クルマもバイクも使ってる? 「パフォーマンスダンパー」とは何か

ヤマハ発動機といえばバイクのイメージが強いが、クルマ向けにもいろいろな製品を供給している。そのうちのひとつが「パフォーマンスダンパー」だ。そもそもどんな役割のパーツで、アリとナシでクルマの走りはどう変わるのか。「パフォーマンスダンパー体験会」というかなりマニアックなイベントがあったので参加してきた。

○パフォーマンスダンパーの効果とは?

クルマやバイクが走行中に発生させる車体の変形や不快なノイズ・振動を効果的に吸収するための装置、それが「パフォーマンスダンパー」だ。

通常、クルマのボディは金属を使用する弾性体(バネ要素の集合体)であるため、走っている最中は常にゆがんだり(1mm以下ではあるが)、振動したりを繰り返している。その影響が大きくなるとサスペンションが設計通りの性能を発揮できないので、走行性能は悪化する。ゆがみや揺れを抑えるにはボディ剛性を上げてやればよいわけで、世の中の走りにこだわる皆さんは「タワーバー」などの補強パーツを然るべき場所に後付けしたりするのが常なのだが、ただしガチガチにやりすぎると乗り心地が悪化してしまうし、固有の振動自体がなくなるわけでもない。

長年にわたって高性能エンジンのOEM開発をおこなってきたヤマハでは、1989年にそれを受け止めるためのシャシー技術開発の研究をスタート。左右のショックアブソーバーを相互連携する「REAS」や、さらに高性能な「X-REAS」を開発した実績がある。

そんなヤマハが開発の方向性を大きく変更したのは2000年ごろだった。高速走行テストを行なっていたテストドライバーの、「ボディの振動をなくして気持ちのいい走りを実現するには、車体剛性ではなく“車体粘性”に注目すべきではないか」との言葉にヒントを得て、シンプルなバー構造からゴムのサンドイッチ構造、さらには専用の油圧ダンパーと組み合わせるという現在の形状に行き着いたのだという。

こうして出来上がったのがパフォーマンスダンパーだ。初採用は2001年のトヨタ自動車「クラウンアスリートVX」だった。2011年にはレクサス「CT200h」が採用。これまでにトヨタとレクサスの9車種(一部グレードのみ)で搭載実績がある。

アフター市場でもヤマハのパフォーマンスダンパーは人気が高く、トヨタのTRD、ホンダの無限、スズキのモンスタースポーツ、三菱のコルトスピード、輸入車用のCOX(コックス)など、さまざまなブランドにOEM供給を行っている。2016年には生産累計100万本、4年後の2020年には200万本を達成。適合モデルはそれぞれのWebサイトで確認することができる。

構造の話をすると、パフォーマンスダンパーはサスペンションなどに用いられる高圧窒素ガス封入オイルダンパーをベースに設計している。違いとしてはオイルダンパーがcm単位の動きをするのに対して、パフォーマンスダンパーはμm(マイクロメートル)単位という極めて微小な変異量となる。取り付けはクルマの前端と後端(つまり前後のバンパー付近)の直交方向に各1本ずつ。これでボディ全体に効果が行きわたり、最大の能力を発揮するのだという。ヤマハによれば、装着のメリットは「コーナリングのスムーズ化」「衝撃吸収と走行ノイズ低減」「揺れの抑制」「ドア閉め音の上質化」「カーオーディオの音質向上」「タイヤ摩耗量の低減」など盛りだくさんだ。

体験会の会場には、その効果を手っ取り早く体感するための「モノ」が用意されていた。四角い金属の枠、その枠内を1本の金属の棒で補強したモノ、パフォーマンスダンパーを取り付けたモノの3つだ。ハンマーで叩いてみると、最初のモノは「チーン」という音ともに手に振動が伝わってきて、2番目は「カンッ」という音で剛性感は上がっているけれども振動が残った。最後のモノになると音は「コンコン」と締まった感じで、振動はなくなった。パーツひとつでどれだけ変わるかが、これでしっかりと理解できた。

○大型SUVでパフォーマンスダンパーを試す!

パフォーマンスダンパーの効果は2台のクルマに実際に乗って体験することができた。最初の1台は、前後バンパー内側にパフォーマンスダンパーを装着したトヨタ「4ランナー」だ。北米トヨタで販売中の大型SUVで、2009年までは日本でも「ハイラックスサーフ」の名で販売されていた人気車種である。

4ランナーの現行モデルは全長4,820mm、全幅1,925mm、全高1,780mm、ホイールベース2,790mmというかなり立派な体躯を持っている。エンジンは4.0LのV6で車両重量は約2トン。フロントダブルウィッシュボーン、リア4リンクのサスに265/70R17サイズのオフロードタイヤを装着していて、シャシーは同じサイズの「ランドクルーザープラド」や「FJクルーザー」と同じラダーフレームを採用している。

このスペックを見る限り、ノーマルのままだとゆったり、ふんわりとした乗り心地が想像できるのだが、走り始めるとパフォーマンスダンパーの効果ははっきりと出ていて、大きな段差や荒れた路面を通過してもボディが不用意に揺れず、安定感はバッチリ。ターンパイクの下りのコーナーに結構なスピードで入って行ってもボディのロールが少なく、安定した姿勢で出口に鼻先をむけてくれるので、大柄なボディを操っている気がしなくなるほど。バンパーの内側で、例のパーツがすばらしい性能を発揮しているようだ。

次はレクサス「GS350」でダンパーの有/無の2台を体験。実は、ベースモデル自体の低速域の乗り心地がいいので、最初はその差があまり感じられなかったのだが、スピードを上げて段差や轍を通過してみると、ショックを一発で収めるという点で装着車が一歩リードする。ステアリングの落ち着きが増し、安心してコーナーに飛び込んでいけるという効果があったようにも感じられた。

ヤマハによると、最近はクルマ自体の剛性が上がっているため、パフォーマンスダンパーもそれに見合う高性能なものが必要になってきたとのこと。今後は重い電池を搭載する電気自動車(EV)が増えていく見通しなので、EVに対応するための研究開発も進めているそうだ。すでにテスラ車に取り付けて試しているというから、そのうちパフォーマンスダンパーを純正装着したEVが登場してくるかもしれない。

原アキラ はらあきら 1983年、某通信社写真部に入社。カメラマン、デスクを経験後、デジタル部門で自動車を担当。週1本、年間50本の試乗記を約5年間執筆。現在フリーで各メディアに記事を発表中。試乗会、発表会に関わらず、自ら写真を撮影することを信条とする。 この著者の記事一覧はこちら

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