社説[マイナと交付金]筋違いの締め付け策だ

税金である交付金配分の公平性をゆがめるものだ。
政府がマイナンバーカード(マイナカード)の普及に向け、2023年度に新たに設ける「デジタル田園都市国家構想交付金」の配分に、自治体の取得状況を反映させることが明らかになった。
全国平均以上の取得率でなければ、受給を申請できない仕組みになる。
23年度の概算要求額は1200億円で、交付金の一部は全国のモデルとなるような事業を実施する自治体に配分する。
活用したくても取得率が低迷している自治体は申請さえできないことになる。自治体間の競争をあおり、事実上のペナルティーにも映る。これが妥当な普及策と言えるのか。
総務省は来年度の地方交付税も取得率に応じ、差をつけると表明している。
そもそも地方交付税は、一定の行政サービスを提供できるよう財源を保障するためのもので、自治体間の財政の不均衡を調整する「地方の固有財源」である。
政策誘導のために運用されるのは筋違いだ。自治体から「圧力だ」などの批判が上がるのは当然だろう。
国と地方は対等である。
政府は本年度末までに「ほぼ全国民」へのカード交付を目指しているが、8月末時点の全国の取得率は47・4%と5割に満たない。沖縄は37・9%で全国を下回っている。
なりふり構わずに政策を押し付けるやり方では到底理解は得られない。
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マイナカードはICチップが内蔵され、国内に住む全ての人に割り当てられた12桁の個人番号や写真、名前、住所などが記載されている。16年に交付が始まった。

コンビニでの住民票発行や健康保険証として利用できるなど徐々に利用先を広げてきた。商店街の買い物に使える自治体ポイントや、キャッシュレス決済の買い物に使えるポイント付与などを実施している。
なぜ普及しないのか。
18年の内閣府の調査ではカードを取得しない理由(複数回答)について、「必要性が感じられない」が57・6%、「身分証になるものは他にある」が42・2%、「個人情報の漏えいが心配」は26・9%、「紛失や盗難が心配」は24・9%だった。
導入から6年たっても取得が進まないのは、こうした意識や懸念が変わっていないことの表れではないか。
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ポイント付与を巡っては、カード取得者対象の「第2弾」で、新規取得者が伸びずに予算約6千億円が余剰となったため、申請期限を延長した。1回限りの申し込みにもかかわらず、複数回できる不具合も出た。国民の信頼には程遠い実態だ。
財務省の審議会は昨年、「ポイント付与によるカード普及効果には限界がある」と指摘している。
地方にだけ負担を押し付けるのではなく、政府が力を入れるべきことは、個人情報の保護やカードの利便性、信頼性を高めるための対策を十分に取ることだろう。

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