社説[土地規制法施行]恣意的な運用許さない

自衛隊や米軍基地周辺、国境離島などを対象とする「土地利用規制法」が20日、全面施行された。米軍基地が集中し、離島での自衛隊基地建設が進む沖縄県内への影響はとりわけ大きいといえる。
同法は防衛・海上保安庁など「重要施設」の周囲約1キロや国境離島を「注視区域」に指定し、土地の利用状況調査を可能とする。司令部機能を持つ基地など、特に重要な施設は「特別注視区域」とし、一定面積以上の売買に事前届け出を義務付ける。
法律の全面施行へ向けた閣議決定で、政府は、運用に関する基本方針も示した。
規制や刑罰の対象となる妨害行為の内容だ。「自衛隊などの航空機の離着陸、レーダーの運用を妨げる工作物の設置」や「施設機能に支障を来すレーザー光などの照射」など事例を七つ挙げた。ところが、これらの事例以外にも「個別具体的な事情に応じ、適切に判断する」としている。
これでは、対象が際限なく拡大されかねない。曖昧な要件の下で、刑罰を科すことには罪刑法定主義に反するという批判は強い。
法案整備の背景には、防衛施設周辺の土地が中国などの外国資本に買い占められることへの警戒感があった。ところが、国会審議などで明らかになったのは、そのような土地取得により重要施設の機能が阻害された事実はないことだった。立法の必要性自体に疑義が生じた。
法律の性格は、外国人の土地買収の規制から「安全保障」を名目に国民監視を可能とする内容に変わってしまった。

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政府は今秋にも審議会を開き、年内に区域指定したい考えだ。
沖縄県内には自衛隊と米軍合わせて、80カ所以上の施設がある。
特別注視区域への指定が想定される中には、自衛隊機が発着する那覇空港や第11管区海上保安本部がある那覇市、米軍基地が集中する本島中北部、陸上自衛隊与那国駐屯地、宮古島駐屯地、石垣海上保安部周辺が含まれる。
規定が曖昧なまま、政府の裁量によって、沖縄の大部分が「注視区域」や「特別注視区域」の指定を受ける可能性がある。
区域指定には当たっては、自治体の意見を聴取するとしているが、自治体の同意が必要とされているわけではない。
県内の市町村議会では法律の廃止を求める意見書の可決が相次いだ。政府は、基地の重圧に苦しむ自治体の意見を最大限に尊重し、土地取引で、個人情報の収集など住民に不都合が生じることがないようにすべきだ。
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基本方針は、規制に該当しない事例も挙げる。施設周辺の私有地での集会開催や重要施設の敷地内を見ることができる住居への居住などだ。
ただ、公道上など私有地でなければ、米軍基地や原発への意思表示など正当な市民の抗議運動なども勧告・命令対象から排除されない。
恣意(しい)的な運用によって、憲法が保障する表現の自由など基本的人権を奪い、萎縮させることは許されない。

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