強すぎる「ダイソー」と「セリア」 イオンが「キャンドゥ」と組むと何が起きるのか

イオンは10月14日、公開買付(TOB)でキャンドゥの株を取得し、子会社化を目指すと発表した。現在、買付の最中であるため、両社は将来ビジョンに関するコメントを出すのを控えているが、このTOBは双方にとって大きく成長するチャンスとなるのではないかと考える。

イオンの傘下となって業績を伸ばした異業種の会社に、ドラッグストア業界の雄・ウエルシアホールディングスや、「キッチンオリジン」のオリジン東秀がある。

ウエルシアは2000年にイオンの傘下に入った。今はイオンの持ち株比率が50.54%だが、Tポイントを活用した割引サービスを行うなど経営の独自性が強く、同社がイオングループであると感じるのは「トップバリュ」の製品を食品売場などで見る時くらいだ。調剤部門に強いドラッグストアとして、揺るぎない地位を築いている。

オリジン東秀は、弁当・総菜店のキッチンオリジンや、中華料理店「れんげ食堂Toshu」などを経営する。キッチンオリジンは、おにぎり、総菜、手づくり弁当を3本柱にした類例が少ないチェーンで、イオングループの店舗に商品の供給もしている。06年にドン・キホーテ(現・PPIH)のTOBに対して社員が反対し、イオンがホワイトナイトとなって買収した。

100円ショップ業界では、首位「ダイソー」の大創産業、2位セリアのツートップが突出している。3位のキャンドゥは製品の内容で決して劣っておらず、出店の戦略やスピードで後塵(こうじん)を拝したと捉えている。

一方のイオンも、100円ショップの誘致が集客を上げるのに効果的と考えており、キャンドゥとの関係を深めて、Win-Winのビジネス展開ができると期待している。

イオンのキャンドゥ買収は、100円ショップの近未来にどのような影響をもたらすのだろうか。

上位2社と下位2社の差が広がる
コロナ禍で、家庭用雑貨を主力とする100円ショップはどのような影響を受けたのか。商業施設の中に入居する店は、緊急事態やまん防(まん延防止等重点措置)などによって休業や時短の影響を受けた。しかし、外出を控えて家で過ごす時間が増えたことを背景に、全体としては好調に推移した。内容をよく見ると、大手4社が寡占する市場で、上位2社と下位2社の差が広がっている。

業界最大手の大創産業は非上場で業績を明かしていない。しかし、同社公式Webサイトによると年商は5262億円(21年2月末現在)となっており、前年の5015億円(20年3月末現在)から4.9%増となっている。なぜ、20年4月から21年2月までの11カ月の年商が記されているのかは不明だが、決算月を変更したと目される。もし21年3月末までの年商をカウントしていれば、5740億円程度に達し、2桁の伸び率になっていた可能性がある。国内店舗数は3620店(同)、海外2272店(同、24の国と地域)となっている。

業界2位のセリアは、年商2007億円(21年3月期)。前期比10.6%増と2桁増を達成するほど好調だった。22年3月期中間決算で売上高1034億円(前年同期比6.2%増)となっており、営業利益も105億円(同8.6%増)と順調だ。店舗数は1820店(21年9月末現在)。

それに対して、3位のキャンドゥは年商730億円(20年11月期)で、前期比2.4%増にとどまった。21年11月期は第3四半期までで、売上高は前年同期比0.1%増の551億円と伸び悩んでおり、営業利益は26.4%減の10億円だ。巣ごもり需要の増加を残念ながら業績に反映できていない。店舗数は1141店(海外FC7店を含む。21年8月末現在)。

ちなみに、4位のワッツは21年8月期の決算において年商が507億円で、前期比4.0%減となってしまった。営業利益も17億円で前期比5.6%減だった。店舗数は4ブランド「ワッツ」「ワッツ ウィズ」「ミーツ」「シルク」合わせて1364店(21年8月末現在)。

なお、コンビニのローソンストア100は671店(21年8月末現在)あるが、品ぞろえからいわゆる100円ショップのカテゴリーでなく、コンビニ業界に入る。そうなると、100円ショップ業界5位で「フレッツ」「百圓領事館」を展開する音通の21年3月期の年商は130億円(前期比12.5%減)となっていて、キャンドゥ、ワッツと差が大きく開いている。4社寡占体制は明らかである。

大創産業は国内店舗数でおよそセリアの2倍あり、キャンドゥとワッツの3倍ある。

また、セリアの利益は、キャンドゥやワッツと比較して1桁違う。つまり、大手4社といっても、実態は大創産業、セリアの2強なのだ。一方、キャンドゥ、ワッツの“2弱”との格差がコロナ禍において拡大している。

この状況にキャンドゥは強い危機感を抱いており、イオンによるTOBは渡りに船であったのだ。

イオンが100円ショップに魅力を感じる理由
イオンにとっても、100円ショップは魅力のある業態だ。

同社の21年2月期決算では、連結の年商は8兆6039億円。前期より3億円ほど減った程度で、横這いだった。また、営業利益の1506億円は、前期比30.1%減だった。食品スーパー(SM)が好調だったのに対して、3密(密閉・密集・密接)を避けなければならないのでモールの集客策が打てず、休業や時短を余儀なくされた影響が出た。総合スーパー(GMS)も不振から脱せなかった。

22年2月期中間決算では、売上高4兆3449億円(前年同期比1.7%増)と微増ながら過去最高を更新。営業利益は778億円(同129.4%増)で、最終利益でも黒字転換した。大都市部で緊急事態、まん防が続いたわりには、対処法が確立してきた効果が出ている。特に、デベロッパー部門の売り上げ1787億円(20.5%増)と、サービス・専門店部門の売り上げ3459億円(13.8%増)の伸び率が高い。感染対策をしっかり取ってモールを開け、テナントの編集力で集客する「イオンモール」のビジネスモデルが機能すれば、イオンは強いことが証明されている。

