セダン? ワゴン? SUV? シトロエンの新たな基幹車種「C5 X」の実態とは

フランスのシトロエンから新しいクルマが発売となる。セダン、ステーションワゴン、SUVの強みを組み合わせた新型車「C5 X」だ。本当に各ボディタイプの魅力を1台に詰め込むことができたのだとすれば、これは相当にすばらしいクルマになっているはず。試乗してきた。

○実用性はステーションワゴン並み?

C5 Xはシトロエンの最上級モデルだ。上級セダンの優雅さ、ステーションワゴンの実用性、そしてSUVの力強さを併せ持つという。ガソリンエンジン車とプラグインハイブリッド車(PHEV)があり、今回はガソリン車に試乗した。

対面したC5 Xは車体全長が4.8mを超えていることもあり、見るからに長い。だが、例えば競合のひとつと考えられるアウディ「A6アバント」(ステーションワゴン)は4.9mもあるので、C5 Xが特別に長いというわけではなさそうだ。

リアゲートを開けると荷室はたっぷりとしていて、ステーションワゴンとしての実用性は確かにある。後席の背もたれは4:6の分割可倒式。前方に倒せば荷室容量をさらに拡大できる。

車体床下は未舗装路での走行も視野に入れたSUVのように高いわけではないが、大径タイヤを覆うフェンダーが大きく弧を描く造形がSUV的なたくましさを感じさせる。

室内は上質なセダンの雰囲気だ。華やかに飾り立てた様子ではないが、落ち着きある彩りの内装は質が高い。カーナビゲーション画面や各種スイッチなどが整然と並べられ、ハンドルは小径。運転しやすそうな親しみを感じる。

シフト操作は昨今はやりのスイッチ的な手法ではあるが、前進(D)と後退(R)の切り替えは前後へ移動するスイッチ操作で、駐車(P)はシフト表示を兼ねる部分を押す操作となっており、走行と駐車の区別がある。わかりやすく間違えにくい仕組みだ。初めて運転しても、すぐに慣れるだろう。

独特な佇まいのなかに十分な実用性と違和感のない操作手法を組み入れていて、好印象だ。
○1.6Lの小排気量で走りはどう?

試乗したガソリンターボエンジン車は排気量わずか1.6Lの直列4気筒エンジンを搭載していた。A6アバントはガソリンエンジン車に2.0Lと3.0Lの選択肢があり、いずれもターボエンジンだ。この比較からすれば、C5 Xのエンジンは400ccも排気量が小さいということになる。ただし、アウディは4輪駆動のため車両重量が重い。それに対しC5 Xは2WD(前輪駆動のFF)なので、車両重量は1.5トン前後しかない。

このため、排気量は小さくてもターボチャージャーの過給によって十分な加速を得られる。高速道路も試乗したが、道中で不足は感じなかった。走行中の静粛性にも優れ、実に快適である。

シトロエンが伝統的にこだわる「ハイドロニューマチックサスペンション」の考え方をとり入れた「プログレッシブ・ハイドローリック・クッション」(PHC)により、乗り心地もよかった。走行の安定性を保つ姿勢変化の少ない操縦性でありながら、路面の凹凸などの変化を巧みにいなし、衝撃的な振動を体に伝えてこない。たまに、路面変化と減衰のかみ合いにくい場面はあったが、全体的には優れた快適性を維持しながら、ハンドル操作に対する応答も的確で、安心して運転できた。

C5 Xの乗り味はドイツ車とは異なり、優雅な気分にさせる。タイヤやエンジンの騒音が抑えられた静かな室内は、高級車の趣さえある。アウトバーン(速度無制限区間のある高速道路)があるドイツのクルマは高速走行を重視した剛性の高い乗り味だが、C5 Xはしなやかだった。

後席も快適で、座席はゆったりと体を包み込むように支え、足元は広々としている。前型「C5」のセダンに比べ、後席足元は6cm以上も拡大しているそうだ。後席に人をたびたび乗せるような利用であれば、リムジン的な感覚さえ覚えさせる後席の快適性は有益だろう。

基本的に質のよいC5 Xの乗車感覚にPHEVが加われば、さらに上質な味わいが楽しめるかもしれない。ガソリンターボエンジン車は車庫から通りへ出るような、低速でのわずかなアクセル操作の際にやや速度を加減しにくいところがあった。こうした場面で、モーターならばアクセル操作の通りに速度を調節できるので、より扱いやすく、安心感が増すはずだ。モーター駆動に期待することは環境性能の向上だけではない。

C5 Xはクルマとしての上質さや独創性に満ちたクルマで、PHEVの登場も楽しみになった。

御堀直嗣 みほりなおつぐ 1955年東京都出身。玉川大学工学部機械工学科を卒業後、「FL500」「FJ1600」などのレース参戦を経て、モータージャーナリストに。自動車の技術面から社会との関わりまで、幅広く執筆している。日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。電気自動車の普及を考える市民団体「日本EVクラブ」副代表を務める。著書に「スバル デザイン」「マツダスカイアクティブエンジンの開発」など。 この著者の記事一覧はこちら

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