おなかの子に「ごめんね」 妊婦感染、肺は「ショック受けるほど真っ白」 後遺症と出産への不安

[新型コロナ 沖縄の今]
妊婦の新型コロナウイルス感染が急増する沖縄県内。厚生労働省研究班などによると、妊娠25週以降や30歳以上の妊婦が感染すると、酸素投与が必要な中等症2や重症に至るリスクが上昇する傾向にあるという。感染し、自覚症状の薄いまま血中酸素濃度が下がり、中等症2に症状が悪化した30代女性=那覇市=が取材に応じた。
娘と一緒に、大きくなったおなかをなでる女性(提供) 「それほど、息苦しさも感じなかった。それが、余計に怖かった」。8月3日深夜。妊娠6カ月の女性は発熱による頭痛で眠れず、何げなく手にした血中の酸素濃度を測るパルスオキシメーターの数値に驚いた。7月末に3人家族全員の陽性が判明し、自宅療養中のさなか。血中酸素濃度は「90」で、日中の96前後から急激に下がっていた。
38度台の発熱や体の節々の痛みでふらつく夫の運転に送られて救急病院に向かった。せきなど呼吸器症状に自覚はなかったが、受診先で目にした肺のCT画像は「ショックを受けるほど真っ白」。そのまま入院となり酸素投与となった。「おなかの子どもに『ごめんね』って謝り続けた」。時折感じる胎動を頼りに不安な心を落ち着かせた。
■「あれだけ気を付けたのに」
最初の発熱は、1歳の誕生日を目前にした娘。7月29日、別居する実家の母や妹と一緒に浜辺を散歩した帰りに39度の熱が出た。夕方、小児科に行くと「周囲の大人に症状がないなら通常の発熱だろう。検査は不要」との診断。解熱剤をも

らい帰宅したその夜、仕事帰りの夫が発熱した。
妊娠中の感染を恐れ、この2カ月間、娘の登園を自粛。夫も出社はするがデスクワークが主で、実家の母や妹はPCR検査で陰性を確認した後に会った。「あれだけ気を付けたのに」。娘の発熱翌日の30日、夫婦でPCR検査を受けて、共に陽性を確認。保健所に相談した上で娘を病院に再度連れて行き検査すると、娘も陽性だった。
■緊急入院、酸素投与7日間
妊娠6カ月で新型コロナウイルスに感染した那覇市の30代女性は、共に陽性になった夫と娘と自宅療養を始めた。夫は解熱剤を服用後も、38度台の熱を行ったり来たり。「体の節々が痛い」とほぼ寝たきりだった。
当初は微熱程度だった女性も、夫と娘の看護をするうち、頭痛や吐き気が増して食欲が落ち、8月3日の日中に一時39度台まで熱が上昇。受診した病院で入院を勧められたが「自宅に陽性の夫と娘を残すことが気掛かりだった」。
血中の酸素濃度を測るパルスオキシメーターの貸与を受け一時帰宅したが、その日の深夜、酸素濃度の低下で緊急入院となった。
この2日後には、家に残した夫も肺炎悪化で入院。夫婦が留守の間、娘は、同じく陽性になり幸い無症状だった妹に看護を頼んだ。
女性は入院後も酸素濃度が上がりづらく、酸素投与は7日間に及んだ。点滴も5日間。1日2本の注射に何十錠も薬を飲んだ。「分類で言えば『重症』でなく『中等症2』だったが、かなりしんどい。思い浮かべる中等症のイメージとかなりズレがあった」と言う。夫も計5日間入院した。

■後遺症と出産への不安
女性は今も、倦怠(けんたい)感や体力低下、味覚障がいなどの後遺症を抱える。「感染によるおなかの子へのリスクは産まれるまで分からない。1人目の出産時とは違う緊張感や不安がある」という。
ワクチン接種による赤ちゃんへの影響を調べているさなかに感染した。「入院中の注射や薬の量を考えれば、早く接種しておけば良かった」と話す女性。「きっと感染しないだろうでなく、感染時のリスクを考え行動できていたら」と悔やんだ。(社会部・篠原知恵)

【県内の感染妊婦の対応】
入院・搬送先を事前に決定
新型コロナウイルス感染者の増加で病床が逼迫(ひっぱく)する中、県内では、産婦人科医間で妊娠週数などに応じて感染した妊婦に対応する総合病院を事前に決め、入院や搬送の困難事例を防いできた。
自宅療養の妊婦には、産婦人科医が毎日電話で症状などを聞き入院の必要性を判断。分娩(ぶんべん)時は北部、中部、宮古、八重山の各県立と琉球大学の計5病院で対応し、超低出生体重児は中部と琉大の2病院で主に受け入れている。
中部病院は、周産期センター内に感染妊婦専用の病床が計8床。内科のコロナ病床も利用しながら受け入れ、急な救急搬送に備えて妊婦専用の空きを常に確保し運用する。
琉大病院は8月中旬に感染妊婦専用病床を12床確保した。助産師らが感染防護具の着脱などを学び、施設改修工事も実施。同院の銘苅桂子医師は「特に、妊娠後期は重症化リスクがある。感染拡大で自宅療養が急増し、肺炎の重症化や陣痛が始まった状況で入院できない妊婦が出ると、母子2人の命を救えない可能性があり、内科医などの協力で専用病床を確保いただいた」と話す。

■助産師の無料電話相談も
厚生労働省の研究班などは、妊娠25週以上の妊婦が重症か中等症2になるリスクが、そうでない妊婦に比べ1・24倍。30歳以上だと1・17倍に上がるとの解析結果をまとめた。妊娠糖尿病のある妊婦はさらに上がり2・19倍だった。
県は感染中や感染経験があり、出産や育児に不安のある妊産婦を対象に、無料で助産師ら専門職に電話などで相談できる事業を実施中。昨年8月から今年7月末までの利用は20件だった。問い合わせは県地域保健課、電話098(866)2215。
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