スバルは、どこで儲けている? 国内もASEANも中国も欧州でも売れてない

SUBARU(スバル)は、非常にユニークな自動車メーカーです。前身が中島飛行機であったこともあってか、とても技術を大切にしており、そうした特徴が製品にも色濃く出ています。

具体的にいえば、少数派の水平対向エンジンという形式のエンジンしか生産していないこと、また、「ぶつからないクルマ」として知られる先進運転支援システム「アイサイト」を独自技術として持っていること、そしてほとんどのモデルが得意とする4WD技術を採用していることなど。どれも他の自動車メーカーにないものばかり。小さなメーカーですが、他にないキラリと光る優れた技術を持っているというのがSUBARUだといえます。

ただし、独自技術を優先することは、すべてが良いことばかりではありません。例えば、4WDにこだわるため、正直、燃費性能面は苦手とします。また、水平対向エンジンを使っているため、エンジンを横置きする小さなモデルがありません。トヨタでいえば、ヤリスやアクアといったクラスのコンパクトカーを持っていないのです。さらに、軽自動車の生産からも2008年に撤退しています。つまり、数多く売れる軽自動車やコンパクトカーがありません。ですから、数多くクルマを売ることが難しいというのがSUBARUの最大の弱点となります。

実際に、どれだけSUBARU車が売れているかといえば、20年度(20年4月~21年3月)の日本での販売は約10万6000台。

コロナ禍の前となる19年度(19年4月~20年3月)は約13万台です。国内トップのトヨタが年間約150万台ですから、ざっくりと、その10分の1以下という規模。トヨタとSUBARUの間には、それほど大きな差が存在しているのです。

また、SUBARUは、燃費が良くて、価格の手ごろな小さなクルマもありません。そのため、ASEAN地域での販売もさっぱり。さらに世界最大となった中国にも進出していないため、かの地の販売は、日本からの輸出のみ。近年は、年間2万台ほどしか売れていません。

また、燃費規制の厳しい欧州も、実のところSUBARUの苦手な地域です。かつては欧州で人気のWRC(世界ラリー選手権)で活躍していたSUBARUですが、最近では、年間数万台規模しか売れていません。昨年(20年4月~21年3月)は、なんと年間の販売台数が約1.4万台まで落ち込んでしまいました。つまり、ASEANも中国も欧州でも、ぜんぜん売れていないのです。

どこでSUBARUはもうけているのか?
では、どこでSUBARUは儲(もう)けているのでしょうか?

それは米国です。SUBARUは年間100万台前後のクルマを販売するメーカーですが、そのうち7割強を米国市場が占めているのです。19年度の実績では、年間約103.4万台のうち米国が約70.2万台、カナダが約6万台、そして日本が約12.6万台。それ以外の地域は、それ以下の1~4万台程度。20年度は世界全体で約86万台のところ、米国が約61.2万台、カナダが約5万台、日本が約10.2万台でした。

ちなみに、トヨタの20年度の世界販売台数は約895.8万台であり、そのうちの北米(米国・カナダ)は約271.3万台です。つまり、北米の割合は3割ほど。ホンダはどうかといえば、20年度の世界販売は約454.6万台で、そのうち米国が139.5万台で、やはり3割ほど。マツダは世界全体で約128.7万台であり、そのうちの北米が約40.3万台ですから、やっぱり3割ほどです。多くの日本の自動車メーカーが米国市場で数多くのクルマを販売していますが、どれも全体の3割ほど。ところがSUBARUだけが、北米の販売比率が抜きんでて大きいのです。

もちろん、最初からSUBARUの米国市場の比率が高かったわけではありません。00年ごろのSUBARUは、年間販売台数が80万台規模で、そのうち国内が約35万台で、北米が約30万台。海外市場で北米が最大でしたが、それでも4割程度です。

ところが、この頃は軽自動車もやっていたため、日本国内の販売台数が今よりも格段と大きかったのです。しかし、軽自動車の割合が高いため、もうけは少なく、当時の営業利益は年間500~600億円といったところ。一方、軽自動車をやめた最近では、1000~2000億円の営業利益を稼ぎ出せるようになりました。00年代の頭と比べると、年間の販売台数は1.2~1.5倍ほどしか増えていませんが、利益は2~4倍も稼げるようになっているのです。

大型車が売れる北米

稼げるようになったのは、北米市場では日本よりも大型で、儲けの大きいクルマが売れているからです。例えば、スバルの最大のセダン・ステーションワゴンであるレガシィは、本国内では年間1万台も売れませんが、米国では年間に20万台規模で売れているのです。

また、北米市場が儲かるということで、SUBARUの商品ラインアップも変化してきました。その象徴がレガシィです。初期のレガシィは、日本の国内環境にマッチする5ナンバーサイズでしたが、米国で売れるようになるほどにボディが拡大してゆきます。もちろん、サイズが大きくなるほどに日本での売り上げは減少するのですが、その穴を埋めるために、日本市場にマッチするレヴォーグが誕生したのです。

また、パワフルなターボエンジンを搭載するスポーティなWRXシリーズが、今も新型になって登場するのも米国のニーズあってのもの。燃費規制が厳しくなった欧州や日本では、WRXシリーズは時代の流れに反する存在です。しかし、北米では若い層にSUBARUのWRXは、今も熱烈に支持されているとか。

SUBARUの販売が北米に偏ってしまったのは、経営戦略的な理由もありますが、もともとのSUBARUの個性も大きかったのではないでしょうか。SUBARUの得意なものは、優れた4WD技術であり、高い安全性です。逆に苦手なのが、安価な小型車であり、燃費の良い環境対策車です。

そうしたSUBARUの良いところ、悪いところをすべて受け入れてくれたのが北米という市場だったのです。求められるから、それに応えて変化し、そうなることで、さらに絆(きづな)が強まる。北米市場とSUBARUの関係は、言ってみれば相思相愛の二人のようなもの。いつまでも熱い恋愛が続くことを祈ります。

(鈴木ケンイチ)

シェアする

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

フォローする