医療・介護の一体的なサービスが本格化!?連携の課題を解決する体制づくりがポイントに

現在、高齢者介護を取り巻く環境を地域全体で担っていく地域包括ケアシステムの構築が急がれていますが、その中で課題とされているのが、医療と介護の連携です。
もともと医療機関は医療保険、介護サービスは介護保険という制度に分かれているため、連携体制の構築にはさまざまなハードルがあります。
こうした現状を受け、厚労省の社会保障審議会医療保険部会では、医療費を適正化するためにも医療と介護の一体的なサービスを提供する必要性が議論されました。
特に75歳以上の後期高齢者になると、医療と介護双方のケアが必要になることが多いとされています。
要介護認定率は、加齢とともに上昇し、特に85歳以上で上昇するとされています。65歳以上全体の認定率は18.3%ですが、75歳以上になると31.5%、85歳以上では57.8%に達しています。
2040年に向けて、85歳以上人口は引き続き増加すると指摘されているので、おのずと要介護認定者も増加が見込まれています。
要介護状態で、医療と介護双方のケアが必要となる代表的なケースに大腿骨の骨折があります。
『令和4年版高齢社会白書』によれば、骨折は要介護になった原因として認知症、脳卒中、加齢による衰弱に次いで4番目に多くなっています。

中でも大腿骨の骨折は、在宅でのケアが難しく入院が必要になることがほとんどです。高齢者の場合は予後も悪く、歩行が困難になることもあります。入院中から退院後にかけて、医療と介護による継続的なケアが必要なのです。
今回の議論は「医療費適正化計画」の枠組みで、計画的に推進することが必要だとされています。
この「医療費適正化計画」とは、国民が医療を適正に受けられるよう国と都道府県が計画を進める取り組みで、2008年から4年ごとに見直しが図られてきました。現在は第4期(2024~2027年)の計画をつくる議論が行われています。
「医療費適正化計画」の柱となるのは主に次の3つです。
これらの目標を達成するため、医療事業において具体的な数値目標を定めて都道府県で取り組んでいます。
例えば、健康維持のために特定健診・保健指導の実施率を各都道府県で70%に設定。また、無駄な薬の処方を避けるために後発医薬品の使用割合を80%に設定しています。
つまり、医療にかかる必要がない健康な人を増やすことと、過不足のない医療の提供を目指す計画ともいえるでしょう。
医療と介護の連携によって効果が期待されているのが骨粗しょう症です。中でも、医療現場での導入が進み効果が実証されているのが骨粗しょう症リエゾンサービスです。

これは、日本骨粗鬆症学会が定めた骨粗鬆症の啓発・予防・診断・治療のための多職種連携システムのことです。
リエゾンとは「連絡係」などの意味があり、コーディネーターの役割をしています。骨粗しょう症の患者は、日頃から転倒などのリスクがあり、一つの病院だけでケアを行うのは困難です。
そこで、地域のクリニックや薬局だけでなく、介護サービス施設や自治体も連携して骨粗しょう症による骨折などを未然に防止するようなシステムを構築しています。
専用のアプリなども登場しており、医療と介護の連携の好事例に挙げられています。
熊本県では、医療と介護の連携力を強化するために独自の取り組みを行っています。
熊本県では2020年より「人生100年くまもとコンソーシアム」と名づけて、医療費を適正化するために予防医療や健康づくりの取り組みを強化しています。
取り組みの柱とされているのが「保険者間の横断的な医療・健診等データ分析」と「有識者等による検討の場の設立」です。
熊本県では一人当たりの医療費が全国9位となっており、骨折による医療費は全国平均の約1.6倍になっています。
医療費の適正化を図るためにも、疾患や怪我のリスクを減らす必要があり、医療や介護との情報交換が必要です。熊本県では意見を交換するための場をつくり、よりいっそう取り組みを進める方針を固めています。

医療と介護が一体的に健康づくりに取り組むため、現状で課題とされているのは、それぞれ計画を立てる主体のちがいが挙げられています。
もともと医療は都道府県、介護は市町村が計画を立てる主体となっています。そのため、都道府県と市町村では、医療・介護ニーズの実態を把握しづらい状況となっています。
また、専門家は医療現場ではオンライン資格確認等システムの活用が進む一方で、介護についてはデジタル化が遅れていると指摘。それぞれの連携を強化していくうえで、スムーズな情報共有にはデジタルツールによる連絡システムが欠かせません。
ただ、介護事業者任せでは資金やノウハウ不足を理由に導入に遅れが生じます。国や都道府県による給付などの支援が必要になるという意見も挙がっています。
こうした環境づくりのうえに、かかりつけ医を中心とした体制づくりも重要です。かかりつけ医は患者一人ひとりの状態を最もよく知る存在で、治療方針などを決定する際に欠かせない存在です。
しかし、現状ではかかりつけ医と介護サービスとの連携は十分とは言えず、何らかの指針を定める必要があるといえます。
介護と医療はそれぞれ適用されている保険制度が異なり、計画の主体も都道府県と市町村で異なっているので、架け橋となる存在が必要です。
そこで、2020年から医療による高齢者保健事業と、介護による介護予防サービスを一体的に実施する主体を広域連合に一任する制度が設けられました。

広域連合とは、都道府県、区市町村の区域を超えてさまざまな取り組みを行う特別な行政を行う公共団体です。例えば、地方部においては病院や介護事業所の不足によって、隣接する他市の機関を利用しなければならないことがあります。
その場合、一つの市町村だけでは計画を立てられず、医療や介護を他市の方針に依存しなければなりません。そこで、各市町村などが連携を図るために広域連合を組織して、地域全体の課題に対応しているのです。
広域連合は、医療保険による特定健診や特定保健指導、介護保険による介護予防サービスの実態を把握し、一体的に管理しています。所属している各自治体に事業を委託することができます。
この取り組みは、2021年度で申請済みの市町村は793で、全1718市町村のうち約5割に上ります。厚労省では、2024年までにすべての市町村で実施することを目標にしています。
こうした広域連合の取り組みは、医療と介護を結ぶ良いモデルケースになるかもしれません。都道府県と市町村、医療保険と介護保険にある溝をどのように埋めていくのか、効果的な取り組みが求められています。

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