選挙の公費負担「必要なし」 酒々井町議会、県内唯一の異例判断 乱立懸念、現職有利?統一選に影響も

選挙カーやビラなど候補者の選挙運動費用を各自治体が負担する「公費負担制度」を巡り、酒々井町議会が同制度導入に向けた条例案を否決したことが、21日までに分かった。地方選挙で同制度の対象は都道府県や市などに限られてきたが、2020年6月に公選法が改正され町村でも導入が可能に。県内町村で次々と導入の条例が成立する中、同町議会の判断は異例。来年4月の統一地方選では五つの町で議員選が予定されており、酒々井町のみが「自費負担」選挙となる可能性が高まった。
改正公選法は候補者不足の解消を求める全国町村議会議長会や全国町村会の要望を受けて、選挙運動費用の一部を公費で負担する「選挙公営」を町村でも採用可能とした。公営の対象は(1)選挙カーの使用(2)ビラ作成(3)ポスター作成-で、自治体が条例で公営対象や負担の上限額などを定めることができるとした。併せて、町村議員選ではビラ頒布を解禁(上限1600枚)したほか、供託金制度(15万円)も新たに規定した。
県内は全17町村のうち15町村が条例を既に制定(栄町は来年に提出予定)。酒々井町も9月定例議会に「(所管する)総務省の施行令に準じた内容」(同町担当者)で提出したものの、9日の採決で賛成3、反対11の大差により否決された。
◆乱立懸念
反対議員は、選挙公営の導入による公費の無駄使いや財政負担の増大を警戒。さらに、議員の一人は同町は一部地域に人口が集中し、過去には自転車のみで巡る候補者がいたことを挙げて「選挙カーを公費で負担すれば候補者全員が使用し、騒音など新たな問題も発生する」。別の議員は来年の町議選まで時間が限られる中、選挙カーの確保など選挙運動の準備で現職が有利な立場にあるとし「新人との不公平感を生じさせないため、改選後に議論すべき」と話した。

中には、前回19年の町議選に“地縁なき”候補者が登場したことにいらだつ議員も。公費負担で政策理念のない候補者の立候補を危惧し「町民のため働ける人を選ぶには自費選挙が適切。候補者不足なら定数を減らすべき」と訴えた。立候補が相次いだ昨年3月の知事選を引き合いにだし、候補者乱立を懸念する声もあがる。
◆現職有利
ただ、総務常任委員会では「可決すべき」と決定していたこともあり、否決に困惑も広がる。賛成議員の一人は「正直言って当然(成立する)だろうと思っていた」と戸惑いを隠さない。「否決までは考えていなかった」と反対した一部からは驚きの声も漏れる。
同町担当者は今後の再提出について「現在考えていない。条例がないまま選挙戦を迎えることもあり得る」との認識を示した。
総務省は「改正公選法では条例を『制定できる』としており、制定するしないは各議会の判断」と冷静に受け止め。議員の一人は「(公費負担がないと)生活に余裕のある人しか立候補できない。結果的に現職が有利になり、新人が生まれにくい環境になっている」と、町議会の硬直化への危機感をあらわにした。

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