イオンモールがより賑わうためにどうしても欲しい専門店の1つが、コロナのような疫病にも強くて成長力のある100円ショップなのだ。ただし、100円ショップのこれ以上の寡占化はイオンにとって望ましくない。なぜならイオンは、イオンモールがどこに行っても同じじゃないかといわれることを嫌っており、1つ1つのモールが個性的な輝きを放つようにしたいと考えているからだ。確かに、ダイソー、セリアは優れていて入居してもらいたいが、どこに行ってもそればかりでは差別化にならないのだ。

また、大きなモールならば、2~3店程度「3COINS」のような300円ショップを含めて、100円ショップが入っていても良い。現に、「イオンモール幕張新都心」(千葉市)では、グランドモールとアクティブモールにダイソーが出店し、ファミリーモールにダイソー系の300円ショップ「スリーピー」が出店している。このように、大創産業の店が3店入っている。300円ショップは、3COINSがグランドモールに、「イルーシー300」がファミリーモールにも入っている。

ワッツは大規模店舗の間にある、小さなスーパーなどに出店する隙間狙いと戦略がはっきりしている。イオンが業績が伸び悩んでいるキャンドゥをテコ入れするために投資するのは、合理的な選択なのだ。

「100円ショップ業態は、イオングループの商業施設において重要な業態と認識している。今後のイオングループの活性化に必要不可欠な“エッセンシャル業態”として、以前よりさらなる協業について検討してきた。キャンドゥとイオンの既存業態とを組み合わせることで、ラインロビング(編集部注:特定のカテゴリーで品ぞろえの専門性を高めて差別化すること)による大幅な事業拡大が見込める」(イオン・広報)と、イオンではキャンドゥの傘下入りへの期待の大きさを表明している。

イオンの潜在ニーズにもマッチ
イオンにとってGMSの再生も大きなテーマだ。イオンに限らず、GMSは食品を除いて苦戦しており、22年2月期中間決算でも、GMSは162億円の赤字だった。

主力のイオンリテールを詳しく見てみると、食品は前期比2.2%増、前々期比4.2%増と順調。それに対して、衣料が前期比3.8%増ながら、前々期比で21.1%減と足を引っ張っている。住関連の住居余暇・H&BC(ヘルス&ビューティーケア)も前期比4.4%減、前々期比12.1%減と苦戦している。

さらに詳細を見ると、園芸用品138.2%増、エンターテインメント59.6%増、スポージアム55.8%増、調剤9.2%増、家事消耗7.8%増と、伸びているカテゴリーがある。100円ショップは、調剤は範囲外だが、家事消耗はもちろん、ちょっとした園芸用品やエンターテインメントに関連するキャラクター用品なども売るし、スポージアムに関連するアウトドア用品も売れ筋だ。従ってイオンリテールの衣料や住関連の売り場を縮小して、100円ショップのテナントを入れるのも、売り上げ増の現実的な選択肢なのだ。

この場合も、どこに行ってもダイソー、セリアではなくて、キャンドゥも入れていけば、同じことを考えているGMS競合店との差別化が可能になる。

イオン・広報では「キャンドゥは比較的小型な店舗の出店形態を特徴としており、GMSやSMなどへの出店余地を多く持つ、イオンの潜在ニーズともマッチしている」と、親和性の高さに着目したとしている。

海外進出のチャンスも
イオンは、中期経営計画で「5つの変革」を掲げる。デジタルシフトの加速と進化、サプライチェーン発想での独自価値の創造、新たな時代に対応したヘルス&ウエルネスの進化、イオン生活圏の創造、アジアシフトのさらなる加速が具体的な中身だ。2030年へ向けた持続的成長を目指し、グループ内の業態の新たな発展性を検討している。

同社は21年5月下旬、キャンドゥ創業家が所有する株式譲渡に関する第一次入札プロセスへの打診を受けた。精査した結果、両社の事業・経営ノウハウを共有することで、効率的な事業運営が可能となり、ビジネスモデル強化につながるとの考えに至った。そして、このプロセスへの参加を決断した、とのこと。

7月中旬に公開買付を行う旨の一時意見表明書を提出。その後、第二次入札プロセスへの参加のレターを受け、8月下旬までデューデリジェンスなどを実施。9月10日に最終提案書を提出した。

9月中旬に最適な売却先であるとの結論をもらって、10月14日には株式譲渡契約を締結した。

キャンドゥとセリアは、なぜ利益率に大きな差があるか。セリアが業界に先駆けて自動発注を整備し、1日がかりの仕事をわずか30分に短縮するなど、IT活用が主因といわれる。キャンドゥはイオンとの協業で、ECショップの強化にすぐにでも取り組むことになるだろう。100円ショップは1品の単価が低すぎて、通販が難しいが、最適な解を探し当ててほしい。

商品面でも、ダイソーは100円にこだわらず、相対的に安価であれば1個1000円の商品も売る。キャンドゥも全てが100円均一ではなくなっているものの、価値あるものを200円、300円で売るノウハウで、ダイソーに圧倒されている感がなきにしもあらず。商品を見直して、ラインロビングできる、キャンドゥでしか売っていないものを強化してほしいものだ。

イオンは、海外店も数多くあり、キャンドゥでは今までほとんどできていなかった海外進出のチャンスも開けるはずだ。

このように、イオンによるキャンドゥのTOB、子会社化は両社にとって“福音”になる可能性が高い。イオンはキャンドゥの経営の独自性を保ちながら、上手に改革をリードしてほしいし、成功したウエルシアやオリジン東秀の前例からも期待感が膨らむ。

(長浜淳之介)

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