競合は無印とニトリか 「イオン・キャンドゥ」タッグで再編進む100円ショップ業界の今

100円ショップ業界の売り上げ第3位であるキャンドゥが、イオングループと資本提携することになった。キャンドゥの業績は増収基調で利益も相応に確保していたのだが、業界大手企業の売上推移をみれば、その伸び悩みは明らかだ。

次の図表は上位4社であるダイソー(大創産業)、セリア、キャンドゥ、ワッツの売上推移を示したものだ。1位ダイソーと2位セリアが順調に売り上げを伸ばしているのに対して、3位キャンドゥ、4位ワッツが年々差をつけられてきたということが分かる。

共同出店トレンドでジリ貧だったキャンドゥ
コロナ禍による巣ごもり需要によって、100円ショップ業界に追い風が吹いていた2020年度の売上増加率は、ダイソー「4.9%」、セリア「10.6%」に対して、キャンドゥは「2.5%」、ワッツが「2.7%」と、差が開くばかりという結果となっている。この直接的な原因は、新店の出店場所確保の力の差にある。

100円ショップは、かつてロードサイドに単独店舗を出店するという時代もあったが、今では、ショッピングモールのテナント、またはスーパーなどとの共同出店といった形が中心で、他業態とのコラボによる集客が最適であるとされている。試しにキャンドゥが10月に出店した立地を見てみると、全ての新店が、ドラッグストア、スーパー、ホームセンター、ショッピングモールなどの商業施設のテナントとしての出店だった。

こうなると、大家である他業態企業から商品力や集客力、ブランド力などを評価されるか、もしくは、高い賃料を払わなければ、出店場所を確保することはできない。寡占化が進んだ100円ショップ業界ではダイソー、セリアのブランド力、商品力が下位を圧倒する状況であるため、キャンドゥなどの下位企業は高めの賃料負担を強いられることになり、出店を加速して追い付こうとすれば収益が悪化する悪循環に陥っていたといえる。このまま座していればキャンドゥには勝ち目はなかったのであり、今回のイオンとの提携は窮余の一策といってもいいのだろう。

ご存じの通り、国内流通最大手グループであるイオングループには、全国にGMS(総合スーパー)、食品スーパー、ドラッグストア、ディスカウントストアを合計して1万店舗超の巨大な店舗網がある。また、M&Aによってグループを拡張してきたイオンの歴史を考えれば、これからもそのグループ企業は増えていくだろう。

この店舗網に共同店舗として出店できれば、机上の空論ではあるが、3600店以上を誇る最大手ダイソーを上回る店舗網を構築できる可能性はある、ということだ。当然ながら、今イオングループのテナントにはライバル企業が既に出店していることも多く、すぐに入れ替えなどということはあり得ない。しかし、キャンドゥは51%をメドにイオン側の出資を受け入れる予定であり、グループとしての収益拡大を考えれば、キャンドゥを成長させることが合理的なのは言うまでもないことだ。

キャンドゥとしては今回の資本提携を機に、グループのさまざまな経営資源も活用しつつ、イオングループに収益をもたらす存在であることを証明すれば、今は逆転不可能とも見えるダイソー、セリアと互角以上に戦える存在になることも可能になった。

業界の歴史を振り返れば、ふた昔前の100円ショップ業界は、王者ダイソーとその他大勢といったプレイヤー構成になっていて、00年度の時点でダイソーは売り上げ2020億円、既に小売業界でも43位の大手企業となっていたのに対して、2位キャンドゥ218億円、3位セリア(当時は山洋エージェンシー)207億円であり、2位以下は10分の1以下程度の存在でしかなかった。

その後、業界内の淘汰が進むなかで、ダイソーの圧倒的優位は揺るがないながらも、セリア、キャンドゥ、ワッツが生き残り、現在では4社寡占体制のなかで最終決戦が進行中といった状況となっている。特にセリアは対ダイソー比で売り上げが10%から38%へとその存在感を拡大し、ダイソーを追走している。4強時代から2強時代への移行期とも見えるこの10年を経て、かつての2位キャンドゥとしては、このまま見過ごすわけにはいかなかったのであろう。

「宝探し」を強みに成長したダイソー
1990年代に急成長して100円ショップ業界を作ったダイソーは、もともと移動販売車でスーパーの店前などに乗り付け、便利グッズを催事販売する業者だった。売れすぎて値札張りが間に合わなかったため、全部一律100円で売ってしまったことにルーツがある、というエピソードを知っている人も多いかもしれない。これが大ウケし、いくつものスーパーからテナント出店依頼があって、固定店舗のダイソーがスタートしたのだという。

ダイソーは多種多様な商品を価格100円均一で取りそろえ、うず高く積み上げるいわゆる「圧縮陳列」によって、「宝探し空間」を作り出していた。イメージ的には、ドン・キホーテ売り場空間に近いディスカウント訴求の陳列手法といえる。また、売り切れ御免の熾烈な商品入れ替えが、結果として売場の鮮度につながり、ダイソーは100円ショップという業態を世に広く浸透させた。

こうした店の雰囲気を守るため、ダイソーでは長い間、POSによる販売管理をあえて行わない、という方針であった。全部100円という値付けであるため、個数を数えてレジ処理すればいいこともあり、POS投資にかけるコストを省いて、出店や商品開発に投入して、成長スピードを上げたということなのだが、理由はそれだけではない。POSデータを基に、過去の売れ筋だけに絞り、死筋を排除していくやり方は、「宝探し」の楽しさや売場の鮮度を損なうと考え、あえてPOSによるデータ依存を避けたともいわれている。こうした独特のやり方で、ダイソーはまたたく間に有力小売業にのし上がったのである。

