後0時半から1時半まで」の1時間で、「人道支援、災害救援の習熟飛行」が目的だと県に説明していた。
外務・防衛担当閣僚による日米安全保障協議委員会(2プラス2)で「民間空港・港湾の柔軟な使用」の重要性が確認されたのは12日。県の下地島空港管理事務所に米軍から使用届が提出されたのは翌13日のことである。
県の嘉数登知事公室長は18日、在沖米海兵隊政務外交部のモレロ次長に電話で、緊急やむを得ない場合を除いて米軍は使用すべきではない、と自粛を申し入れた。
急転直下の撤回劇の裏で何があったのか。
一つだけ明確なことは、県が管理する下地島空港には、軍事目的では使わない、という政府と沖縄県が交わした覚書があることだ。
■ ■
下地島空港は県が管理する空港の中では最も長い3千メートルの滑走路を持つ。
復帰前の1971年に沖縄県と政府の間で交わされた「屋良覚書」は、同空港を軍事目的には「使えない」「使わせない」ことを事実上確認したものだ。

その効力は今も失われていない。
「屋良覚書」は、当時の屋良朝苗行政主席が政府に確認を求め、政府が了承する形で交わされた次のような取り決めのことである。
「空港の使用方法は管理者である琉球政府(復帰後は沖縄県)が決める」
「民間利用以外の目的には使わない。使わせる法的根拠もない」
2006年、軍事演習でフィリピンに向かう米軍機が給油のため空港を利用したことはあるが、県は緊急時以外の使用を自粛するよう求めてきた。
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下地島空港は、南西諸島防衛の要地に位置する。防衛省は早くから、同空港の利用に強い関心を示してきた。これまで空港の軍事利用が回避されてきたのは「屋良覚書」が存在したからだ。
屋良主席は当時、山中貞則総務長官に会い、「県民の不安解消のため確認書を取りたい」と要請。山中氏がそれに応じ、関係省庁との橋渡し役を務めたいきさつがある。
下地島空港を軍事利用することに私たちは強く反対する。「屋良覚書」を有名無実化するようなことがあってはならない。

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