「プロの演奏会どんどん無くなる」と不安も…コロナ下でソロの音楽家目指す高校生たち “集大成の演奏会”

名古屋にプロの音楽家を目指す高校生たちが学ぶ音楽科があります。生徒たちは新型コロナで集まっての練習が満足にできない中、創立70周年という節目の演奏会を迎えました。長らく音楽科で指導し2022年春に定年退職する先生と、卒業を控える生徒たちにとって、この演奏会は集大成のものとなりました。
愛知の県立で唯一音楽科がある名古屋の明和高校。ピアノや管楽器、さらに声楽など、合わせて115人が学んでいます。
女子生徒:「オーボエ奏者になりたいです」別の女子生徒:「夢は、色んな人の心を動かせるような演奏家になること」 ここに通う生徒たちが目指しているのは、ソロで活躍するプロの音楽家です。
明和高校音楽科の卒業生の中には、世界的なピアニストやオペラスターになっている人もいるといいます。
この日は、2021年の年末に開催される定期演奏会を控え、追い込み練習が行われていました。しかし…。明和高校音楽科の谷津理恵子先生:「大丈夫?っていうのが、正直なところ。フルに音を出して演奏できるようになったのが秋から。本当にこんな大きなステージを企画しているにも関わらず、練習が不便というのが一番の悩み」
今回の定期演奏会は、学校創立70周年という記念すべき節目にあたります。特別に音楽科115人全員でステージに上がり、オーケストラと合唱の共演を行うことを決めていますが、コロナでなかなか集まっての練習ができずにいました。

音楽科の谷津理恵子先生は、学生たちは普段は個別で練習していることもあり、合わせての演奏がうまくいくのかを心配しています。実はこの演奏会は、谷津先生にとっても節目の演奏会でもありました。谷津先生:「まだ誰も最後っていうのは知らないので。思えば長くやってきたなと…」 2022年春に定年退職する谷津先生にとって、これが教員生活の一つの集大成です。
本番まで3週間のこの日は、初めての全体練習。卒業を控えたヴィオラの深澤旦珠(あさひ)くんも、この演奏会が3年間の集大成となります。「自分の中でイメージができた」と話す深澤くんにとって、この全体練習は濃い時間になったようです。
オーケストラに憧れて5歳からバイオリンを始めた深澤くんは、音楽学部がある県内の大学を受験する予定で、大学卒業後はオーケストラに入りプロとして活動したいと考えていますが…。深澤くん:「厳しい世界で、本当にやっていけるか。本当につらいのは(プロの世界に)入ってからだから不安」
競争が激しいプロの世界でやっていけるのか…。さらに、コロナ禍で音楽の道を目指すことにも、漠然とした不安を感じていました。深澤くん:「有名なプロの演奏会がどんどん無くなっている…。演奏会がないってことは、収入が無く食べてもいけないし暮らしてもいけない…」
両親も実力主義の世界でやっていくのは、簡単ではないと考えています。父の孝之さん:「(自分は)ラジオの仕事をしているので、ミュージシャンの方と接する機会が多い。そばで見ているからこそ、音楽で食べていく大変さは見ているから。本当に大変だぞって言っている」母の恵子さん:「後悔するのも彼ですし、(音楽の道に)行きたかったら行きなさいって。行ける努力は本人がするべきだし、私たちが言うことではないので」

本番が行われる愛知芸術文化センターで実施された2度目の全体練習。深澤くん:「1回目よりは絶対に良くなってきているので、本番思うと楽しみ」
生徒たちは手応えを感じているようですが、谷津先生は不安を感じていました。谷津先生:「思っているよりも、1人1人の声が(客席に)聴こえていきます。それぞれが本当に責任を持って、しっかり音を鳴らさなければ本当に恥ずかしい」
本番まであと2日。先生はギリギリまで生徒たちを叱咤します。谷津先生:「なんとか作っていくのがうちの生徒たちの強いところ。頑張ってくれるんじゃないかな。あとは信じて、いい演奏会になるようにって」
定期演奏会当日。ホールに響くオーケストラと合唱の共演。プロの音楽家という厳しい世界に踏み出す深澤くんも、短い練習時間であったにも関わらず、しっかりと演奏しました。
谷津先生:「心配なところはそのまま残っていましたけど、(定年を控え)より一層、胸に迫るものもありましたし、今までを振り返ることができました。苦しくても努力できたことを生徒に自信にしてほしいし、力にしてほしい」深津くん:「(音楽家の)スタートラインに立てるか不安はあるけど、やるしかない。みんなが必死になって頑張るので、自分も負けないように、死に物狂いで(音楽と)向き合います」
この春に谷津先生に送り出される生徒たちは、新たな目標に向かい一歩を踏み出していきます。

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