今は劇的なことが起こりにくいので政治家がつまらない…漫画「角栄に花束を」著者・大和田秀樹さんに聞く

青年漫画誌「ヤングチャンピオン」(秋田書店)に連載中の田中角栄元首相の生涯を描いた漫画「角栄に花束を」の第5巻(693円)が18日に発売された。著者の大和田秀樹さん(52)は、波乱万丈の人生を送り、現在もさまざまな逸話が語り継がれる田中氏のどこに注目し、どんな物語を紹介したいと考えたのか。「現在の政治家とはケタ違いに魅力的」という田中氏の見方を聞いた。(高柳 哲人)
「今太閤」「コンピューター付きブルドーザー」「闇将軍」―。田中氏を語る際には、さまざまな異名が使われる。それだけ、世間の注目を集めた元首相の存在に大和田さんが注目した“原点”は、小学生の時にあった。
「当時、加藤茶が『まあ、この~』と物まねをしていたんですが、角栄が話しているのを見たら『本当に同じだ!』と。政治家に興味を持ったのは、その時が初めてでしたね」
その後、漫画家になってから文献を読み、調べていけばいくほどさまざまな功績を残していることを知ると同時に、人間的魅力にひかれていったという。
「多くの議員立法を手掛けていることなどを知りました。中でも興味を持ったのは金の配り方。好きなエピソードは、愛人との手切れ金に100万円を借りに来た相手に対し『100万は愛人に、100万は自分にとって必要な相手に、残りの100万は自分のために使え』と300万円を渡したというもの。そんなことをされれば、相手は『角さんのために…』と思うじゃないですか。やってることが、中国の武侠(ぶきょう)小説みたい。それは好きになりますよ」

ただ、田中氏の周辺にはロッキード事件をはじめとして、「陰の部分」も多数存在している。第5巻では新人議員の田中氏が、当時首相だった芦田均氏の「昭電疑獄」を追い詰める“ヒーロー”として描かれているが、今後はどのような展開になっていくのか。
「もちろん、『悪いものは悪い』と描くつもりです。ピカレスク(悪漢)というか、『悪い角栄の魅力』というのは間違いなくあると思うので。ヒロイズムだけで描いていくと、子供が読む伝記みたくなっちゃう。政治や派閥というのは、きれいごとだけでは済みませんから。もっとも、角栄は隠し事をしなかったから、次々と証拠が出てきてしまったということがあったのだと思いますね」
同時に、この漫画を世の中にあまたある、いわゆる「角栄本」とは違った内容、存在にしたいという思いは強い。
「小佐野賢治(ロッキード事件の重要人物)がどうとか、国内のことばかりを描くのはやめようと思っています。そもそも、角栄本の多くはロッキード事件、あとは佐藤昭子さん(田中氏の秘書で金庫番とも言われていた)の本に引っ張られ過ぎているところがあると思います。もっとスケールの大きな国際人としての角栄、そして『人間・田中角栄』をとらえていきたいですね」
ちなみに田中氏や以前に「疾風の勇人」で主人公とした池田勇人元首相以外で、漫画にしてみたい政治家はいるのだろうか。
「描いてみたいのは、ハマコー(浜田幸一氏)、サッチャー(元英首相)ですかね。現役の政治家だとプーチン(ロシア大統領)、ドゥテルテ(フィリピン大統領)かな…。日本の現職の政治家はアクが強い人、ドラマになる人が少ないですね。もっとも、今は平和な時期で劇的なことが起こりにくいので、政治家がつまらなくなってしまう点はあるかもしれません」
◆大和田 秀樹(おおわだ・ひでき)1969年9月19日、茨城県生まれ。52歳。98年、「たのしい甲子園」で漫画家デビュー。2006年から月刊漫画誌「近代麻雀」で「ムダヅモ無き改革」の連載をスタート。他の主な作品に「大魔法峠」「機動戦士ガンダムさん」など。

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