どうなる「関西スーパー」争奪戦 勝負に出た「オーケー」に“危うさ”を感じてしまう理由

関東のディスカウント・スーパー「オーケーストア」を経営するオーケーが、関西の老舗食品スーパー「関西スーパー」を経営する関西スーパーマーケットの買収を表明した。オーケーは関西に店舗がなく、関西進出の勝負手となる。

この決定は9月3日に発表された。4日前の8月31日には、関西スーパーがエイチ・ツー・オー(H2O)リテイリングの買収により、傘下に入るとの発表があったばかりだった。H2Oとオーケーの、関西スーパーを巡る買収合戦に発展している。

H2Oは、阪急阪神東宝グループの小売部門だ。阪急百貨店や阪神百貨店の他、関西の食品スーパー「イズミヤ」「阪急オアシス」もグループ会社。しかも、関西スーパーとイズミヤ、阪急オアシスが経営統合するという大掛かりな話だ。もし実現すれば、関西のスーパー3社がアライアンスを組んだ、年商4000億円超の巨大なローカルスーパーのグループが新たに出現する。

しかし、関西スーパーの第3位の大株主で約8%を保有するオーケーは、それを不服とした。関西スーパーがオーケーのコンセプトである「高品質・Everyday Low Price」、つまり特売をせずにいつも安くて品質の良い商品を販売する方針を受け入れて、オーケーの完全子会社になることこそ取るべき道筋だと批判している。

実は、オーケーは6月に関西スーパーに対して上記の提案をしていた。しかし、関西スーパーは協議の席を設けようとせず、真剣に検討した形跡がないなどと不快感をにじませている。

オーケーは、関西スーパーの企業価値を高く評価し、1992年2月10日に付けた上場来最高値の1株2250円で、上限なしのTOB(公開買付)を実施すると発表。関西スーパーに翻意を迫っている。この発表を受け、関西スーパーの9月2日の株価は1374円だったが、突如上昇。同月10日時点で2160円と上場来最高値に肉薄してきた。

ただし、オーケーは敵対的買収をする気はないと、H2Oとの経営統合が破談になった場合に、TOBに踏み切るとしている。

つまり、10月に開催される予定である関西スーパーの臨時株主総会で、H2O案が否決されてはじめて、オーケーは買収に動く。可決には会社法の規定により、議決権を持つ株主の3分の2以上の賛成が必要となる。

さて、スーパーのさらなる再編へと発展しそうな関西スーパーの争奪戦は、H2Oとオーケー、どちらに軍配が上がるだろうか。

「関スパ」は業績好調
まず、関西スーパーの意思は明確だ。H2Oの提案を受け入れる方針である。8月31日に、関西スーパーの福谷耕治社長は、H2Oの荒木直也社長と共同の記者会見も開催した。H2Oはホワイトナイトというわけだ。

関西スーパーは、関西では「関スパ」「関スー」の略称で呼ばれ、兵庫県、大阪府、奈良県に65店舗を展開。21年3月期決算は、売上高に当たる営業収益が約1309億円(前年同期比3.8%増)、経常利益約31億円(同19.5%増)と順調。直ちに業務の大改革を断行しなければならない内容と思えない。コロナ前の20年3月期も増収で、利益2桁増の決算だった。

ダイエーが創業した2年後の1959年に、関西スーパーは1号店を兵庫県伊丹市にオープンしている。以降、阪神間、大阪市、神戸市を中心に店舗展開しており、店舗の分布が大阪と神戸の間に集中する大都市近郊型立地が1つの特徴だ。後述するが、この大都市近郊型の立地戦略という一点のみはオーケーと共通する。

お店の売りは、生鮮。関西スーパーでは生鮮3品と総菜にこだわりを持つ。仕入先に趣旨を理解してもらい、“この野菜は○○さんの手によるもの”といったように自信を持って販売。一日を通して安定した鮮度と品質を保つため、売場と直結した作業場で調理するインストア方式を採用した。

また、総菜は第4の生鮮という考えのもと、新鮮なネタを生かした寿司、揚げ立てのフライや天ぷら、食卓のもう一品に便利な中華などの総菜、素材を吟味し鰹や昆布でダシを取った煮炊物などを提供している。

