キーマンたちに聞く、失敗から成功に導いた話 第21回 山積みの在庫に光を当て直し、再生させた越智勝寛氏―活路を諦めず探すことが成功に繋がる

企業の経営層は、過去にどんな苦労を重ね、失敗を繰り返してきたのだろうか。また、過去の経験は、現在の仕事にどのように活かされているのだろう。そこで本シリーズでは、様々な企業の経営層に直接インタビューを敢行。経営の哲学や考え方についても迫っていく。

第21回は、「靴下屋」や「Tabio」でおなじみのタビオ株式会社 代表取締役社長 越智勝寛氏に話を聞いた。

経歴、現職に至った経緯

まずは経歴について。越智氏は1964年、大阪生まれ。大阪芸術大学を中退後、化粧品会社での勤務を経て、1997年に株式会社ダン、現在のタビオに入社した。入社後、商品部に配属された越智氏は、新業態開発、内部監査といった仕事を経験した後、2003年に商品本部長、2004年に取締役に就任。2007年から第一営業本部長として勤務したのち、2008年5月に代表取締役社長に就任した。

タビオの創業者は越智氏の父親だ。しかし、越智氏が物心ついたころには、もう父親とは一緒に生活をしていなかったため、「会社を経営しているらしいことは知っていましたが、後を継ぐことになろうとは思ってもいませんでした」と語る。

大阪芸術大学の学生時代には、音楽の世界で生きていくつもりだったという越智氏。しかし、現実には音楽で生計を立てていくのは難しい。

「そんな現実を理解したころに、母から『お父さんが若い人材を求めているから、一度話をしてみたら』と勧められたんです。それがきっかけで、父の会社に入ることになりました」

卒業後は、一旦父親の友人が経営している会社へ。そこで3年ほど販売員をしたのちに現在のタビオに入社した。「その時々に与えられた課題をクリアし、最終的に社長を任されることになりました」
会社概要について

タビオは、「靴下屋」「Tabio」「TabioMEN」といった靴下専門店を、全国で約250店舗ほど展開している会社だ。現在、日本の靴下市場はほぼ9割が海外産の商品で占められていると越智氏は説明する。しかし、タビオでは国産品を中心に展開しているという。

「品質を重視するなら、やはり国産品だと考えています。これを可能にしているのは、情報システムを背景に、店頭の販売状況を協力メーカーさんと共有する独自のビジネスモデルです。言わば、店舗の横に工場があるようなイメージですね」

また、現在はOMO(Online Merges with Offline:オンラインとオフラインの融合)体制の構築にも注力していると越智氏は語る。オンラインストアでの販売を強化し、SNS上で話題になった商品をリアルタイムで実店舗でも提供できるよう取り組んでいるところだ。

ロンドン、パリに直営店があり、中国にも現地企業と店舗展開を進めているタビオ。海外展開について、越智氏は次のように説明する。

「各エリアでのEC展開も強化しているほか、アメリカでも越境ECによる市場開拓に取り組んでいます」
前任者が残した大量の在庫に直面した入社2年目

入社2年目、新業態開発という営業部署に異動になった越智氏。ミッションは「当時ヤング層に人気だった商業施設内に、ヤング向けの店舗を作ること」だったという。

ミッションをクリアするに当たり、ヤング向けの商材が手薄だと感じた越智氏。そこで、当時、まだあまり注力されていなかったナイロンタイツの品揃えを充実させようと、その開発を志願したという。

「無事に許可をもらえたので、さっそく協力メーカーさんを訪問しました。しかし、そこで大きな問題に直面することになります。前任者が、メーカーさんにものすごい量の在庫を残していたんです」

ヤング向けの新商材の開発をお願いしようにも、メーカーからすると「まずは在庫をどうにかしてくれ」といった状態だったのだ。これまで積もりに積もった不信感は越智氏に向けられ、「一体、これをどうしてくれるんだ」と凄まれる始末だったという。

熟考の末、越智氏が下した決断は、「在庫の責任を負うのはもちろんのこと、さらにあえて追加注文をすること」だった。「もちろん、従来通りというわけではなく、新しいカラーを加え、パッケージも一新しました。それをヤング向けの新商品として打ち出すことにしたんです」

「100%の勝算があったわけではない」と越智氏は振り返る。「協力メーカーも半信半疑だったでしょう。しかし、幸いなことに、そうして打ち出した商品は好調に売れ、山積みになっていた在庫も含め、商品を一掃できました。そこで、さらに追加で商品を手配し、さらなる売上にも繋げられたのです」

のちに、24色のカラータイツを展開し、大ヒットを収めることになるのだが、これも裏側にこの一件があったからこその成功だったのだ。

商品に向き合い考えることが、ヒット商品への道になる

2年目に乗り越えたこの経験は、越智氏に多くの学びをもたらしてくれたという。その学びについて、越智氏は次のように語る。

「何はともあれ、商品そのものにスポットライトを当てて考えてみることの大切さを学びましたね。一見、もうどうにもこうにも立ち行かないように思えても、決して諦めることなく、違った角度から商品を見直してみること。そして、商品への愛着を持ち、愛情をかけて考えることで、死に在庫になっていたような商品でもヒット商品として再生ができるということです」

このときに抱いた思いは、のちに営業本部長になったあと、さらには社長になって時を経た今に至っても、決して忘れることなく持ち続けているという。「実際に、最近でもこんなことがあったんです」と越智氏はこんなエピソードを披露してくれた。

ナイロンタイツ市場では、ずっと黒が動きの中心であり、ベージュは年配者が履くものだと決めつけられてきたのだそうだ。ところが昨年、タビオはベージュのタイツを「素足に見えるフェイクスキンカラータイツ」として打ち出した。すると、一躍ヒット商品になったというのだ。

「スカートとソックスの間から覗く分には、本当に素足のように見えるんです。何よりも暖かいのがいいですよね」

従来から当たり前のようにあるものでも、角度を変え、切り口を変え、愛情を持って鮮度と魅力を引き出せれば、一挙に人気商品として再生できる。昨年のこの成功を受け、「あらためてそんな想いを強くしました」と越智氏は微笑む。

就活生・若手ビジネスパーソンにメッセージを

最後に、就活生・若手ビジネスパーソンに向けてメッセージをもらった。

「情報技術の飛躍的な進化で、世の中そのものが大きく変化しています。こうした時代に求められるのは、何よりもたくさんのアイディアを持ち寄り、それらを即座に実行していく力でしょう」

逆に、今の時代に最も怖いのは、失敗を恐れて何もしないことだと越智氏は続ける。

「何もしないのは事態をますます悪化させるだけでしょう。たとえ失敗しても、その原因をしっかりと見極め、修正していけばいい。とにかく実行することで、活路を見出してほしいです。そうすれば、偶然の成功を手にするチャンスも舞い込んでくるはずだと思っています」と語ってくれた。

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