00年代前半から、そのダイソーの手法に真っ向から挑戦したのがセリアだった。

04年、業界初のPOSシステムによる単品管理とデータ分析を開始。その結果を踏まえ、品ぞろえを大幅に絞り込んだ上で、圧縮陳列をやめて、センス重視の家庭用生活雑貨を色鮮やかに陳列する「COLOR THE DAY」という女性向けの店舗を投入し、女性消費者に支持されるようになった。

00年代以降、地方および郊外における女性免許保有率の上昇と、軽自動車の普及によって、ロードサイドには女性向け小売業態(ドラッグストア、ユニクロ、しまむら、ニトリなど)が成長する環境が整う中、セリアも新たな女性ターゲットのスタイルを生み出すことに成功して時流に乗ったのだ。おしゃれ雑貨の廉価版といったセリアの店は、女性客の支持を得て急速に店舗数を増やし、ダイソーを追走し始めることになった。

こうしたセリアの成長は、100円ショップ業界のトレンドを一気に転換させ、データベースマーケティングと女性目線の店舗作りが主流となっていく。00年代から10年辺りまで伸び悩んでいた首位ダイソーも方針を転換し、POSを導入したデータベースマーケティングに舵を切り、今のピンク色の看板と女性客に快適な店作りに移行したのだ。そこから再び成長基調に復したダイソーとセリアは競り合いを続け、現在の2強時代へと至っている。

かくして、女性消費者向けのお手軽雑貨店となった100円ショップは、主婦層の生活必需品ワンストップショッピングニーズの一角を担うようになり、食品スーパー、ドラッグストアとの共同出店が急速に増えてきたわけだ。この戦いに出遅れたキャンドゥが、資本を渡してでもイオングループとの連携を選んだのにも合点がいく。

百円ショップ、今後の競合は無印?
上位4社の売り上げを合計すると、8500億円を超える規模にまで成長した100円ショップ業界は、ありとあらゆるジャンルの商品を100円で提供するようになり、日常生活で必要なものはほとんどそろう、というような業態になっている。100円という価格設定で可能な商品開発が限界を迎えるなかで、近年の流れは300円、500円といった価格帯を広げ、商品を増やす方向に向かいつつあり、ダイソーでも100円以外の商品も数多く並べるようになっている。より幅広い価格帯においてコストパフォーマンスのある雑貨類の提供に向かっていく方向性なのであるが、そうなるとベンチマークとなるのは、無印良品(良品計画)といえる。

既に「無印良品」ブランドを確立し、全国のショッピングモールに展開しながら海外でも順調に成長している良品計画は、今やスタンダードな雑貨チェーンとしてトップ企業であることは、ご存じの通りだろう。21年8月期の営業収益4536億円(前期比13%増)、経常利益453億円(経常利益率10%)の優良企業であり、国内の大型ショッピングモールに欠かせないテナントとなっている。

製造小売業として無印良品という世界観の下、さまざまな商品を生み出している良品計画は、品質の良いシンプルな商品をリーズナブルに提供することで、消費者の高い支持を得ており、その存在感はゆるぎない。ただ、その価格設定がもう少し安ければいいのに、と考える消費者層もあるのではないか、というのが100円ショップ側の発想だ。1000円台の無印商品の廉価版が存在すれば、それで構わないという消費者もいるはずであり、300円、500円といった価格帯でそうしたニーズを取り込んでいこうというのが、100円ショップの複数価格帯商品の方向性であろう。

最近、渋谷や新宿に現れたダイソーの新業態「Standard Products」はまさにこうしたシンプル雑貨の廉価版ショップであり、ちまたでも、無印との比較で話題となっている。実際、売り切れ続出で棚が空いてしまうほど好調で、大反響を呼んでいるようだ。

無印良品の店舗網を考えると、大都市圏への出店が大半で、地方では有力商業施設に散在しているのみなことから、無印側は一定の人口規模のある商圏でないと成立しがたい業態であることを自ら認識しているとみられる。ということは、100円ショップなどによる廉価版雑貨店が、そうした無印不在の地方や郊外に今後展開することで、成長余地を見いだすことは十分に可能だろう。

アパレルグループ「パル」が展開する300円ショップ「3COINS」は100円ショップとは出自が異なる均一価格ショップだが、ここも順調な成長基調にあるようだ。20年度売り上げは260億円ながら、21年度上半期は前年比83%増となる増収ぶりだという。また、ニトリがインテリア雑貨ショップとして展開する「ニトリ デコホーム」も、廉価版雑貨店として支持を集めており、急速に店舗数を増やしている。

ECの脅威にも耐え得る強み
100円ショップのみならず、さまざまなジャンルからシンプル雑貨の廉価版マーケットへの参入は相次いでおり、かつ一定の成果を出しつつある。直近においては、コロナ禍による巣ごもり需要が追い風となっていることもあろうが、背景を考えれば、アフターコロナにおいても、こうした業態の成長はまだまだ続くと見ていいだろう。

一般的に小売業界はECの脅威にさらされており、ほとんどの業態でオンラインシフト対策に頭を痛めているのは周知の事実だ。100円ショップの商品は基本的には単価が安過ぎるため、送料の関係上、ECにシェアを奪われるという環境にはない。また、基本的に各社のオリジナル商品であるため、他のネットショップに代替されるという懸念がない。

本文では触れなかったが、コンビニとのコラボも広がり始めており、こうした販路も市場拡大につながる可能性がある。今や、100円ショップ業界は、ECの脅威にさらされることなく、廉価版シンプル雑貨市場やコンビニコラボというフロンティアを見いだし、再び成長ステージに入ったといってもいいだろう。こうした環境を考えれば、キャンドゥの資本提携のタイミングは、100円ショップの2強時代を阻んだ起死回生のアライアンス、として流通史に刻まれる可能性があるかもしれない。

(中井彰人)

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