全国各地の漁港や大阪の中央卸売市場より、いきの良い魚介類が毎日売場に届く仕組みを構築。牛肉は宮崎県を中心に肥育される「720(ナニワ)グループ牛」も販売。これは、黒毛和牛とブラック・アンガス牛を掛け合わせた仔牛をオーストラリアから輸入して、大自然の中で伸び伸びと育てた国産牛で、黒毛和牛並みの品質の肉をお値打ち価格で提供する。

月曜と火曜を特売日として、本体価格より10%引のセールを実施している。

移動スーパー「とくし丸」を兵庫県と大阪府で17年から運営。18号車まで増えた。

高齢者などの買物難民を対象に小型トラックで商品を届けるサービスで、地域貢献性が高い。

関西スーパーの広報は「地域の皆さまと共に社会貢献を通じて課題解決を行う、トータルソリューション型スーパーマーケットを目指している」と、自社のコンセプトを語る。

一方で、オーケーは、乱暴に言ってしまうと関西ならば「サンディ」のような業態だ。サンディのように段ボールを積んだ陳列ではないが、生鮮には強くなく有名メーカーのナショナルブランドが激安。関西スーパーとオーケーは似ても似つかぬ業態で、ディスカウンターに転向しないかと勧められて尻込みするのも当然だろう。

H2Oが買収しなければいけない事情
関西スーパーを買収しなければならない事情は、H2Oにも、オーケーにも双方にある。

H2Oの21年3月期決算は、売上高が約7392億円(前年同期比17.6%減)、経常損失が約29億円の赤字。百貨店を主力とする事業が苦戦している。同社の中心となっているのは、阪急百貨店と阪神百貨店だ。

コロナ禍で収益を上げるには、自宅の近くにあって、日常のショッピングができるスーパー部門の強化が不可欠で、今回の関西スーパーの買収は株主の期待にも応えたものだ。

既にH2Oの売上高に占める百貨店の比率は47%と半分を切っており、かねてよりスーパーの強化を図ってきた。阪急オアシスは、百貨店が展開する高級スーパーのイメージで売ってきたチェーンで、大阪府、兵庫県、

京都府、滋賀県に76店を展開。

一方、14年にH2Oが買収したイズミヤは現在再建中。ダイエーがたどったように、総合スーパーから食品スーパーへと転換中だ。店舗数は80店で、大阪府を中心に、兵庫県、京都府、滋賀県、奈良県、和歌山県に店舗がある。

21年3月期の既存店売上高は、前年比で阪急オアシスが100.6%、イズミヤ101.7%と堅調に推移。コロナ禍の巣ごもり需要の追い風もあって、食品スーパー部門に限れば少額ながら約5億円の利益も出た。

一方、H2Oは関西スーパーの約11%を保有する筆頭株主。さらなるスーパー強化のために、株式交換によって、H2Oは関西スーパーを子会社化する。関西スーパーを持株会社にして、その傘下にイズミヤと阪急オアシスと新しく設立した関西スーパーの運営会社を設置し、再編を行う方針だ。再編後は単純計算で221店となる。

それぞれの屋号は維持される。関西スーパーの業績は、阪急オアシス、イズミヤよりはるかに好調で、特に生鮮では指導的な役割を果たすと考えられる。

企業価値向上の観点ではどうか。阪神タイガースや宝塚歌劇団と同じグループになるので、店舗の近所に住む人にとっては、タイガース優勝セールなどがあると相乗効果が出るかもしれない。関西人としては何よりダイエーとそごうが衰退してがっかりした後に、関西圏に大流通グループができるという楽しみも提供できる。

オーケーの事情
オーケーの事情はどうか。関東で国道16号線内における1都3県の住民をターゲットに店舗を展開してきたが、そろそろ飽和状態が見えてきて、日本第2の大都市圏である関西に出ざるを得なくなってきている。

業績は絶好調だ。オーケーは非上場ながらも、決算を公開している。21年3月期の営業収益は約5090億円(同16.7%増)、経常利益は約314億円(同32.9%増)となっている。既存店売上高も12.5%増えていて、人口密度が高いエリアを選んで出店する効果が出ていて素晴らしい。店舗数は131店となっている。

