【後編】「人に理解されないことを恐れない」お笑いタレント・ふかわりょうが仕事に込める情熱

お笑い芸人、ミュージシャン、番組MC、エッセイスト……持ち前のセンスと広い視野を活かし、多彩な活躍をするふかわりょうさん。

インタビュー前編では、お笑いと音楽にかける思いについてお話をうかがいましたが、後編となる今回は、ふかわさんが人生を歩む上で大事にしている「8:2の法則」や、仕事をする上で大切にしているマインドについて深くお話をうかがいました。
▼仕事にも社会にも通ずる「8:2の法則」

―― 音楽とお笑いの両立は、まさに夢に見た生活だと思いますが、大変なことや苦労することはありませんか?

僕は「8:2の法則」という黄金比があると考えています。やりたい世界に入って、なりたかった職業に就けたとしても、そのなかのすべてがやりたいことではないと思うんです。やりたい仕事の中でも、2割くらいは気が重いこともある。では、その憂鬱な「2」の部分をなくしたらどうなるか。そうすると残りの8割の中で「8」と「2」に分裂して、必ずまた「8:2の法則」が生まれてくるんです。

―― なるほど……思い当たる節はあります。

もし、すべてが最高だと感じる状態になったら、それは逆に危険信号だと思います。人間にとって健全なのは、常に嫌な「2」の部分があることだと思うので。これは仕事だけじゃありません。テクノロジーが発達して、いろんなものが効率化したけど、まだ煩わしい部分も残っていますよね。

―― 社会にも通ずる法則だと。

コロナ禍でもそうですよね。聖火リレーも、ダメと言われても沿道に集まる人がいました。でも、もし本当に誰ひとりとして沿道にこなかったらどうですか? あの程度の呼びかけで、沿道に人っ子ひとり集まらなくなる社会の方が怖いですよ(笑)。結局、「2」の人が沿道に行くからこそ、「8」の人は大人しくテレビで見ているんじゃないかと思いますよね。

▼”誰でも座れる椅子”だからこそ、選んでくれたことに感謝

―― その法則を意識していけば、仕事で辛いことがあっても耐えられそうですね。ふかわさんは、仕事で心掛けていることなどはありますか?

そうですねぇ……”湯加減”は大切だと思っています。何事もほどほどがよくて、すべてトゥーマッチはよくないですよ。「ほどほどの湯加減をいかに漂っていられるか」は、常に意識しています。

―― どんなに好きな仕事でも、忙しすぎたらダメ……といった感じですか?

忙しい時期があるのは構いません。必死に競争して、誰かに勝って上へ上がっていくことよりも、身の回りの居心地の良さを大切にする必要があると思うんです。誰もがタワマンに住むことに憧れる必要もないし、身の丈にあった価値観でいることが大事な気はしますね。

―― 何か、仕事に対する姿勢として気を付けていることはありますか?

芸能界って、ひとりひとりが替えの利かない存在のように見られがちですが、どんな穴も即座に埋まる世界です。誰がやってもできる仕事だけど、だからこそ仕事のオファーをもらえることに価値があると思っています。わざわざ僕を選んでくれているわけですから。

「自分の能力が高いから、今この場所にいるんだ」って思ったら、それは凋落の始まりです。僕は番組MCをやっていますが、それは自分の能力で辿り着いたんじゃなくて、あくまで誰でも座れる椅子なのに僕を選んでくれた人がいるんです。そのことに感謝すべきだし、そこで奢っていては絶対に駄目だと思います。

▼人に理解されなくても、自分の心に忠実に生きる

―― これまで仕事をしてきたなかで、一番嬉しかったエピソードをお教えていただけますか?

いろいろありますが、例えば9年間出演した『5時に夢中!』を卒業するとき、スタッフが僕のためにVTRを作ってくれたのですが、そういう人の優しさや愛情に触れたときは涙が出ますね。本当に「この9年間は間違ってなかったな」と思いました。

学生の頃って、学期ごとに通信簿をもらうじゃないですか。社会人になると、形を変えて遭遇するんです。『5時に夢中!』の卒業の日に見たVTRやスタッフの表情、視聴者からのお便りは、まさに僕への通信簿。そういう局面で目にした景色というのが、結局いつまでも残っていくと思います。

―― 逆に、仕事をしていてツラいことなどはありますか?

人が気にしないところで足を止め、平坦な道で感情を揺さぶられるようなことはあります。だから、感度スイッチのオン・オフが出来たらいいなぁって思いますけどね。そうすれば、些細な言葉で心を揺さぶられずに済みますし。でも、感度はオフにできないので、意識的に気持ちを無にするときもあります。

ただ、そういった生きづらさは最近、腹をくくったというか。僕は、人にとってなんてことないことでも苦しんで生きていくんだな、って(笑)。はたから見れば幸せに見えないかもしれないけど、苦しんで生きていくのが幸せなんじゃないかって思っています。鈍感になれたらどんなに楽だろうと思うときもあるけど、僕は多分そうじゃない、些細なことに苦しんで生きる人間なんだと思うようにしています。

―― 最後に、今後の目標や直近の活動について教えていただけますか?

「なんかあの人よくわからないね」って言われることが、昔はコンプレックスだったんです。でも、今となっては個性だと思っているので、これからもずっとそういう存在でいたいな、と思っています。奇をてらうつもりはないけど、不可解でありたいし、何をしているのかわからない人でいたい。自分の心に忠実に生きて、忠実に仕事をしていれば、自ずとそうなっていると思います。とにかく、人に理解されないのを恐れないことですね。

猿川佑 さるかわゆう この著者の記事一覧はこちら

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