森口将之のカーデザイン解体新書 第50回 自動車業界ではSUV型EVがトレンド? トヨタ「bZ4X」の特徴は

SUVタイプの電気自動車(EV)が増える中、トヨタがついに新型車「bZ4X」を発表した。スバルと共同開発したSUV型EVで、発売は2022年の予定だ。トヨタがグローバルで販売する初めてのEVは、トヨタの既存車および他社製EVと何が違うのか。実車を確認し、開発陣に話を聞いてきた。

○デザインテーマは「Hi-Tech and Emotion」

bZ4Xは、既存のトヨタ車でいえば「RAV4」に似たサイズ感のSUVだ。車格的には、日産自動車が2022年に発売予定のEV「アリア」に近い。bZ4Xは日本以外に欧州、北米、中国などでも販売するグローバルモデルという位置づけなので、現在世界で最も売れているトヨタ車のRAV4と同じ車格にしたのだろう。

スタイリングは凝った面や多様な素材で躍動感を強調している。シームレスなアリアとは対照的だ。トヨタのニュースリリースを見ると理由がわかる。bZ4Xのコンセプトは「Activity Hub」、つまり単なる移動手段ではなく、乗員全員が楽しい時間や空間を共有できる、ワクワク感のあるクルマとしているからだ。

トヨタはbZ4Xで「EVの斬新さとSUVの迫力を表現した」としている。「Hi-Tech and Emotion」というデザインテーマのもと、EVの先進感とクルマ本来の美しさを融合した造形にチャレンジし、先進的なスリークさとSUVらしい力強さの両立を目指したそうだ。

トヨタZEVファクトリーZEV B&D Lab主幹の井上心氏および川坂亘史氏も、「元気さを出すためにこのようなデザインにした」と話していた。コンパクトカーのトヨタ「ヤリス」と日産自動車「ノート」についてもいえることだが、同じ国のブランドが同じカテゴリーに向けて送り出した車種が、ここまで対照的というのは面白い。

○グリルの有無でブランドを差別化

とりわけ主張が強いのはフロントだ。グリルのある部分は高さのあるバンパーになっており、上に左右のヘッドランプにつながる黒いバー、下に薄いインテークがある。

ヘッドランプはフロントフード、バンパー、フェンダーと面が連続しており、空気抵抗を抑えようとしていることが伝わってくる。

SUVらしさを表現する黒いフェンダーをヘッドランプまで伸ばしたのも、段差を少なくして空気の流れをスムーズにするためだろう。バンパー下の薄いインテークは、バッテリーやモーターの冷却のために装備したとのことだった。

ちなみにスバル「ソルテラ」は、bZ4Xではバンパーパネルとなっている場所にスバルのアイデンティティである「ヘキサゴングリル」を入れ、ヘッドランプはフードまでレンズを回り込ませてきた。下端のインテークや両端のダクト周辺も異なっており、限られた条件の中で明確な差別化を果たしてきたと実感した。

高い位置に置かれたコンビランプを赤いガーニッシュでつないだ後ろ姿は、「ハリアー」からの流れを感じる。先端が二方向に伸びるランプはリアゲートやバンパーと合わせて台形を描いており、重心の低さや力強い踏ん張り感を表現している。

ソルテラでは左右をつなぐバーがブラックになるだけでなく、コンビランプ自体も現行「レヴォーグ」に似た造形になっており、スバルらしいこだわりを感じる。そのイメージを強調するのであれば、ランプから斜め下に伸びるアクセントはなくてもよかった。

個人的に目についたのはリアスポイラーだ。両端だけが張り出していたからである。理由を聞くと、高速安定性に不可欠なダウンフォースを獲得しつつ、空気抵抗を抑えて航続距離を伸ばすという、相反する要求に応えるためとのことだった。

○独特のメーター配置の理由

サイドビューはフロント/リアとは異なり、bZ4X/ソルテラで異なる部分はほとんどない。サイドウインドーの形状はRAV4やひとまわり小柄な「カローラクロス」にも似ている。今のトヨタSUVの形がこれなのだろう。

ただし、フェンダーの張り出し方はRAV4に比べると控えめで、全長に対してホイールベースが長いことにも気づく。具体的に数字を出すと2,850mmで、RAV4より160mm長い。キャビンスペース拡大とバッテリー格納の2つの理由から、長めにしたとのことだった。

充電口は左右のフロントフェンダーに位置する。左が急速、右が普通充電用で、偶然にも日産アリア、ポルシェ「タイカン」などと同じだ。今後のEVはこの位置が主流になっていくのかもしれない。

キャビンは前後ともフロアが高めで、運転席に座ると、セダンやハッチバックに近い足を前に伸ばすような姿勢になる。床下にバッテリーを収めているうえに、ソルテラの諸元表によると最低地上高を210mmと十分に取ったためもあるだろう。後席も足を前に出すスタイルで座るが、ホイールベースを長めに取ってあるおかげで広さは十分。荷室もこのクラスのSUVの平均レベルは確保していた。

ステアリングは飛行機の操縦桿を思わせる形状も用意されるというが、取材車は通常の丸型だった。メーターはそのステアリングの上から見るスタイルで、プジョーなどが導入している方式。トヨタとスバルの市販車には初採用だ。ファブリック張りのインパネは着座位置に対して低く、通常のメーター位置では視線移動が大きくなってしまうことから、このレイアウトにしたという。

bZ4Xはソルテラともども2022年中盤に導入予定だという。ライバルのアリアは年明けからデリバリーを開始し、テスラ「モデル3」のSUV版である「モデルY」、フォルクスワーゲン「ID.3/ID.4」なども来年上陸するはず。ラインアップが一気に増えることで、EVへの乗り換えを考えるユーザーが多く出てくるかもしれない。

森口将之 1962年東京都出身。早稲田大学教育学部を卒業後、出版社編集部を経て、1993年にフリーランス・ジャーナリストとして独立。日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。グッドデザイン賞審査委員を務める。著書に『これから始まる自動運転 社会はどうなる!?』『MaaS入門 まちづくりのためのスマートモビリティ戦略』など。 この著者の記事一覧はこちら

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