オーケーの良さは、実際に社員が食べて、味と安全性に納得した商品を取り扱っていることだ。店内の棚の並び方は無機質だが、値札などにその商品のどこが良いのか、アピール点が書かれていて、買物の参考になる。価格交渉がしにくいそのカテゴリーのトップブランドでなく、2番手以下の商品を置くケースが多いが、選択した理由が明確なので顧客は試したくなる。

ウォルマートのような特売をしない、毎日お得な価格も特徴。ただし、業務スーパー、ラ・ムーのように自社製品が安いというより、ナショナルブランドの加工食品、グロサリーが安い。生鮮も決して悪くないが、それを目的として行く店ではない。オーケーの自社開発製品でコストパフォーマンスの高さを感じるのは、ワンコインのピザ、コーヒー豆、一頭買いの黒毛和牛などに限定される。

また、200円を払って会員になれば、酒類を除く食品が本体価格より3%安くなるのも魅力だ。オーケーは、JCSI(日本生産性本部・日本版顧客満足度指数)顧客満足度調査のスーパーマーケット部門で10年連続1位を獲得しており、非常に優れたスーパーだ。

このようにオーケーは、個性的で顧客からの支持も高い。これまで年間5~7店くらい出店して、手堅く借金せず、1店舗ずつ成功させてきたイメージがあり、M&Aに興味があるように見えなかった。それだけに関西スーパーにここまで執着するのが意外なのだ。

ライバルである関東のディスカウンター「ロピア」が、Everyday Low Priceを旗印に昨年9月、大阪府寝屋川市に関西1号店を出店。ホームセンターの「島忠ホームズ」と組むなどして瞬く間に5店を出店して盛況なのが刺激になっているか。ぼやぼやしていたらロピアに適地を全部抑えられてしまう焦りもあるようだ。

関西スーパーは基本、大阪と神戸と阪神間しか店舗がない。人口密度が高い大都市近郊立地型のオーケーが親和性を感じ、白羽の矢を立てたと考えられる。

オーケーと三菱商事の関係
ところで、オーケーは三菱商事との関係が深く、二宮涼太郎社長は三菱商事の出身。力石康一郎取締役も三菱商事出身。社外取締役の菊地清貴氏は、三菱商事の常務執行役員コンシューマー産業グループCEO(兼)リテイル本部長となっている。

他のスーパーでは、ライフコーポレーションの筆頭株主は三菱商事で、三菱商事の持分法適用会社にもなっている。ライフ代表取締役社長執行役員の岩崎高治氏は三菱商事出身である。

かつて、関西スーパーとライフは出店競争をしていた頃もあったが、ライフは関西だけでなく首都圏にも進出して、282店舗(21年4月現在)、年商約7591億円(21年2月期)に達している。

三菱商事の側から見て、ライフと同じような生鮮に強い食品スーパーは関西に2つ要らない。だから、関西スーパーがオーケーの提案を受け入れてディスカウンターになってくれれば都合が良い。三菱商事はローソンを子会社化しているが、そのローソンの子会社が成城石井。成城石井は関西進出が成功してもう関西に36店ある。関西のスーパーにおいて、高価格が成城石井、中価格がライフ、低価格が関西スーパーとすみ分けるのが望ましい。

H2Oは「恩をあだで返すようなもの」と反発
オーケーは過去、関西スーパーに社員を派遣して、売場づくり、生鮮品の鮮度管理などを学んだ恩があるという。だから、オーケーが競合となって争うより、アライアンスを組みたいと呼び掛けている。

H2Oでは「恩をあだで返すようなものだ。それだけ資金があるなら、自分で店舗をつくったほうが早いのではないか」(同社・広報)と、突き放している。そもそも5年前にオーケーが関西スーパーの大株主に突如登場し、驚いた関西スーパーから相談を受けたのが、両社が経営統合するきっかけだ。

阪急阪神東宝グループ自体、06年に阪神電鉄が村上ファンドの買収提案を嫌い、積年のライバルだった阪急グループがホワイトナイトとなり、株式交換で統合した実績がある。

西友はウォルマートに買収されて、懸命に店舗改造したが、結局うまくいかなかった。消費者は西友の二の舞にならないだろうかと心配するかもしれない。

オーケーには、小売業世界一のウォルマートでもできなかった、一般スーパーのディスカウンターへの転換という実験的な試みがなぜ可能なのか。より具体的に説明してもらいたいものだ。

(長浜淳之介)

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