日本だと「あたご」「むらさめ」に匹敵か 軍艦に「バイエルン」の名が4度も使われたワケ

2021年11月上旬、約20年ぶりにドイツ軍艦が来日しました。その艦はフリゲート「バイエルン」。実はこの艦名、ドイツにとって伝統ある軍艦名で、150年ほど前から使われ続けています。どのような艦がその名を背負ってきたのでしょうか。
2021年11月5日、極東航海や国連決議に基づく北朝鮮の瀬取り監視を行うために、ドイツ海軍のフリゲート「バイエルン」が来日しました。同艦は、ブランデンブルク級フリゲートの3番艦で、1996(平成8)年に就役したベテラン艦ですが、食いしん坊の筆者(白石 光:戦史研究家)はバイエルンと聞くと、ついついグルメに目が行ってしまいます。
日本だと「あたご」「むらさめ」に匹敵か 軍艦に「バイエルン」…の画像はこちら >>フリゲート「バイエルン」(画像:ドイツ連邦軍)。
「バヴァリア」とも称されるバイエルン地方(バイエルン州)の中心都市はミュンヘンですが、その名を冠した「ミュンヘナー・ヴァイスヴルスト」という白ソーセージを筆頭に、「レヴァーケーゼ」というレバーを用いたソーセージ、「ヴァイスビア」(白ビール)に銘菓「プリンツレゲンテントルテ」と絶品ぞろいで、ヨダレが止まりません。
しかしバイエルンは内陸にあるため海はなし。とはいえ、歴史的にドイツ海軍には、その名を冠した軍艦が4隻も存在しました。なぜ、一見すると海と関係ない名が重用されているのか、それはドイツの歴史そのものが反映されているからです。
「バイエルン」の名が付けられた初の船は、1870年代後半に同型艦4隻が建造されたザクセン級装甲艦の2番艦です。その任務は自国の沿岸部の防衛、つまり海防でした。ドイツ帝国はドイツ統一戦争を経て1871年に初めてひとつの国家として集約しましたが、その際にイギリス海軍を手本に、近代的な外洋海軍として形作られたのが、ドイツ帝国海軍でした。

行く行くは、イギリス海軍を追い越そうと夢見たドイツ帝国海軍は、初の装甲艦としてカイザー級を2隻建造、それぞれ「カイザー」「ドイツ」と名付けます。そして、その次に造ったのがザクセン級でした。
ザクセン級装甲艦は、ドイツ帝国の礎となった主要4国、ザクセン王国、バイエルン王国、ヴュルテンベルク王国、バーデン大公国の名を各艦に冠しました。こうして初代「バイエルン」は誕生したのです。
装甲艦「バイエルン」は全長98.2m、最大排水量7742トンで、乗員数は約310名でした。最大速力は14ノット、単装25.9cm砲6門のほか、単装8.8cm砲8門や単装45cm魚雷発射管2基、単装35cm魚雷発射管3基を備えていました。1881年8月4日に竣工しましたが、第1次大戦前の1900年に軍艦籍から除籍され、その後は浮倉庫として同大戦が終結した1918年まで使用されました。
装甲艦「バイエルン」(画像:アメリカ海軍)。
2代目は、バイエルン級戦艦のネームシップで、第1次世界大戦中の1916年6月30日に就役しました。就役が遅かったのでユトランド沖海戦には参加できませんでしたが、いくつかの戦いに参加し、機雷に触れて損傷したこともあります。ドイツ敗戦後はスコットランド北東部のオークニー諸島の中央部にある入江でイギリス海軍の根拠地のひとつ「スカパ・フロー」に抑留されたものの、同海軍への引き渡しを拒んで自沈。1934年に浮揚され、スコットランドのロサイスにて解体されています。

戦艦「バイエルン」は全長179.4m、排水量は約2万8000トンで乗員数は1100名です。最大速力は22ノット、38cm連装砲塔4基のほか、単装15cm砲16門や単装7.5cm砲20門、8.8cm高角砲8門、60cm水中魚雷発射管5基を備えていました。なお同型艦としてほかに3隻が建造されていたものの、就役したのは「バイエルン」の他に2番艦「バーデン」1隻だけで、残り2隻は進水こそしたものの完成せず、戦後に解体されています。
3代目は、第2次世界大戦敗戦後の旧西ドイツが初めて建造した駆逐艦であるハンブルク級の3番艦です。このクラスは同型艦として「バイエルン」を含め4隻あり、全長は133.7m、満載排水量4700トン、乗員約270名。最大速力は35ノットを発揮し、単装10cm砲3門のほか、連装40mm機関銃4基や艦対艦ミサイル「エグゾセ」の連装発射筒2基、375mm対潜ロケット砲2基、単装533mm魚雷発射管4基などを備えていました。
ハンブルク級駆逐艦は新生西ドイツ海軍で初となる国産駆逐艦でした。西ドイツ海軍にはその前に初の国産艦としてケルン級フリゲートがありましたが、同級6隻は、それぞれドイツの都市名(ケルン、エムデン、アウクスブルク、カールスルーエ、リューベック、ブラウンシュヴァイク)が用いられたことから、それよりも大きな駆逐艦にふさわしい艦名として州名が用いられたようです。こうしてハンブルク級駆逐艦の1艦として「バイエルン」の名は復活しました。

駆逐艦「バイエルン」は1965年7月4日に就役したのち、東西冷戦下、NATO(北大西洋条約機構)の合同海軍の一翼を担って活動しています。そして1993年12月7日に退役後、1995年にデンマークで解体されました。
駆逐艦「バイエルン」の同型艦「ヘッセン」(画像:アメリカ海軍)。
そして4代目として建造されたのが、今回来日したフリゲート「バイエルン」です。
このように、バイエルンの名は約150年のドイツの歴史の中で、4回も軍艦に冠せられています。その理由は、やはり同地はドイツの文化や経済、そして伝統を象徴する地域だからなのだといえるのではないでしょうか。
ちなみに、日本では「あたご」「むらさめ」「ありあけ」「くろしお」「あさしお」などが、旧日本海軍と海上自衛隊合わせて2021年現在までに4度も艦名に使用されています。

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