学校の新型コロナ対策はなぜ進まないのか 現役中学教員に聞く「今なおオンライン授業ができない学校がある理由」

2019年から続いている本連載「現役中学教員に聞く『ブラック職場としての学校』」。新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の広まりに伴い、学校現場を巡る状況が大きく変わったため、2020年夏以降、取材を中断していました。

あれから約1年。コロナ対策が続く学校現場は、どう変わったのでしょうか? 今回は現役中学教員Aさん(匿名)に、約1年ぶりにお話を伺いました。

※本企画は、現役教員の声をなるべくそのまま記事化したもの。口調がフランクなのは聞き手と知人であるため、ですます調への修正を行っていないためです

●「今のところ、うちの学校では感染者が出ていないけど……」

―― 学校のコロナ対策が始まってから、1年以上たつわけだけど今はどんな感じ?

自治体や学校によっていろいろ違うと思うんだけど、俺が働いているところに関して言うと、このコロナ禍で生徒全員に1台ずつタブレットが配布された。デジタル周りの環境整備は大きく進んだと思う。授業にも使ってるよ。

―― あ、オンライン授業始めたの?

いや、うちはオンライン授業は導入していない。

「生徒には学校に来てもらう」というのがベースの考え方で、分散登校や校内設備の消毒、体育祭、合唱コンクールなどの行事の中止、縮小……といった感染対策を続けている。給食も1年以上、黙食。

―― 学校の黙食ってたまに聞くけど、どれくらい話さないものなの?

お通夜みたいに静かだよ。みんな前を向いたまま黙って食べている。もう慣れてしまったけど、食事というより“ただの栄養摂取”という感じがする。

―― なんだかつまらなそうだけど、感染対策を徹底するためには仕方ないのかなあ。

いや、その“徹底”というのが……。

例えば、給食中の生徒は黙っているけど休み時間は普通におしゃべりしている。学校行事が中止・縮小されている一方で、部活動の大会は行われていて、「合唱コンクールはなくなったけど、吹奏楽のコンクールはあります」みたいな状況だよ。

以前は「子どもは新型コロナに感染しにくい」という話があったけど、最近のデルタ株に関するニュースを見ているとねえ。今のところ、うちの学校では感染者が出ていないけど……時間の問題なんじゃないかという気がする。

●今なおオンライン授業を導入できない理由

こないだ聞いた話なんだけどさ。ある中学校で「生徒が新型コロナに感染→クラスメイトたちが濃厚接触者になり、PCR検査を受けることに→教員がその検査の手伝いをさせられる」ということがあったらしい。

―― 医療関係者じゃないのに、検査を“受ける”じゃなくて検査を“行う”側になるの?

そうそう。一般的な職場だったら、まず考えられない話じゃない?

でも、もしもそういう事態になったら、うちの学校でも同様の対応をとることになりそうだ。以前、台風が来て避難所の運営をさせられたときにも「日本の学校の先生っていうのは、何でもかんでもやらされる仕事なんだなあ」と思ったけど、あらためて驚いた。

だけど、オンライン授業はやらないんだよね、うちの学校。「そもそも教室に生徒を集めない」というのが、最強のコロナ対策だと思うんだけど。

―― そこ少し不思議だったんだけど、「コロナ対策が始まって1年以上たった今、オンライン授業を導入していない理由」って何だと思う?

すでに導入している公立校もあるし、不可能ではないはず……というか、個人的には「オンライン授業は、やろうとすればすぐにできる」と思っている。

最初に話した通り、すでに生徒たちにはタブレットが配布されている。配信はZoomでもSkypeでも使えばいいし、板書やグループワーク代わりに使えるサービスもあるから、ツール面でも問題ないはず。

10年、20年前だったら厳しかったかもしれないけど、今はいろいろと便利だしハードルが下がっていると思う。

ただ、学校というのは「ペンと紙さえあれば勉強できる」的なアナログな発想が根深く残っている場所でさ。特にベテラン教員は何十年もそうやって教えてきたわけだから「今更、自分たちの仕事のやり方を変えたくない」という声が強いんじゃない?

いまだにオンライン授業ができない学校があるのは「技術的、環境的に難しいから」ではなくて、「教育の世界で働く人たちの気持ちを変えるのが難しいから」なんじゃないかと思う。

●全国の公立校にオンライン授業を導入させる“たった1つの方法”

全国の公立校にオンライン授業を導入させる方法があるとしたら、たぶん1つだけ。政治家や文科省、要するに“上”が「導入しましょう」とハッキリ言うことだと思う。

―― 逆に言うと、それってまだできていないことなんでしょ。どうしてだと思う?

ニュースを見ているとすごく感じるんだけどさ、コロナ対策ってゆるめると「ちゃんと対策しろ」、キツくすると「どうしてこんなに我慢しなきゃいけないんだ」と批判の声が上がるでしょ。

どちらもまっとうな意見なんだろうけど、“正しさ同士の板挟み”みたいな状態に陥っていると思う。何をやっても、必ず誰かに「それは間違いだ」と文句を言われてしまう、というか。

それで、“上”の人たちは責任を取りたくないのか知らないけど、自分たちで方針を決めたがらない。どうとでも取れるような答えを出すばかりで、具体的にどうするかは“下”、つまりは市町村や各学校に任せてしまう。

“下”は“下”で世間の批判を浴びたくないから、いざというとき「私たちはちゃんと対策してました」と言える程度に、行き当たりばったりに対応する。その結果の1つが「うちの中学はオンライン授業やってないけど、なぜか隣の市の学校ではやっている」みたいな、バラバラの状況なんだと思う。

●本当に「生徒のために」と思っているのか

学校のコロナ対策で全国的に足並みがそろったのは、たぶん1度きり。2020年2月末に、安倍首相が一斉休校要請を出したときだけだ。

あのときみたいに“上”がズバッとね。「こうすることを検討してください」と判断を“下”任せにするのではなく、「ここはこうしましょう」と言わないとダメなんだと思う。

ただ、当時のことを思い出すと安倍首相はめちゃくちゃ批判を受けていたから、責任が伴う役目なのかもしれないけど。

―― 「この一斉休校ついでに、日本も9月入学制に切り替えるのはどうだろう?」と大真面目に議論されていたくらい、影響が大きい出来事だったからねえ……。オンライン授業の場合は、どうなんだろう。

オンライン授業を歓迎できない人がいるのは、教員の中だけではないからなあ。

親の中にも「昼間、子どもが家にいるのは困るから、学校に行ってほしい」「食事を作るのが大変だから、給食を食べてきてほしい」という人がいるんだよね。

とにもかくにも、こういう問題について考えていると「学校教育の世界ではよく『生徒のために』『生徒ファースト』と言われるけど、実際には大人の都合を優先させて生徒を後回しにしていないか?」という疑問が湧いてしまうときがあるよ。

(続く)

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