新たなイメージ創出を 中房総と奥房総 【千葉地理学会連載 おもしろ半島ちばの地理再発見】

南房総という言葉はよく使われますが、その範囲は県内のどのエリアなのかはいまひとつ明確にはなっていません。一般的には安房地域を指すことが多いように感じますが、夷隅地域や君津地域まで含むこともあります。
首都圏の観光地として「南房総」をアピールするときは春の花に彩られた温暖の地、夏のキラキラ輝く海辺などのイメージが強く打ち出されます。
このようなときには花に彩られたマザー牧場(富津市)や東京ドイツ村(袖ケ浦市)、海水浴場の御宿海岸も南房総エリアと言っても反論はないでしょう。オリンピックでサーフィン競技が行われた一宮町の釣ケ崎海岸も、長生地域ではありますが南房総と呼ばれることもあります。房総の花と海を強調するために「南」という単語はうってつけなのです。
この南房総に対して「中房総」という言葉が使われているのが中房総観光推進ネットワーク協議会です。中房総と聞いてどのエリアを思い浮かべるでしょうか。これは2008年に広域連携での観光振興のために設立されたもので現在、市原市と茂原市、長生郡南部、夷隅地域の4市6町が加盟しています。
各市町の一つ一つの観光地だけでは十分な集客力が期待できないので、一つの地域として観光振興を図ろうという試みは意味あるものです。パンフレットにあるフレーズの「なかなかよさそう中房総」も面白いです。春の花と夏の海に加えて秋の紅葉と冬の温泉と、年間を通して楽しめることをアピールしているのも良い着眼と感じます。

さらに女子旅や家族連れの旅、グルメなどさまざまな観光資源を前面に出せるのも広域連携であるからこそだと思います。
現在、コロナ禍もあって共通パンフレットの発行の他には大きな取り組みが行えないのが残念ですが、昨年行われた域内を巡るスタンプラリーのような積極的な取り組みが期待されます。
JRの観光パンフレットにも「中房総」という言葉が登場してきましたが、観光客にどのような地域を連想させ、インパクトがあるのかやや不安になります。その意味では中房総はまだ市民権を得た地域名とは言えない感じです。
この「中房総」に対して私は「奥房総」という名称を使うことがあります。「奥」は奥日光、奥多摩、奥飛騨などと使われ、自然豊かで情緒ある地域というイメージがあります。
房総半島内部の養老渓谷、亀山湖、今では有名なチバニアンや濃溝の滝、そして大山千枚田辺りまでを含んで「奥房総」と呼び、新しい地域イメージを創り出したらどうでしょうか。
「奥」と使う時はどちらから見て奥なのかということになりますが、ここでは当然ながら東京圏からの視線を意識しています。一般的にはどんどん奥に進んでいくと行き止まりか他地域に出ることになりますが、奥房総の面白さは奥に進んでいくと突然太平洋の大海原が目に飛び込んでくるという特徴があります。
中房総と奥房総をうまく使って房総半島の魅力をさらにアピールしていく方策を探りたいものです。
(秀明大・植草学園大非常勤講師 鎌田正男)

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